第92話 最下層で待つ場所
「なるほど、壇ノ浦」
着いた5階層。ここは本来ボス部屋であったらしいが、今は地図に書かれた場所とは違う場所に成り下がっていた。条件はおそらく世界中のダンジョンの変革、あるいは大蛇ダンジョンへの挑戦権が得れた辺りであろう。そう、ここは今・・・
「決戦の地って訳ね、史実上の・・・」
春奈さんの言葉に頷く。何となく、本当に何となくではあるが、コレは自分の考えが正しかったと言う事だ。今ここは霧がかかった海になっていた。その砂浜で妹達は茫然だ。まあ、当たり前だわな。
「じゃあ、ここからは自分と巴さんが・・・」
「気を付けろよ?」
自分の言葉に対するアキラの言葉に頷く。そして、マジックバッグを取り出し、中からでかめのゴムボートを出す。そして、漕ぐ為のオールは自分が持ち、巴さんは弓を持って立つ。準備が整ったら、霧が少し深い海に向けて漕ぎ出す。
「主様、見えてきました」
「だね。いける?」
「メインは薙刀ですが弓取りでもありましたので余裕です」
壇ノ浦での事実上源氏と平家の最終決戦で負けが見えた平家は源氏の船に対し、弓が扇子に皆中するかを試したという。おそらく、その辺りが組み込まれたのだろう。そして、もう一つの条件の為に自分と巴さんのみで来た。それは後程。
「ふっ!」
巴さんの裂帛の気合と共に放たれる弓が次々と日の丸の扇子に命中。その間に自分はアクアラングをバッグから取り出して装備しておく。同時に手甲等の重い物も外しておく。
「終いッ!」
巴さんの矢が全て皆中させると船が止まる。よし、思った通りだ、急げ!おそらく、時間制限がある。ここで何もしないとこの部屋は元のボス部屋に戻ってしまうだろう。そう、【宝剣が沈む海】そして、その海で再現すべきは・・・
「巴さん!」
「はい!」
急いで最後の扇子が出た船の隣に付き、船に上がると、船の先から巴さんに抱きかかえられて海に落ちる。そう、壇ノ浦で滅亡した平家の最後の殿の死に様の再現だ。母に抱きかかえられて宝剣と神璽と共に沈んでいったと言われる二位の尼と平家最後の殿こと安徳天皇の入水の再現。きっとここまで再現すれば・・・見えた!
(アレだ!)
水中に浮かぶ光の玉と太刀の様な形の光に手を伸ばす。掴むと同時に巴さんの方を向き頷く。アクアラングしてるとは言え、そろそろ視界も限界だ。巴さんが急いでこちらに来ると自分を抱えて一気に浮上する。
「ぷはっ!」
「楓ちゃん、三優ちゃん、ファイアーボール待機モード!」
「「はい!!!」」
素早く春奈さんが指示して、魔法を待機モードにした2人が自分を温めてくれる。水って常温でも長時間潜れば冷たいからね。体の冷えが来ると同時辺りに部屋がボス部屋に戻っていく。念の為、スカアハさんも前衛に出して警戒していたが、ボスは討伐した扱いのようでホッと一息。
「よし、感覚戻って来たし、一先ず戻ろうか」
そう言って、自分達はボス部屋の奥、達成部屋と呼ばれる所からワープ?で戻るのだった。そう言えば、ここも研究まだ続いてるんだよねえ。これ、もうすっかり馴染んでるけど、低階層ダンジョンにみられるワープ装置の原理が未だに不明らしいんだよね。ま、便利ならいいか。そして、ワープする瞬間、一瞬だけ人の姿が中央に浮かび上がり、それはこちらを見て一礼した。そうか、貴方達も待っていたんですね、ありがとうございました。同じく一礼すると、子どもの方が微笑んだ・・・気がした。
「と言う訳で、こちらがドロップアイテムになります」
「ご苦労様です。鑑定をやらせますので、皆様はしばしお休みください!」
地上で協会員にドロップした刀と神璽と呼ばれるハンコみたいなものを渡したらマイクロバスの方で女子が着替え、男子は大きなテントで着替える。
「あれ、草薙剣なのか?」
「いや、壇ノ浦では確かに三種の神器を以てとか言われてる説もあるけど、多分違う。と言うか、違って貰わないと困る」
「へっ?」
「神器級とは言ったが、三種の神器を狙うとは言ってないぞ。それに・・・」
アキラに早いとこの着替えを促しつつ、自分も着替えながら、自分の考えを話していくとアキラも納得がいったようだ。今回の狙いは2つある。1つは神器をドロップする為の条件確認。そして、もう一つが、太刀ではなく神璽と呼ばれるあのアイテムである。自分の予想が正しければ、コレは必ず必要になるはずだ。だから、今回の討伐は大成功だった・・・と思いたい。
トオル君の狙いは他にありましたというお話。




