第90話 鍛錬 前編
「さて、攻略を開始しますか」
「お兄ちゃん、ここは?」
八岐大蛇ダンジョンは現在様々な探索者が攻略中である。と言っても、高難易度ダンジョンに入った事がある且つレンタル噴霧器の正規料金払って借りれる探索者に限るがね。ちなみに、噴霧器は最低2台のタンク2種で3桁万円。難易度と敵の強さを考えるとパーティが大体最低でも6人必要なので4桁万程度まで金が出せる資金力が必要となれば、未成年探索者や名声が欲しいだけのアホは弾ける。いや、斜め上も結構居るかもだがね。そこら辺は探索者協会の人達が厳しく行くだろう。ていうか、国家の一大事レベルの為の探索なので前科ありとかは確実に弾かれるだろう。んで、今、自分達は何処に居るかと言うと・・・
「壇ノ浦ダンジョン。まあ、正確には壇ノ浦の近くにある小規模ダンジョンさ」
とある日の祝日、全員が久々に揃った時、自分は訓練の為のダンジョンはとあるダンジョンに行く事を提案した。それがここである。ちなみに協会が用意してくれたマイクロバスで来た。で、協会員の方々はダンジョン前でテントなどを張っている。
「小規模ダンジョンって最高でも5階層までしかないダンジョンですよね?」
「そうそう。巌さんが昔入ったのもコレに該当するそうだよ」
三優ちゃんの言葉に頷きつつ説明する。ダンジョンは2つの規模で分けられる。1つが大規模ダンジョン。潜った先が5階以上あるのが該当する。まあ、大抵5階以上ある訳だけどね。しかし、勿論ダンジョンにも例外が存在する。それが小規模ダンジョン。5階未満の日帰りすら可能なダンジョンだ。勿論だが、危険度に関しては大規模ダンジョンと変わらない為、管理不可能な所は協会が派遣する探索者か自衛隊の部隊が最下層でコアを壊して修正される。逆に言えば、有用な所は国が徹底的に管理し、存続させる。ここはそんなダンジョンの1つである。
「壇ノ浦ダンジョン、ここの主なモンスターは足軽や武将の集団なんだ」
「集団戦闘に慣れようって訳か?」
アキラの言葉に頷く。そう、八岐大蛇はパーティ集団での戦いにもなるし、奴はかっての日本武尊との戦いで1対1は不利と考え、自分の配下を使ってくるだろう。蛇だけではなく、自分が殺し、それを配下にした死霊の軍団を使ってくる可能性が非常に高い。なので、ここで慣れようという意味合いもある。大蛇ダンジョンでやっても良いけど、その場合は向こうに手札を晒しかねないからね。だからこそ、一般探索者にも探索解禁した訳だし。
「それともう1つ、これが解禁される」
「これも慣れていかないとだよね」
楓の言葉に頷きながら出したのはモンスター素材の装備。青く光るあの武器だ。コレの威力を試していくという次第もある。
「で、最後の目的は最下層」
「あ、もしかして!」
自分の言葉に元委員長の春奈さんはピンと来たようだ。そう・・・壇ノ浦にはとある伝説がある事で有名である。平家の最後の時の場所であり、宝剣と神璽を持って沈んだと【される場所】である。
「そう、神器系統がドロップ、あるいは最下層に出現する可能性が高い。それも狙って潜る」
全員の顔が引き締まる。低階層で過剰戦力の武器で攻略と考えていた所に盛大に水をぶっかけたからね。さて、行きますか。地図はあるけど、まずは自分達の経験を積むのが最優先であるから、じっくりと行こう。
「巴さん、妹二人をお願いします、アキラ、春奈さんは目の前の斬馬刀持ち武将の相手を!スカアハさんと俺は斬りこんで弓持ちを撃退する!」
入ってから数時間後、階層は3階層。最初こそ骨のスケルトン系の足軽のみだったが、この辺に来るとバリエーションも豊富である今戦ってるのは前衛に斬馬刀持ちのラージスケルトン武士1、後衛にスケルトン弓兵が3だ。すぐに後衛に行けそうで行けない。しかも、斬馬刀持ちが結構デカいので、まずはこいつを倒せとばかりの編成だが、前衛の討伐が手間取ると、弓兵が隙あらばと撃ってくる矢に対処出来なければ大怪我・壊滅的被害は確定の相手である。
「行きます!」
「うむ!」
スカアハさんは壁を蹴りながら駆け抜け、自分は斬馬刀武将の白い安全ゾーンを通りつつ、後衛に至る。青い槍で2体の弓持ちの弓を腕ごと破壊する。スカアハさんも薙ぎ払いで同様だ。スケルトンは基本的に骨の部分は壊しても再生できるが、武器は再生出来ない。なので、基本戦術として持ってる武器は破壊出来るなら破壊する。それだけで相手の攻撃手段と防御手段が奪えるのである。
「ふっ!」
「シッ!」
そして、スケルトンの胸から仄かに光る魔石を狙って破壊する。こいつ等は頭や心臓を壊しても再生し続けるので魔石と言われる部分を壊すしかない。なので、基本スケルトン系の魔石と言うのは詐欺の類である。この為、協会全体にはスケルトン魔石は流通しない物とされている。
「ランスチャージ!」
弓持ちが消えていくのを確認していると、後ろからアキラの声が聞こえる。耳障りな金属音が聞こえると、斬馬刀が小さな槍相手にカチ上げられる。おぉ・・・
「アキラさん、春奈さん!横に避けて!ファイアーボール!三優ちゃん!」
「ウィンド!」
自分達も物陰に避けると熱を持った竜巻が横切る。名付けて即席のファイアーストームと言った所だろうか?やるねえ。
『ギッギギッギ!』
風の強さと炎のダメージで斬馬刀を落としたラージ武将スケルトンが再生しようとしていた所に・・・
「一閃!」
春奈さんの蒼い太刀の唐竹割りが綺麗に蒼い直線を描いて決まるとスケルトンは綺麗に真っ二つに斬れて消滅した。いやあ、見事すぎるわ・・・っと。
「ふっ!」
槍を投げると弓持ちの更に後ろの辺りに現れた足軽スケルトンの胸部に決まり、相手を消滅させる。
「お見事です」
「集中状態で嫌な色が見えたからね」
スカアハさんに頷きつつ落ちた槍を拾うと、メンバーと合流する。いや、まあ、しかし・・・
「噂には聞いてはいたが・・・」
「うん、聞いてはいたけど・・・」
自分と楓がうんうんと頷くと、周りも苦笑する。何って?
「マジで儲けが出ないな。ここ」
基本、スケルトンがドロップするのはコアメダルのみ。先程まで落ちていた斬馬刀までもわざわざ消滅してのドロップである。コアメダルの御価格は以前の楓の件からも御察しである。ちなみに今は更に安くなり1個20円である。飽和状態すぎるわ。故にまあ、この手のダンジョンは世界中でも探索されるだけで感謝される。国によっては面倒な所を間引く為に潜ってくれるとして報奨金が出てる所もあるぐらいである。コレを目当てに最初の内は潜る探索者が居はするが、この渋さから長い間潜る探索者は中々居ない。
「トロールぐらいまであるスケルトンですらコレだからな」
例のデカいスケルトンが居た位置にポツンと1個のコアメダル。勿論、デカいとかはない。20円也で哀愁漂うドロップである。
「ここまで来ると、何かしらのドロップ品を豪華にする為の条件でもあるんじゃないかな?」
三優ちゃんの言う通りだ。流石におかしいとも言える。少し考える。まず、魔石が出ないのは確実だ。ここを突かないとスケルトン等アンデッド系は倒れない。実際に海外でゾンビの魔石を手に入れる為に傷つけないように戦ったが何度やっても再生・復活してしまうので諦めた国が多数だ。
「モンスター素材の武器でやってもドロップ品が変わらないのは今まさに証明済み。清めの塩や聖水を散布して倒した場合もドロップは変わらなかったんだよな?」
「うん、お兄ちゃん。先生達も魔石に直接塗布するようにかけたりしてもダメだったって」
楓の言葉に頷く。そうなると、特殊な倒し方だろうか?でも、なんか、やりつくした感があるよな?ん?いや、待てよ?あれは試したか?
「すまん。ちょっと試したい事が出来た。次の足軽スケルトン1体は任せてくれ」
「何やるか、話しなさい、良いわね?」
アッハイ、春奈様、ゴモットモデス。人間って英雄を怯ませる殺気出せるんだな・・・
先ずは位階上げと同時にまたも変な事思いついたかも?なお話。委員長は元でも強い、コレ常識




