第88話 新たな日常生活とそれまでの出来事
「ようこそ、ダンジョントラブル相談所へ・・・・・・って、なんだ、楓か」
「失礼過ぎない、お兄ちゃん?」
「HAHAHA。じゃあ、今の有名なあだ名で呼んでやろうか?」
「やめてぇええええええ!アレは黒歴史なのぉおおおお!」
あれから2年と少しが経過し、不安だった事務所は順調。政府からの相談や猛翁や巌さんからの相談、果ては探索者関連の相談などを受けるそれなりに大手の事務所となった。
「配信されたらああなる事は分かっておったろうにのう、マイシスターよ・・・」
「ぐぬぬぬ、事実だけに言い返せない!」
で、こいつが配信で何をしたかと言うと探索者学園に属する大学生になり、兄の贔屓目で言うのもなんだが、テレビに特集されるほどの容姿となったと思う。春奈さんも三優ちゃんも同様なのでダンジョンには美容効果ありそうだなと思っているが、この辺は聞かれても否定する事にしている。下手に肯定して、ダンジョンに素人の女性が増えるのは頂けないからね。んで・・・
「【黒髪の剣姫】ブフッ!」
「もぉおおおおおお!それのお陰で色々大変なんだからね!」
やらかしとは言ったが、この妹が自分の配信関連でやらかした訳ではない。前にも話した通り、日本ではダンジョン内の配信は違法となる。ここまで言えば分かると思うが、違法配信者の撮影に映ってしまったのだ。隠し撮りで探索者学園の探索を撮影・配信する今で言う所のパパラッチを行った配信者、その違法配信者が襲われた所に映ってしまった事が端を発する。この妹としては人助けのつもりだったのだが・・・うん、まあ、トロールに何もさせない戦い方したらそうなるなってなるわ。
「高校時代に師事していたのが現代の剣聖として特集された猛翁とSPを多数輩出する巌さんなのも効いたねえ」
高校卒業した後で入った探索者学園での遠征ダンジョン攻略授業中にその違法配信者と襲い掛かるトロールに遭遇した事でテンションが上がり、考えるより先に足が動いたらしい。自分達が高校を卒業した後で楓は剣の道も覚え始めた。魔法剣士がその頃アニメとかで主流になってたからな、うん。まあ、その厨二病的成果プラス猛翁と巌さんの実践的剣術も相まって両足の腱を綺麗に斬り、膝が地に付いた所で両腕の腱も斬って脳天をカチ割る剣使いの少女として一躍有名となったのだ。んで、その頃は髪を伸ばしていたから付いたあだ名が先の【黒の剣姫】と言う訳だ。
「首を切ればよかったのに脳天カチ割るからああいうあだ名付くんだぞ」
「コフッ!」
まあ、どの道、探索者学園入学1年も満たない少女が学園の救援待つまでなく剣だけでトロールを下したとなれば時間の問題だっただろうけどな。で・・・
「どうしたんだ、今日は?」
「あ、まずはお母さんからいつものタッパー総菜」
「お、サンキュ」
あれから、この事務所が第2の家になった。アキラとは何日か交代でここに寝泊まりしている。このビルには飲食店がいくつか入ってて、オーナー権利でいつでも食えるので食生活には困ってないが、こういう総菜は作ってもらわないと食べれないからね。ありがたや、マイマザー。
「で、本題なんだけど・・・お兄ちゃんの懸念が出てきたよ」
「どれだ?」
「低階層、正確には5階層以降でゾンビ。ポーンゾンビが見られたよ。アレ、ホントに臭かったよぉ・・・」
ついに来たか。いや、やっとかという感情もあるんだけど、ダンジョンが様変わりし始めた兆候だ。ゾンビについては前にも言った通り厄介な存在である。腕や足を切っても動く、臭さで戦闘思考が難しい、痛みを感じないのでダメージ与えても鈍らない等、かなり厄介な奴である。これまでのダンジョンアタックでも実は超避けていた相手である。浮上事件と言われるあの時も自衛隊による射撃の塩対応だったのは公然の秘密である。
「で、どうだった?」
仮眠室と言う名の泊まり部屋の冷蔵庫にタッパー類を入れて、来客用のお茶を出す。
「お兄ちゃんの言う通り、結構な数が出て来てたみたい。他の班も同行してる探索者と教師が迎撃して、ダンジョン探索授業は今一時停止してる」
そう言われて、パソコンのネットでゾンビについて検索してみる。ふむ、結構な目撃例が増えたのはここ最近。深階層でゾンビ類が目撃されていたが、徐々に目撃階層が上がって最終的に今の階層になっているようだ。
「で、こっちが佐々木さんからの報告書か」
「そうそう」
ふむふむと読んでいく。ゾンビに対するマニュアルは中々の大戦果だったらしい。まあ、臭さは何ともならないがまずは安全策として足を砕くもしくは斬る。これは痛覚を感じないゾンビ相手には有効である。足が無くなれば這いずるしかないからね。更に読み進めると・・・
「お?成功したのか」
「なになに?」
「清めの塩で消滅したらしいよ。海外だと聖別された聖水で消滅したらしい」
「ゲームか!・・・・・・ダンジョン自体ゲームみたいな世界だったね・・・」
確かになと思うが、自分はこうなるだろうなと思っていた。実際にダンジョンがゲームのそれだ。つまり、遊戯だ。ならば、それに則った行動ならばいけるのでは?と思ったのだ。流石に祝詞とかは時間かかるだろうし、そも、聞こえているかも分からんしね。海外なら聖水や銀の武器と心臓に杭打ち辺りかなあ?後で佐々木さんに報告送っておこう。
「されど、素晴らしい鍛錬ぶりですね、流石は主の妹様と感心します」
「ありがとうございます、巴さん!」
巴さんがお茶請けのお菓子を持ってきてくれる。服は現代風の服。なんでも、モンスターとしての側面で衣装は自由自在らしい。しかも、日本出身の武将なので違和感が無い為、普段は自分の護衛兼事務所員になってもらっている。
「それで、楓、準備は出来ているか?」
「うん、春奈さんも三優ちゃんもしっかりとスカアハさんのお墨付き貰ったよ!」
「こっちもアキラも自分もお墨付きをもらった。後は自衛隊の方も準備が整った」
「じゃあ?」
「ああ、いよいよ取り掛かるぞ。富士の樹海ダンジョン攻略。つまりは八岐大蛇討伐に!」
高校生活最後の日から、今日までにも色々ありましたよと言うお話。そして、いよいよ大蛇退治に向かいますよと言うお話




