#2_over clocker_γ
そしてこの自己紹介、次は自分の番だが…
「名前は繭遠 彩奈です。えっと、その…他の地区から来ました。あと、記憶喪失です。」
「記憶喪失だって事は霧から聞いてたけど、どうして他の地区からわざわざやってきたの?」
「それは…記憶喪失で昔の自分の意志とは違うかもしれないけど、自分が戦える力を持っているなら、町の皆のために戦おうと思って…」
嘘をついた。
なぜかは昨日、蒼井先生にそう言え、と言われていたからだ。
理由は聞かせれていなかったが、どうやら、普通町の外から来る人は警戒されてしまうらしい。
町の外には機械兵らが無数にいる。
そんな安全では無い、町の外にいる人なら警戒などせず、真っ先に助けるだろうが…
そんな所で自己紹介は続いていった。
その後は皆と能力について話し合っていた。
それぞれの自身の能力の解説が始まったりや
能力が使えるようになったきっかけとか。
生まれながらの人、気がついたら使えるようになっていた、戦闘中突然使えるようになった。など。
某枕木さんの性格がややおかしい事も話していた。
そして本題。この街、新都「カワゴエ」
人口約50万人。
面積は約200平方メートルだが段々と広がる、少しずつ人間の物に戻ろうとしている。
街の外と中では景色が全く異なり、外は何度か見た酷く荒廃した場所に対し、中は綺麗に整備された道や数箇所高層ビルも立ち並ぶ、
外より街の中は文明が何十年も進んでいるような世界。
実際十数年街の中でのみ人間は生活していたのでそうなるだろうが。
数分歩くと、周りには段々と通行人が見え始めてきた。
大通りらしき場所であった。
普通の町…辺りには別に草木等の植物が特別たくさん生えてるわけでもなかったが、なんだか森の中にいるような澄んだ空気を感じた。
これが平和な空気と呼べるものであろう。
「水上のおじさんこんにちはー!」
歩いていると霧や他の皆が挨拶をし始めた。
その方向に顔を向けると、そこは1階建ての小さな建物。
そして、白黒の車と男の人が立っていた。
そこは交番だったのだ。
それを見て連想された「警察」という言葉に若干足を引いてしまったが、他の皆はとても元気良く、まるで身内の人のようにその人に接していた。
「おおーこんにちは」
とても優しく、やや渋めの声でお巡りさんは挨拶を返した
「ん、天飛もいるじゃないか、お前また悪さしてるんじゃあないだろうな」
「いやいや、見ての通り何もしてませんて」
「そんなこと言って、お前女3人も連れてくるなんて説得力ねえぞー」
確かに、天飛の周りには彩奈含め女の子3人がいる。
こんな所を他の人から見たら女の子3人。トリプルデートをしている男の子となり周りからどんな目で見られるか…
そんな所で水上のお巡りさんは何度も笑いながら、背中を叩いている。
「あれ、見ない顔がいるじゃないか。まさかお前あいつを抑えて新しい女でも釣ったのか?」
お巡りさんとは思えない態度で天飛に何度もグイグイ行きながら、こちらに目を向けてきた。
「転校生の繭遠 彩奈です。今天飛君や皆に街案内をして貰っているところなんです。」
立ち話をしながらまた自己紹介が始まった
「なるほどねぇ記憶喪失ねぇ。そりゃあ大変だなあ」
お巡りさんは心配するように首を傾けた
記憶喪失、という事を会った人全員に言ってるような気もするが、多分問題無いだろう。
「まあ天飛はちっと狂ったやつだが霧ちゃんはしっかり者だからな、一緒に居れば大丈夫だろうな。」
「って、あたしはいないんですかー!?」
今まで口を閉じてた紅葉原さんが突然声を上げた。
というか今までずっと自身のスマホを操作してたようであったが。
「おうおう済まなかったな。麗奈ちゃんもやる時はやる子だからな、あはは」
手を頭に当てながらまたしても笑いだした。
やはり、なんというか口調や言動が警官らしくないように思える。結構歳をとっているように見えるが、愉快な人だ。
「きゃあああああああ!!!」
突然悲鳴が聞こえた。
慌てて後方、大通りの車道の反対側の歩道に目を向けると、そこで通行人の女性がものすごく慌てたように叫んでいた。
「助けてぇ!バッグを取られたのよぉ!」
そう叫びながら、その女性の指の指す方向には上下黒いジャージに黒い帽子、マスクとサングラスをした、
いかにもやりそうな見た目の男がトートバッグを持ち全力疾走していた。
このような事態、まずは110番通報でもするのであろう。
だがここは幸いなことに何故か交番の前である。
そこの警察官こと、水上と呼ばれるお巡りさんも事態に気づき、走ってその男を捕らえに行く。
これで全部安心だろう、そう思っていたが、ある事に気づいた。
わざわざ交番の前でひったくりなどするのだろうか。
ここは大通りだが左右数100程度は1本道であり、路地に抜ける小道などは辺りに見えない程の、見渡しのよく、言ってしまえば逃げ場のない道である。
そんな状況でこのような、罪に問われるような事をする輩はいないであろう。
だがその逆、「逃げ切れる自信がある」ならどうか。
いや、どうか。ではなくそうであった。
なんとその全身真っ黒の男は地面を滑るように走っていたのだった。
まるでアイススケートのように、音も全く立てずに、綺麗に、滑らかな動きで。
原理は分からない。だがみるみるうちに取られた側の女性と距離が離れていく。
今はまだ、人の全力疾走する程度の速さではあるが、だんだんと速度が上がっていくようにも見える。
それに対しこちらはお巡りさんが"普通の人の足"で走っているだけ。
しかも車道を挟み反対側。
一応交番の中にいた別の警官がパトカーに乗車し発進する所ではあるが、依然として男の地面を滑る速度は上がり続けている。このままでは車も追いつけないスピードになる勢いである。
先まで安心していた自分がおかしいと思えるほどに、状況は変わってしまっていた。
知らない人のバッグが盗られたからと言って、
他人事ではあるが、目の前で起きた以上、見過ごす訳には行かない事件である。
こんな時に自分も何か出来たら良かったのだが。
そう考えていると、すぐそばにいた霧ちゃんらも男を追うお巡りさんを、追うように走り出した。
そこである違和感に気づいた。
目線の先には、少し離れた位置に水上のお巡りさん。
その後を追うように走る2人の少女。霧ちゃんと紅葉原さん。
そう、もう既に自分の近くにはいなかった。
さっきまでいたはずの少年。
その時。
音もなく地面を滑っていた男が、音を出していきよいよく転んだのだった。
そして、その男の前には少年。
「天飛 夏弥」が。
毎度更新に長い空きがありますがどうかお許し下さいm(_ _)m
どうも川風です。
どうでもいいですが「天飛 夏弥」って名前
当たり前ですがこんな名前、読み方の人なんでおらず、変換に出てこないので毎回1文字ずつ書いております()
今回はどうでもいい話があまり思いつかないので
あとがきは以上になります。
もうちょい主要キャラが出てきたら、そのうちここでキャラに次回予告でもさせようかな、
とか思っています。
多分次回からやります
ではでは