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「対クリオネ機関…学園」
蒼井は確かにそう言った。
短い言葉の中だがその意味は多く、
彩奈の疑問は解けていった。
「ああ、さっきは説明不足だったようだね、続きは…うむ、戻ってからにしようか」
驚いた顔をしてる彩奈に蒼井が答えた。
別に蒼井が隠していた訳では無いが、例の機械兵と戦っているのは国のエリート軍隊、などではなく
今目の前でこちらへ向かってくる学生。
にわかに信じ難いが先に見た通り、その少年少女達が戦闘しているのは事実。
「蒼井先生、その子は…?」
そう言ったのは先程戦っていた学生の一人
薄い黄色の長い髪。しかも、その身体、いやその刀から炎を出していた謎の少女。
「この子は繭遠彩奈君、こちらに向かう途中に見つけてね、まあ話すと長くなるから帰ったら、ゆっくりと。」
蒼井はニコッとしながら答えた。
「あはは…初めまして彩奈ちゃん、私は祓宮 霧、きりでいいよ。えっーと…彩奈ちゃんもしかしてうちのクラスに来るの?」
その突然の自己紹介と問に彩奈は戸惑い何も言葉が出なかった。
同様に蒼井も、一瞬黙って。
「この場で立ち話をするのも良くないね…ところで霧君、明日から三連休だったよね?」
「え…はいそうですけど…」
突然話を変えた蒼井の問いにその少女は答えた。
「よーしじゃあ全員学園まで走り込みだ!」
蒼井がそう言うと目の前の薄黄色の髪の少女とその後ろにいる少年少女数名が唖然とし、言葉を失っていた。
「なーんだ?なんで皆黙ってるんだー?7時までに寮に着かない人は飯抜きだぞー」
その直後少年少女達は顔を顔を青ざめ、急に地平線を目掛け走り出してしまった。
ただ1人、薄黄色髪の少女を除いて。
「じゃ、霧君、彩奈君、車に乗ってくれ。」
蒼井、霧、彩奈の三人はそう言われ車に乗り込むと
運転席で蒼井がシートーベルトを締めながら言った。
「僕が先に帰らないとカレーを作る人がいないからね。」
目を開けた時には視点が横向きになっていた
何だろう、銃声も聞こえる
そして、鈍い金属音
叫び声も聞こえた
高い女の子の声
どうやら自分に言ってるみたいだ
さっき知り合ったばかりの少女、霧ちゃんの声が
何度も自分を呼んでいる
なんで自分は倒れているのだろう
そうだ、蒼井さんに言われて車に乗ろうとしたらーーー。
次に目が覚めた時には建物の中だった
視線の先には白い天井
少し横を向くとそこには
「彩奈ちゃん!」
「彩奈君大丈夫か!」
突然自分を心配する声をかけられた
何かあったのかと横になっていた体を起こし、自分の体を見渡すが何も異常は無い。体も自由に動く。
異常があるかと言われれば周りが…室内だろうか
自分は白いベットの上におり、その周りは白いカーテンで区切られていた。
そこは、保健室と呼ばれる物に似ていた。
自分に何も無い事を二人は安心したのか、息を吐き、そこにある椅子に座った。
そして彩奈は自分に何があったのか、そこの2人に聞いてみる。がその問いに対し、解答は驚くべきものであった
まず蒼井から落ち着いて聞くよう言われた。そして、
「君はあの時、体が二つに引き裂かれてしまっていたんだぞ」
その答えは何を言っているか分からないものだった
体が真っ二つ?自分の体はなんともない。そして今もこうして生きているでは無いか。
だが1つ気になるのは'あの時'という言葉
いつだろう、と考えるが、
口に手を当て思い出した。
車に乗り込もうとした時。
かすかだが覚えている。
後ろから何か飛んできて
でもその後は記憶が飛んでしまって思い出せない
覚えているのはその後の僅かに聞こえた少女の叫び声や銃声、そして鈍い金属音。
その一つ一つの記憶の欠片を組み合わせ彼女の頭の中に出たのは
「クリオネ…」
まだ片手で数えれる回数しか出会ってないがその恐ろしさは十分に理解している。
だが、
「私の体はなんとも無いですよ?このようにちゃんと動きますし…」
その通り。
彩奈の体は至って裂けて割れている訳でも無いし、目立った外傷は無い。
「…」
それに対し蒼井は口に手を当て考え込むように黙り込んだ。蒼井と霧はなんとも言えぬ顔で顔を合わせた。
「そこが問題でね…奴らとの戦闘後、皆が戦闘で気づかないうちに…君の体は元に戻っていたんだ。」
それを聞いても、それを理解する人はいないだろう。という程の解答であった。冗談や嘘なのか、それともこれがドッキリというものか。
だがしかし、この雰囲気と言うかこの空気。
この真面目な顔をして話をしている男が嘘をつくとは思えない。
その後彩奈は何回か確認…真偽を確かめるが、何度蒼井とその時共に居た霧にも聞くが、答えは変わらない。
確かに二つに裂かれた体がいつの間にか元通りになっていたという。
何度聞いても信じ難い事だが、本当に彩奈自身にはそのような記憶はない。
「ひとまず、体の問題の方は今度にしよう。今日は休むといい。僕はちょっと呼ばれてるからごめんね。祓宮君、後は頼むね。」
そういうと蒼井は椅子を立ち、部屋を出ていった。
「じゃあ、彩奈ちゃんも行こうか。もうすぐここ閉じちゃうし。」
霧も同じように椅子を立ち、それにつられて彩奈もベッドから降りた。
(やっぱり体はちゃんと動く…)
「あれ霧ちゃん、行くってどこへ?」
「ああ、ごめん寮だよ。私の部屋半分余ってるから今日はとりあえず私の部屋で休んでいいよ。
あー…でもこれからずっと私の部屋で休むことになるかもしれないけどね」
霧は少し微笑みながら答え、彩奈と部屋を出ていった。
部屋を出るとやはりその部屋には保健室と書いており、この建物は学校そのものであった。
色々聞きたい、知りたい事ばかりだがなんだか今日は疲れている。明日に色々聞こう。
それでも、やはり気になる。
例の、自分の体の事。
自分には不思議な力があって傷が治っただとか
もしかして、この自分の3、4個目の耳が関係あったりするのだとか
というか何なのだろうこれ。
猫耳?自分でもよく分からない。外にいた時は耳がちゃんと立っていたが、今はなんだかイカ耳…いやそれよりなんか沈んでいる。
とりあえず何考えても分からない。
そういえば不思議な力といったら霧ちゃんのあれ。
刀から炎が出ていたが…
すぐ前を歩いているので今すぐにでも聞くことができるが、どうやら疲れているようだ。少しふらついている。明日にしておこう。
とりあえず、今日の事は「神様の奇跡」とでもしておこうかな。
何故か3ヶ月も経っていますが気にしないで下さい。
ちゃんと生きております。
前回、自分の作品を読んだところ、長くて読みづらい気がしたのでこれからは3000文字程度で投稿していきます。
次回は早めに投稿します