#2_over clocker_μ
時は遡り8月26日。
少女がこの街へ、この学園へと足を踏み入れ数時間後の事。
少女を保健室へと運び少々会話をした後、寮へ夕飯を作りにいくはずの蒼井だったがこの時、彼はある人物に呼び出されていた。
電灯がついた廊下を歩き、たどり着いたのは学園長室。そこは、事実上この学園で最も立場が上位に存在する人物の部屋である。
そんな部屋のドアをノックもせずにすっと開ける。
こんな芸当をするのは学園内で蒼井だけであり、普通なら許される行為では無いだろう。
真面目な蒼井でもこのような事をする理由は、ある。
「待たせた、神経。君から話があるなんて珍しいじゃないか。どういう風の吹き回しだ?」
流石学園長、と言わんばかりの内装。
落ち着いた色で構成された壁や天井はまるで睡眠するのにピッタリのような場所である。
壁に掛けてある歴代学園長の肖像画は、ここがこの学園になる前の、まだ世界が何ともなかった頃普通科として運営されていた学校当時の物達である。
わざわざとっておいたのか、ただ片ずけるのが面倒なのか。
いや、彼は後者であろう。彼は昔からそうであった。
「銀業 神経」
蒼井の中学からの幼なじみであり、親友とも呼べる人物。
蒼井が頭脳明晰な人物なのに対し、銀業はThe運動系のようなタイプ。
出会いは…確か…いやそんな事考えている場合では無かった。
突出する点は彼がこの世界で初の「能力者」となった男だと言う事だ。
機械兵が出没する以前からその力を見せていた。
その点については今になっても教えてくれないのだが。
「あの少女について、だ。」
銀業は蒼井とは逆方向、窓ガラス越しに外の景色を見ながら話を始めた。
「あぁ、彩奈ちゃんの事か。あの子なら命に別状は無かったよ。あんな事になったのに何ともないなんて、あれが彼女の能力だったりするのかな?」
蒼井も当時、かなり焦っていたのだ。
まだ自分の教え子ではなかったが、どんな子であっても命に変えて守る。それが蒼井のゆく道なのだから。
目の前であんな状態になっては絶望以外なんてもなかったのだ。
「そんな事はどうでも良い。"分かっていたからな"。それよりもこれだ。」
何やらものすごい発言が聞こえたがそれを問いる間もなく、手に渡された書類に意識までも遮られてしまった。
「入学手続き…ってお前正気か?まだ何一つ決まっていないだろう?"適正"もあるかどうかすら分かっていないのに…」
そう、本来ならばこの学園の入学へは実技試験が必要だった。
能力はもちろん、意識確認をも行動で示してもらう。
そのような物をあの少女は受けていないのだが。
それもだが蒼井が驚いた理由はもう1つあり、それはこの男が入学手続きを自ら作成したという事だ。
めんどくさがり屋でなんで学園長の座にいるかも分からない奴がこんな物を用意したのか。そして現在何故真面目に話をしているのか。
「……」
その後、何度訳を聞いたが返事は無かった。
挙句の果てに少女を入れさせるように説得しろとの事。
逆らいたい。だが彼は権限という最悪の剣を抜いてきた。けれど彼がその手段を使ったのは初の事である。
何か意図があるのだろう。そう信じるしか今は無い。
銀業とは長い付き合いだが未だに掴めない。
一体何者なんだか、あいつは。
そんな愚痴を夕飯、カレーを作りながら零していた。
食堂の席に座っている生徒には聞こえてないが、顔はしっかりと見える。
例の少女が座っている。
子供を無理に戦わせるなんて非人道的な事であろう。
最悪の事態に陥れば取り返しはつかない。
1年前と同じ事になって欲しく無いんだ…
こんばんは川風です。
例の通り後書きは最後にまとめます。
ではでは




