#2_over clocker_λ
体力の無さには自信がある自分ではあったが、それでも辿り着ける程の短い距離だった。
さて、そんな所でたどり着いたのは駅だった。
現代人誰もが使う公共の場ではあるが、この世界ではそのような事も無く、ただの廃墟である。
人は疎か、車両も当然無く。
だが線路は健在。
それこそが今回の任務の目的である為なのだから。
念の為任務の内容を確認しておこう。とポケットから今朝受け取った新品ピカピカの端末を取り出す。
中身はほとんどただのスマートフォンであるので、特に操作に困る所は無い。そして、直ぐにアクセス出来るようピン留めしておいたメモ帳アプリを開く。
自分達第二小隊の仕事は「駅付近に接近した敵の排除」、「列車通過時のタイミングの報告」
たったその二点である。
それだけの事など頭で覚えられるかも知れないが、これは学園が外部の組織から受けた正式な任務の為、ミスはもってのほか。しかもこの街の発展に関わる重要な件でもあるのだ。
「確認は大事」それ以上の言葉は無いだろう。
そんな事をしていると「どしたの?」と言わんばかりの顔で霧ちゃんが自分の端末を横から覗き込んできた。
「…あ~彩奈ちゃん。これね、任務専用のアプリに全部まとめてあるからそっち見ようか。ごめんね~説明忘れてた、てへ。」
…真面目にメモを書いた自分が恥ずかしくなってきた。
その箇所だけ地面掘り下げそこにレールを通す。
この場所ではそんな大きい溝が遥か遠くまで続くタイプの線路であった。
辺りは畑や田んぼがあった場所のようで全体的に開けており、かなり見通しの良い場所。
それ即ち敵が接近しようともいち早く気づく事が出来、こちら側にとって最高の局面である。
だがどの状況においても油断は禁物…自分は初体験だがそのくらいは何となく分かる…のはずだが
「わ~い、芝生が気持ちいいなのら~」
「よーし休憩時間っと」
「ぐー、すぴー。」
地面に寝転がっている少女が三名。
完全に気の抜けた表情で横に倒れているのである。
というか数糸さん?何寝てるんですか?クラスの優等生だって聞いてましたけど!?
「あ~彩奈ちゃんもほら、ここにおいで~。」
予想外の事だったので何をしたら良いのか分かる訳も無かったが…まぁとりあえず、断る理由も無さそうなので霧ちゃんの隣に静かに正座で座り込んだ。
「なんか不安そうな顔してるね彩奈ちゃん。けど大丈夫だよ。端末のレーダーで半径2kmには何も無い事が分かるから。」
なるほど。だから皆横になって…いや大丈夫だとしてもあの真面目そうな先生に見つかりでもしたら…大丈夫なのだろうか。
お言葉に甘えて。とでもしようとしたが地面はただの土と雑草である。汚れたくもないのでそのまま正座を続けた。芝生ってなんだ。
「そういえば、彩奈ちゃん?頭についてるその耳ってなんなの?なんかずっと聞くの忘れてたなーって。」
こんな場なので話を話しかけられても直ぐに理解する事が出来なかった。
耳…?ああ、この頭の上についてる第3、第4の耳の事か。
確かに、1度考えた事はあったが自分自身でも忘れていた。
まるでコスプレをする時のカチューシャでもつけたかのような猫耳。だが触った所で感覚はある。明らかに自身の体の一部なのだ。
音の聞こえ方は…特に変な事も無く、ほっぺの横の耳からしか音を感じない。
自分でも何故あるのか不思議だ。一応この街であった人には誰一人として着いていない。
これが不思議と思えるあたり、元々自分には無かった物と考える事もできる。
…記憶喪失人の根拠の無い推測だが。
「これ、自分でもよく分からないんです。目が覚めた時からあって、音が感じ取れる訳でもないですし。」
「…ほーん。猫ちゃんみたいで可愛いなぁ。私も欲しいなぁ、なんって。…じゃあちょっと触ってもいいかな?」
いいよ。という前にはもう触れられていた。
ああ、温かい。霧ちゃんの手の形、体温がくっきり分かるほどに感覚が鋭い。
そのまんま猫を撫でるような温かい手つきは自分の睡眠欲にダイレクトアタック。
実は昨夜、今日の…初登校が楽しみすぎて寝られなかったのだ。
そして心地良さに支配され…気づけば…
「…!?ここは!?」
少女の膝、いや柔らかい太ももの上だったのだ。
こんばんは、川風です。
…時間の流れは早いものですね…
次回は早めに投稿しますので…
ではでは




