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聖女、メスを執る  作者: 西園寺沙夜


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Karte.40 レンジ移住決定、そして、え……それが実年齢?!

レンジ副所長からの思いも寄らない相談に私とセインは一瞬固まった。


その様子を見て、

「……やはり、君達には迷惑だろうな」

レンジ副所長はシュンとしてしまった。


ハッとした私達は、


「も、申し訳ありません!別に迷惑とかではなく、思ってもみなかったことなので!」


慌てて弁解を始めた。


「でも、なんでフラノ村なんですか?」

それが私の正直な感想だ。


「確かに長閑で平穏ないい村ですけど、はっきり言って、それ以外は本当に何もない辺鄙な田舎の村なんですよ?」


セインも同感だったらしく、


「レンジ副所長ほどの才能と実力をお持ちの方なら、王都でも十分活躍できるのではないですか?」


と言うとカーラさんが、


「私としてはレンジ殿に王都に行っていただくのは避けていただきたい。ルーベルト伯領地内で活動して頂いた方が魔鉱石の輸送に手間がかからないし、何より確実に我が領地の収益になるからな」


と言い切った。


さすがは、商魂たくましい伯爵令嬢様だ。


「でしたら、それこそルーベルト伯のお屋敷近くの方がよいのではないですか?」


自分でそう言って、はたと気がついた。


「そう言えば今更なんだけど、何でセインも伯爵邸の近くに住んでいないの?」


考えてみれば、いくら血が苦手だからってヒーラーとしては十分優秀だし、伯爵からすれば側で働いてもらった方がいいんじゃないのかな?


すると、

「それは……ですね」

セインの返答は何とも歯切れ悪い。


(これは…私、地雷踏んだ?)

とオロオロしていると、


「屋敷には既に専属のヒーラーがいて、その方で事足りているんだ」

見かねたカーラさんが答えてくれた。


「それに、セイン殿が辺境伯付きのヒーラーになるのは少々酷だと思う」


「どうしてですか?」


「屋敷を構える場所は国境近くにあるんだが、国境という所には色々厄介な者が流れ着いてくる。国を逃れようとする犯罪者、何らかの理由で縄張りを離れた魔物、などなど」


カーラさんが説明してくれた。


「ルーベルト伯は他国との外交の要であるだけでなく、国境の警備も任されている。当然魔物との戦闘やならず者の取締りを行うことも多く、場合によっては一度の戦闘で多くの負傷者が出ることもある」


カーラさんがセインを見ると、セインが居心地悪そうに首をすくめた。


「血を見ると貧血を起こして倒れるようでは、現場からすぐにつまみ出されてしまうだろうな」


「なるほど……」


確かにそれはセインには厳しそうだ。


「だが……そうだな。ユーリさんも一緒に屋敷に来てもらえば万事解決するのではないだろうか?」


「わっ私ですか?!」

今度は矛先が私の方に向けられた。


「レンジ殿がフラノ村に居を構えようと考えているのは、ヒーラーであるセイン殿、そして今回浄化の封魔石を開発したユーリさんの近くに住んだ方が封魔石作りの作業が捗るからという理由なんだ。これほど優秀な方であれば、我が屋敷に住んで頂くのは全く構わないのだがな」


カーラさんは私とセインを交互に見つめ、


「だがそれも、2人も一緒に屋敷に来てもらえばいいことだ。セイン殿は治癒の封魔石作成に専念してもらえばよいし、ユーリさんも浄化の封魔石を作成してもらえれば良いし、なによりワイルド・ウルフの際に発動させた光の障壁は本当に見事だった。ぜひ、戦闘でも力を貸してほしい」


『我ながら素晴らしい考えだ!』と言いたげな顔で熱い眼差しが送られてくる。


だがしかし、


「ごめんなさい。ドラゴンと遭遇してよーくわかりました。できれば私も戦いとは無縁の生活を送りたいです」


とやんわりきっぱり断らせていただいた。


申し訳ないけど、今回のドラゴン討伐で痛感した。


私はどちらかというと、美少女戦士に助けてもらうモブの立ち位置でいたいのだ。


「む……そうか。残念だ」


カーラさんは少しむくれた顔をしたが、意外にもあっさり引き下がってもらった。


「それであれば、やはり君達の住んでいる村に僕も住まわせてもらいたいのだ」


レンジ副所長が遠慮がちに話し始めた。


「ダメだろうか……?」

―――キュンッ!


そんな不安げに上目遣いで見てくるなんて反則でしょう!


「レンジ副所長さえよいのであれば、私が断る理由なんてありません。むしろ、優秀な方に来てもらえるのであれば村としてもありがたいでしょうし。ねっ、ユーリさん?」


「えっ、あっ、そう、そうよね!うん、その通り!」


やばいやばい、本気でショタコン変質者になりかけていた。


「では決まりだな」

カーラさんが満足気に頷き、立ち上がった。

私達もそれに倣う。


「予定通り明朝ここを出立する。出発の用意をしておいてくれ」

「わかりました」

「はいっ!」


カーラさんも、

「レンジ殿も用意をしておいてくれ」

と声をかけた。


「承知しました」

レンジ副所長は軽く頭を下げ、改めて私達の方を見て、

「2人とも。これからよろしく頼む」

と穏やかに微笑んだ。


「こちらこそよろしくお願いいたします」

「よ、よろしくお願いします。レンジ副所長!」


すると、レンジ副所長は肩を竦めた。

「『副所長』はやめてくれ。僕はもう研究所をやめるのだからな」


そっか。この国を出ていくんだから当然そうなるよね。


(でも仮にも王族だった人なんだから、さすがに呼び捨てはしにくいよね)


「じゃあ……レンジ君って呼んでもいい?」

「えっ?!」


レンジ……君は目を見開き、何よりセインが物凄く驚いた顔をした。


「ゆ、ユーリさん。さすがにそれはちょっと……」

「え、そうなの?」


レンジ君を見ると、半ば呆れた顔をして、


「念のため確認するが…君は僕のことを何歳だと思っているんだ?」


「それは、えっ……12……いや、13歳……えっ?」

セインを見ると何かを嘆くように天井を仰いでいる。


「……ユーリさん」

今度はカーラさんがあからさまに呆れた顔をしていた。


「ドワーフはある年齢に達すると外見の姿が変わらなくなる。そして人間の寿命が約100年であるのに対し、ドワーフの寿命は約200年と人間よりはるかに長いのだ」


「へえ、そうなんですか?!」

ドワーフってすごく長生きなんだ。


「ちなみに僕は、30年前からこの外見なんだ」

「へぇ……えっ?!」


30……年前?バッとセインの方を向くと、

「ユーリさん、この方は私達よりもはるかに年上の方でして……」


「ちなみにーーー今年で57歳になるのだが」


「・・・・・・」


首があり得ないくらいぎこちなく動き。

目の前には―――絶世の美少年(?)が、呆れたように腕を組んでいる。


(ていうことは……)


(ショタ永久保存版?!)


『ハワワワァッ!!』と思わずと目を輝かせてしまった……それがよくなかった。


「君が何を考えているのかは分からない。だが……」


威圧感とともにギロリと睨まれると、ビクッと背筋が伸びる。


「失礼なことを考えていることだけは……よぅく分かった」

「もっ……申し訳ありませんでしたぁ!!」


私って……ホント、懲りないな……。

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