LV999の勇者は無情と女助手は嘆く
そりゃあ美男で無敵な勇者様に、平凡な村娘の私は、勝手に助手を名乗りお供として荷物持ちをして魔王の城まで二人旅してきたわよ。
でも勇者様は寝ている際に引っ付いても貼り付いても、肘打ちを食らわせるだけで私に手を出したりしない。
目の前で着替えをしても、白目を剥くばかりで、私に気持ちなんてまーたくない。
「なるほどなぁ」
「そーよ。私を人質にしても、厄介払いが出来たって今頃街に戻って宿屋にいるかも?」
私は勇者様に引っ付いてきたはいいけど、一人落とし穴にはまって魔王の部下に捕まって玉座の間に吊されていた。
魔王はいい人質が出来たって言ってるけど、勇者様は私を助けになんて来るわけない。その自信はあるもんね。
そんなことを思っていると、兵士が入って来て、魔王にご注進。
「陛下お喜び下さい。勇者は城を出て行きました」
「ほ、ほーらご覧なさい」
うう。自分で言ってて哀しくなってきた。ホントに気がなさ過ぎ。魔王の哀れみをもった目がさらに悲しい。
魔王は深くため息をついた。
「可哀相に。せっかくだから余の妾になるか?」
「え? それはちょっと──」
すると、窓の外から声がした。
「待て、待て、待て、待て──!」
「え? 勇者様!?」
魔王は私を吊したまま縄を持ち、窓から身を乗り出すと窓の外には壁を尋常ならざるスピードで登ってくる勇者様。
「くぉーら!! 魔王! テメェ、コノヤロォー!!」
勇者様はあっという間に玉座の間に到達すると、魔王の前に対峙した。魔王は私を小脇に抱く。
「なんだ貴様。さては娘に惚れてるな?」
勇者様はもげるぐらい首を横に振った。
「なわけない。俺のLVは999だ。供などいらん。ただ彼女の腰袋にある賢者の石を取りに来ただけだ」
ガーン! これはショック。軽く死ねる。
それに魔王は呵々大笑する。
「そうか。じゃ賢者の石だけとってさっさと帰れ」
「ああ。そうさせて貰うよ」
勇者様は平然と私の腰袋に手を伸ばす。魔王は私に顔を近づけた。
「ただし条件がある。お前が賢者の石を取る間、彼女にキスをしよう」
「は、はぁ?」
「どうした。早く取れ」
「なんでキスを。バカかお前」
「なんとも思ってないんだろ?」
「んーと……。答える必要はない。お前の家来じゃない」
「撤退するなら彼女の安全は保証しよう」
「はぁー!? 意味分かんないんですけど」
「じゃあキスだな」
「うぉいやめろ!」
勇者様は散々ごねて、用事を思い出したようで窓から去って行った。これってつまり──!?