城じゃん
ご覧ください!
「はぁぁ......つ、ついた......」
引きこもりゲーマーには大変苦しい片道30分の通学路に俺はバテバテであった。
ーーキーンコーンカーンコーン
門に着くと同時に三宮高校の鐘の音が鳴る。もちろんただのチャイムなのだが、三宮高校ではただのチャイムの音さえ結婚式のベルの音のように聞こえる。
「で、でっけぇ......」
呼吸を整え、眼前の景色を目の当たりにすると、俺は驚く。正確には慄くという動詞を使うべきか。
まず門である。真っ白に塗られて光沢が走っている。傷ひとつない純白だ。そして城壁を思わせる長い長い壁。学校全体を囲む長く大きなこの物質も同様、白塗りの壁であった。魔法の絨毯に乗ったアラブ人が住んでいそうな宮殿のような校舎も言うまでもなく白の衣を召していた。
「いや、これほんと、城じゃねえか......」
俺はますます感銘を受けていた。そんな場には不自然な廃れた教室?のような建物が隅の方にひっそりとそびえていた。
「なんだ、ここ......? 」
男のロマンというやつである。いや多分違うな。俺はそれに近づくと、それはやはり異様さを漂わせていた。
「......」
扉に手をかける。なんだか変にドキドキしてきた。今目の前に可愛い女の子が現れでもしたら俺は卒倒してしまうだろう。
ガガガガ!
「!? 」
突然、教室の中から機械音が聞こえる。
「な、なんだこの音......」
ガガガガガガガガ!
その音はだんだん大きくなっていき、まるでこちらに近づいてきているようにも感じた。
「......開けるか......」
俺は意を決して戸を開ける。
ガララ!
割と強く力を入れ過ぎてしまったので扉は大丈夫かなと一瞬思い、中を見るもただの教室.......というよりは部室? のようだった。少しだけ暗いこの部屋で、俺はとあるものを見つけた。
「......こ、これは!!!! 」
黒光りの細長いフォルム。独特な機械音。起動時のスムーズさが特徴のひとつに謳われる......
そう、まさしくこれは......
「ブレステ5!!! 」
俺がずっと欲しかった会員限定、数量限定のゲーム機である。いやでも、なんでこんなところに......
ガガガガガガガガ!
「......にしても」
にしても、だ。
「使い方が荒いなぁ。傷が目立つし。パーツ欠けてるし。この音は明らかに壊れてるし......仕方ない。ここは俺の腕の見せ所だ! 」
誰もいない部屋で一人固い決心をした俺は、よっこらせと座ってブレステ5を分解する。
「ここを、こうして......」
昔から機械いじりは得意なのだ。姉貴の水没したスマホを直すのなんかは朝飯前。pcなども昼飯前。Wi-Fiの修理なんか夜飯前だ。......ん? この造語は正しいのだろうか。そんなことを考えている間に、俺は修理を終えた。
「......よし! これでいいかな......」
一仕事終えて俺は汗を拭う仕草をする。
「あーー!!!!! ちょっとアンタ! なにしてんの! 」
キーキー甲高い声。
振り返ると、声の主は腰に手を当て、俺を見下していた。
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