プロローグ
ぜひご覧ください!
少しだけ開けた窓の隙間から風が入る。部屋に漂う音は、隙間風の音と機械音。本日4月7日は誰とも言わず、皆、「春」と答えるだろう。風はほのかに火照りをまとっていた。
「音羽ー! そろそろ行きなさいよー? 」
マイシスター、高梨景が一階で俺を呼ぶ。今日は俺が通うことになる私立三宮高校の入学式が行われるからである。
「あー」
曖昧な返事を返した俺は傾けた耳と顔を再び前に戻した。少し伸びてきた黒髪が邪魔になってきた。
さて、三宮高校は県内有数の進学校であり、俺は本当に努力に努力を重ねて無事合格した次第だ。合格した日には家族で沖縄旅行へ行ってわっしょいわっしょいしてきた。合格した日からどれだけ今日を待ち望んでいたか。
ドカーン! バチンッ!
それだけに、俺は今日この日の入学式をとても楽しみにして、これからの学園生活に心を躍らせながら、入学式に臨む......
ドカン! ドカン! ......デデーン
......はずかない。当然である。なぜかって? そんなの単純で明快だ。今この現状を見て欲しい。
テテテーン! テッテッテー!
「......よし、ついにラスボス......」
そう、ゲームをしているからだ。
え? たかがゲームで入学式をさぼるなって? ......諸君、今一度自らの発言を省みるのだ。「たかが」?
はっ、なにを言っているのやらまったく。ゲームが無ければ全世界の人々がストレスに苛まれていざこざが起こり、やがて戦争に発展していくんだぞ? つまり、ゲームが世界を救ったと言っても過言じゃないのだ。さらにゲームをすると脳の発達にも繋がるという研究も出ている。もうこりゃゲーム万々歳だ。
さて、もうお分かりだろう。つまりは俺にとって、ゲームは入学式より優先順位が高いのだ。比べるものがなんだかおかしな気がするが、それは気のせいということにしておこう。
「......おーとーわぁぁー!!!! 」
「げっ! 姉貴......! 」
いつの間に俺の部屋に入ってきた景は腰に手を当て鬼の形相で俺を睨む。いつもはおろしている長い髪はお団子にしてまとめてある。黙っていれば美人なのになぁ......残念。
「またあんたはゲームばっかして! しかも今日入学式なのよ!? 」
姉ちゃんは全国の少年の母親よろしく、俺を叱り付ける。
「ふっ......姉ちゃん甘いな、仕方がないから俺がゲームの魅力というのを教えてや」
「......いいからはやくいきなさい!」グシャッ!!!!
「ひっ! わ、わかりましたいきますいきますー!!!!! 」
お、俺のブレステが......ぐしゃぐしゃに......脚力500キロくらいあるんじゃないかあのゴリラ......
儚く散ったブレステの想いを抱えて、先刻居心地が良かったはずの生ぬるい風を感じながら、俺は学校へと急いだ。
......いやてか姉貴どうやって部屋入ってきたんだよ鍵閉まってただろ......
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