呪い
「さぁ、ここまでは貴方のやりたい様にさせたは。ここからは初めの契約通り私の言う事を聞いてもらいますね」
「は?何を言ってんだ?ブス。聞くわけねぇだろ」
そしてこれから私はこの魔王を使役してこの世界の全てを手に入れるはずであった。
そういう契約を私は確かに行った筈である。
しかし、目の前に魔王は息をするかの様に契約を破って来るではないか。
「三百年。分かるか?俺が勇者に倒されたのだが、その後死際に最後の魔力を使い切り何とか転生して赤子からやり直す事が出来た。全ての富と圧倒的な力に権力を手にした以前と比べてまるで非力。他人の庇護下に入らなければ死んでしまうという屈辱を飲み込み、前世の力を使って着実に、そしてとんでもないスピードで強くなって行った。気が付けば前世の時よりも更に強くなっており、またこうして魔王となる事も出来た」
「あぐぅっ!」
魔王はそう言うと私の頭を鷲掴みにして持ち上げ、子供が捕まえたカエルを投げるかのごとく私を投げ飛ばし、壁に叩きつけられ声も出せない程の衝撃が全身を襲う。
身体の至る所の骨が折れているのだが頭が無事であったには幸いであった。
私は何とか光魔術で自身の怪我を治して行くのだが折れた骨は変な方向でくっ付いてしまったかも知れない。
しかし、死ぬよりかはよっぽどマシである。
「ち、忌々しい光魔術の中でも聖の属性を持つ魔術を使いやがって、まあいい。で、話は戻すが魔王になった俺は真っ先にあの憎たらしい人間どもを殺そうと戦争なり何なり奴等を蹂躙出来るのならば何だって良いと思った瞬間、思う前まで時間が逆行したんだよ。何故だか分かるか?」
「い、いえ………ぐぅっ!?」
「フン、軽く蹴っただけでこれじゃぁどうしようも無いな。前世で戦った聖女とは比べ物にもなりゃしない上に頭も悪いと来たらどうしようもねぇな。そんなバカなお前にも分かりやすい様に教えてやるよ。この俺が人間に殺意を抱いた瞬間時間が殺意を抱く前までに戻る呪いをあの勇者が自らの命と引き換えにこの俺の魂に刻み込みやがったんだよっ!その事に気付いた時の俺の気持ちが分かるか?あれ程殺したいと思っていた人間をいざ大量に虐殺出来る立場にいながらそれが出来ない苦しみがっ!人間の赤子一人とて殺す事が出来ない苦しみがよっ!お前には分かるのか?自分でこの呪いを解こうとしても一緒に組み込まれていた封印術式がそれを察知して呪いを発動させて解く前に戻るギミックのおまけ付きと来たもんだ。封印を目的ではなくトラップ目的に封印術式を使うなどよく出来たモノだよ、本当」
そして魔王は私の髪を掴み目線の高さまで持ち上げる。




