これで騙されるバカはいないだろう
そんなこんなで今両親と暮らしているホテルへと帰宅し、高まった興奮がようやっと落ち着いてきたその時になってようやっとダンジョンボスを一撃で倒してしまったという衝撃に襲われるのであった。
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「どうしたのだ?メアリー。お主から我が父上に会いたいなど言うとは珍しいではないか」
以前であれば諸手を上げて喜んでいたであろうカイザル殿下の反応は目に見えて変わり、まるで扱いに困る邪魔者が来たかの様な反応でもって私を王城へと入れてくれた。
そんな態度になる理由など分かり切っているし、そういうゴミみたいな男だからこそコイツとコイツの親は婚約者であったシャルロットをまるで交換の効く部品の一部であるかの如く捨てて私へと乗り換える事ができたのである。
私より上の女性を見つければまたその女性の方へと簡単に心変わりする事等今更であろう。
しかしながら今現在今回の婚約破棄によりシャルロットだけではなくランゲージ家一族で王族に対して深い怒りを買っている為今一度カイザル殿下ないし国王陛下はシャルロットと婚約を結びなおす事は出来ないであろう。
例え命令したとしても突っぱねられるのは火を見るより明らかである為、プライドが邪魔して婚約を再度申し込んで断られるという汚点を残したくない上に、だからと言って下手にでて手をもみランゲージ家の顔色を窺い怒りを鎮めて貰おうというのもその無駄に高いプライドが邪魔してできないのであろう。
そのプライドを捨てればまだ誠心誠意謝罪するなり領地を下賜するなりなんなりと策はいくらでもあるのであろうが、そのプライドを捨てない限りはどう動こうとランゲージ家の怒りをより一層買う事になる為身動きできず万策尽きたと言ったところであろう。
それが分かるくらいにはカイザル殿下も国王陛下も知能はあるみたいである為、私を保険として手元に置いておこう思っている事がカイザル殿下のその表情から見ても駄々洩れである。
こんな分かりやすいバカ共で他国と渡り合えるのかと一瞬思うも顔が見えないように薄い布で仕切り、側使えに耳打ちして代わりに言う等いくらでもやり様はあるかと納得する。
「うん。それで国王陛下様は私に会ってくれるの?」
「あ、あぁ。一応五分間だけは会ってくれるそうだぞ。一国王陛下である父上がお会いしてくれることなぞなかなか無い事であるからな。それだけメアリーの事を気に入っているという事であるな」
そしてカイザル殿下は私の問いに引き攣った笑顔で答えてくれるのだが、流石にこれで騙されるバカはいないだろう。




