今から心配で仕方ない
「流石にそんな事で簡単にイエスを言ってしまう程わたくしは安い女ではなくってよっ!って、引っ張らないで下さいましぃっ!?」
「恐らく時間が無いと思うからつべこべ言わず入るぞ。あ、これ入場料です」
しかし、そんなわたくしの決意も虚しくわたくしはマオに首根っこを捕まれそのまま引き摺られる様にダンジョン【双頭の蛇】へと半ば強引に、しっかりと入場料を支払い連れて行かれるのであった。
◆
「ひぃいいいっ!?蛇っ!大きな蛇ですわっ!!」
マオと共にダンジョン【双頭の蛇】を進む事三十分、わたくしは今日何度目かの悲鳴を上げマオに抱きつく。
このダンジョン【双頭の蛇】なのだがダンジョン名の通り双頭の蛇型の魔物とやたら遭遇する。
そしてわたくしは何を隠そう蛇が大の苦手なのである。
むしろ蛇に収まらずニョロニョロ系は全般的に苦手だ。
というのも昔わたくしがまだ小さな頃、お兄様に悪戯をされて背中に蛇を入れられてからわたくしは蛇が大の苦手になってしまい今に至る。
そして苦手である蛇の魔物達をマオが手際良く瞬殺して行く。
その光景を見て相手はわたくしの天敵である蛇型であり、討伐すべき魔物であるにも関わらず何だか可愛そうにすら思えて来る。
「全く、こんな蛇擬のどこが怖いのだか」
そう言いつつもマオは抱きつくわたくしを邪魔だとあしらう事もせず、むしろ片腕で抱きしめてくれる。
なんだかんだ言いながらも優しいマオに惚れ直しそうになるものの、そもそもこんな怖い思いをしている原因はマオであるのでその優しさに騙されてはいけない。
「そ、それにしてもわたくしは何もしなくても良いのですの?」
「もちろんご主人様の手で倒して行くのが一番効率は良いのだが、パーティー契約してるから俺が得た経験値の七割がご主人様にも入っているからな」
そしてわたくしは疑問に思っていた事をマオに聞くと、マオが倒してしまっても問題はないらしい。
ならばわたくしを連れて行く必要があったのかと問うと一緒にいなければ行けないと言うではないか。
便利なのか便利でないのか、兎に角わたくしにとっては便利とは言い難い。
そんな事を思っているわたくしの事など関係ないとばかりにズンズンと迷う事なくダンジョンの奥へと進んでいくマオなのだが、道は知っているのであろうか?
最終的に迷子になりましたと言い出さないか今から心配で仕方ない。
こんな恐ろしいダンジョンで迷子とか勘弁してほしいと本気で思う。
「迷う事なく進んでいるのですけれども、大丈夫ですの?迷子になったとか言わないですわよね?」




