卑怯ですわ
そう思っていたのだが、マオはばぁばが編んでくれたマオ専用の籠の中からわたくしを見上げてくる。
その表情はどこか得意そうな表情に見えているのはわたくしだけでは無いだろう。
「ああ、何か勘違いしている様だがドラゴンの姿は本来の姿じゃ無いから大きさとか関係ないぞ?あくまでも本来の姿、この場合は人型の姿の時の話だ」
そしてマオは悪戯が成功したかの様な声音でそんな事をのたまって来るではないか。
「初めから言いなさいよっ!そんな、後出しは卑怯ですわっ!ですのでわたくしが勘違いしてしまった事は当然の結果であり致し方無い事ですわっ!」
そう、悪いのは勘違いをしてしまうような事を言ったマオが全て悪いんですわっ!
「そうだな、例えばご主人もドラゴンの姿になったとして本来の姿というのは人の姿とドラゴンの姿、どちらを指す言葉だ?」
「………………に、人間の姿、ですわ」
「そういう事だ」
「きぃぃいいいいっ!」
どうやらわたくしよりもマオの方が口が立つ様である。
「それにドラゴンは翼で空気を掴み鳥のように飛ぶと恐らくご主人様は勘違いしている様だがそれだとあんな巨大な巨軀で飛び立つ事すら出来ない。翼で魔力を操り重力を相殺して自身の身体を軽くしてから鳥の様に羽ばたく事により空を飛ぶ事が出来るんだなこれが。だから馬車分も重力を相殺してしまえば何ら問題はない」
「成る程、ですわ。何故ドラゴンが飛べるのか子供心の時から不思議だった事がコレで分かりましたわっ!」
「幼い頃の貴女は腕にドラゴンの様な羽をつけて空を飛ぼうとしてましたものね」
そしてそのまま『マオの本来の姿』という論点を変えられ元の『どうやって帝都まで運んで行くのか』という議題に戻されたのだがそれはそれで非常に興味深い話であり思わず食いつくとお母様が後ろからわたくしに抱きつき優しく頭を撫で始めながらわたくしの黒歴史をマオの前で話し始めるではないか。
「ちょっ!?お母様っ!?マオっ、コレはその、違うんですの───」
「ここ最近のシャルロットは見ていられなかったわ。でも、ここまで元気になれたのならもう安心ですわね………。良いですか?シャルロット。わたくしは王国への忠誠よりも家族や使用人達の方が大切ですの。そんな家族である貴女の心を踏みにじるような国はわたくし達には必要ないのよ」
卑怯ですわ。
そんな事を言われては何も言えなくなってしまうでは無いか。
マオの手を借りれれば簡単に帝都へ行きスムーズに王国を切れる。
それで良いでは無いか。
「お母様、ごめんなさい。心配かけてごめんなさいっ」
そしてわたくしはお母様の胸で気が済むまで泣くのであった。
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