圧倒的強者と契約をした弊害
「だから落ち着けって。俺に良い案があるんだなこれが。要は俺のご主人様が聖女メアリーよりも凄い生物を召喚すれば奴らの鼻をへし折る事ができるんじゃないのか?むしろ俺もこのゲームのヒロインである聖女メアリーとカイザル殿下にはフラストレーションが溜まっていてね、ゲーム内の事を持ち込まれて彼らからすればとばっちりも良いところなのだろうが、ご主人様の話を聞く限りではゲームのキャラクター以上に糞であるのでボッキボキにその伸びきった鼻をへし折ってもなんら問題はないだろうし、俺の良心も痛まないからな」
「………なるほど、そういう事か。頼む、契約者ではない者が何をと思うかもしれないがこれでも俺は契約者の父親だ。ぜひとも奴らの鼻を粉々にへし折ってくれ。この通りだ」
「え?どういうことですの?」
そして何か案があるらしいマオは聖女メアリーとカイザル殿下の鼻をへし折る事には賛成らしくノリノリである。
お父様もマオのやろうとしている事が分かったらしく、父にしては珍しく頭を下げてまで聖女メアリーとカイザル殿下の鼻をへし折ってくれとお願いする。
その光景になんだか一人だけ仲間外れにされているみたいで少しだけさみしく思うのだが、それはそれとして置いておいてどうやらマオのわたくしの呼び名がマオの中で定着したのか、わたくしの事を『ご主人様』と呼んでくる。
『ご主人様』と呼ぶという事はマオ自身こんな何にもないわたくしの事を認めてくれているという事なのだろうが、マオから『ご主人様』と呼ばれるたびにゾクゾクとした快感が全身を駆け巡ると共にマオの魔王の姿が脳裏に映し出される。
契約当時は召喚できた喜びや魔王という生物としての格が違う相手への恐怖心からいっぱいいっぱいだった為あまり気にする余裕はなかったのだが今になって思えば想像を絶するほどの美青年であったという事を思いだすと共に、そんな美青年が『ご主人様』と呼んでいるこの状況に何故だか心臓が早鐘の様にうるさいくらい鳴り始めた。
いったいわたくしの身体には何が起こっているのであろうか。
魔王という圧倒的強者と契約をした弊害だとするのならば、甘んじて受けよう。
そう思うのにあまり時間はかからなかった。
「そうだな、だったら当日のお楽しみにしておくか。召喚術の実技の時ご主人様はただ俺を召喚するだけでいい。後は俺が何とかするからまぁ見てな」
そう言いながらマオは小さいドラゴン、その尻尾でわたくしの額をぺしぺしと叩くのであった。
えぇい、鬱陶しいですわねっ!!




