『クロ』だの『タマ』だの『チビ』だの
「それが今は何故黒くて小さなドラゴンみたいになっているのだ?」
そう言うお父様の疑問も最もであり今魔王と名乗る男性は黒く小さなドラゴンとなりわたくしの頭に乗ってとぐろを巻いているからである。
「そんな事等、この契約した娘の魔力総量では本来の姿を維持するのに三十分も持たなかった。そして今の娘で安定する身体がこれであった、ただそれだけだな。本来の姿を見たければ、翌日にならなければまた本来の姿で三十分だけ召喚できるだろうからその時にでも見ればいいのでは?」
悔しいが今のわたくしの力を鑑みるにこの魔王の言っている事は当たっている様に思えるのだからなんだか釈然としない。
手首を切ってまで契約したのにこれではカラスと契約するのと何が変わるというのだろうか?
黒い鳥か空飛ぶ黒いトカゲかの違いしか無い。
「ただ………」
そんな事を考えているわたくしを他所に魔王改め頭の上でとぐろを巻くチビドラゴンはわたくしの頭の上から飛び立ち書類が置かれているお父様の仕事机で降り立つと体の色を一瞬にして黒から赤、そして白へと変化させていく。
「体の色や髪型はいつでも変えれる。まぁ、今となっては自分でキャラクター、アバターを作れるゲームだと大体はできる機能なのだがな。本来であれば性別の変更やサブキャラとの変更もできるはずなのだが、流石にそこまでの融通は利かないみたいだ。まぁ、そりゃそうか」
そしてチビドラゴンは「やはり黒がしっくりくる」と色を黒へ戻して再びわたくしの頭へと降り立ちとぐろを巻いて休み始める。
どうやら既にこのチビドラゴンにとって私の頭の上は定位置となってしまったらしい。
流石に無いとは思うのだがシモだけは頭でしないでほしいと願う。
「そして、申し遅れてしまったのだがそろそろ俺の名前を言ってもいいか?早くしないとこの娘が『クロ』だの『タマ』だの『チビ』だのというニックネームをつけられそうで怖いんだが?」
「まさか、わたくしがそんなセンスの無いニックネームをつける訳が無いではありませんか。つけるとするならば『まおちゃん』とつけましてよ」
なんと失礼なチビドラゴンでしょう。
わたくしの頭の上を勝手に定位置にするどころか、まるでわたくしにネーミングセンスが無いかの様なものの言いよう。
これいは流石のわたくしも抗議の意味を込めて今頭の中で考えていた一番候補を口にする。
「そうだな。契約者にネーミングされる前に早く名乗るといい。流石に『まおちゃん』はわが娘ながら不憫だと思わざるを得ない」
あれ?お父様?おかしいですわね。
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