言い換えれば対価
そしてわたくしは目の前の男性の言葉を聞き驚愕する。
この目の前の男性の言う事が正しければ魔族国一の強さを誇ると言っているのだ。
魔王という言葉から薄々感づいてはいたもののいざその考えが正しいという事が分かると急に緊張してくる。
「所でお前、そんな呑気にしていて良いのか?」
「な、何がですの?」
「そろそろ俺がこの世界にいられる時間が過ぎて元の世界に戻されそうなんだが?」
そういう男性は自分の足元を指差すと、光の粒子と共に男性の姿が消えて行くではないか。
「そ、そうでしたわっ!け、契約をしないとっ!」
どうやら召喚した生物が契約せずにいられるタイムリミットが近付いているみたいである。
このまま何もしなければせっかく召喚した魔王は光の粒子となって元いた場所へと帰ってしまう。
それだけは何としてでも阻止したいわたくしは急いで男性と契約の準備を始める。
折角見返せるかもしれないのだ。
逃してなるものか。
「は、早く契約を致しませんとっ!えっとえっと」
「それは最悪良いのだが、俺はお前と契約して何か利点はあるのか」
その瞬間、世界は凍った様に固まる。
利点。
言い換えれば対価
男性はそう言ったのだ。
そんなものあろう筈がない。
光魔術の使い手でありワイバーンと契約をしている聖女メアリーであるのならばもしかすれば男性の言う『利点』というものを提供する事が出来たのかもしれないのだが、事わたくしが誇れるものは公爵家の娘という肩書とうら若き年頃の身体位である。
「し、強いて上げるとするならば公爵家の娘であるシャルロット・ヨハンナ・ランゲージの身体を捧げますわ」
そしてどうにでもなれとわたくし唯一の利点を口早に言い終えると一気に身体が羞恥心から火照ってくる。
どうせ婚約破棄を、それも次期国王であるカイザル殿下から婚約破棄された身である。
娶る男性も現れないと分かりきっているこの身一つで済めば安いものであろう。
「あ、大丈夫です。まだ捕まりたくないので」
そしてわたくしの一世一代の大博打もかくやといった言葉は見事に男性をドン引きさせていた。
心なしか先程と口調も変わっている様にも思う。
穴があったら入りたい。
「いや、待て」
「な、何でしょう?これ以上の辱めは流石に勘弁願いますわ」
「そうじゃなくて、今お前はシャルロット・ヨハンナ・ランゲージと、そう言ったか?」
「ええ、そうですわ。わたくしは由緒正しきドミナリア王国の貴族、爵位は公爵のランゲージ家が長女シャルロット・ヨハンナ・ランゲージですわ」
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