生物としての格の違いを見せつけられている
「やっと起きたか。手首から血を流して倒れているお前を見たときは流石にグロ過ぎて吐きそうになるのを堪えながらなんとか回復魔術を行使して止血する事が出来たわ。しかし、VRMMOのキャラクターで異世界召喚もさることながらそこで初めて使う魔術が回復魔術であったとは誰が予想しようか」
「………へ?」
わたくしは今幻覚でも見ているのでしょうか。
恐らくあぐらをかいて座りながらその上でわたくしを背後から抱く様にして包み込み、寒さから守ってくれていたのであろう男性が話しかけている姿が見える。
どうしましょう。異性と密着して一夜を明かしたと両親に知られたとなれば───ってそういう事ではなくてっ!!
頭が混乱し過ぎて上手く思考を纏める事が出来ない。
とりあえずわたくしは素早く立ち上がると声の主でもあり密着して一夜を過ごした男性の全体像を見る。
「セクハラとか言うなよ。回復魔術と言えども失った血液、この場合は俺を召喚する為に対価として支払ってしまった血液までは回復させる事が出来ず、血を流し過ぎたのであろうお前は体温を温める事が出来ずに震えていたのを救済した訳だからな。まさか部屋で炎を焚き暖を取るわけにもいかないだろう?」
「そ、それはそうですけれども………」
目の前でわたくしを抱き抱えて眠っていた事に対する弁明の言葉を話す彼であるのだが、わたくしは最早そんな事などどうでも良くなっていた。
漆黒に輝く一対の角に竜の様な二対の、同じく漆黒の翼。
髪もまた漆黒の色をしており腰付近までの長髪、しかしながらその目だけは魔眼であるのか金色に輝いていた。
更に着ている軍服の様な衣服は値段を想像する事すら憚れる様な国宝級の衣服でありその上着一つとってもとんでもない能力を宿している事が鑑定をせずとも肌で感じる事ができ、それでいて戦闘には関係無い飾りなども施されておりそのデザインはまるで王族が着る様な、見栄えにも注意を払った軍服の様だ。
控えめにいってカッコいい。
そして何と言っても腰に刺している一振りの剣である。
太さこそ細身の剣であるのだが強烈な存在感を放っている。
その事から導き出される答えなど決まっている。
「ま、まさか………魔王様………なのですか?」
そう、この様な力の持ち主など魔王以外他ならない。
むしろこれ以上の存在がいるなど考えたくもない。
彼が息をするだけで生きている心地がしない程に生物としての格の違いを見せつけられているかの様である。
「魔王、魔王ねぇ…………確かに先程魔族限定世界大会で優勝を果たして魔王の称号を得たばかりではあるのだが、それを魔王と言うのであれば確かに俺は魔王ではあるな」
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