ただの小娘の一人でしかなかったという事
そしてわたくしはセバスと一緒に召喚術について書かれた魔術書を抱えながら馬車へ乗り込むとランゲージ家へと帰路へ着く。
そしてわたくしは自宅の書斎へと向かいセバスと共に持ってきた魔術書を読み漁る。
知っている内容、関係の無い内容については読み飛ばし読み進めて行く。
「お嬢様、晩ご飯をお持ちいたしました」
気が付けば夜もふけておりかなりの時間没頭して読み進めていたらしい。
晩ご飯である時間は既に終わり、セバスがこうしてベットに夜食を持ってきてくれた事でようやっとその事に気付く。
「すみません、思わず没頭しておりましたわ。ありがとうございますわ」
「あまり根を詰めて無理せずお身体にはお気をつけて。それではお邪魔になりそうですので失礼いたします」
そしてセバスはわたくしに気を使って部屋を退室して行く。
「はふぅ………、美味しいですわ」
無理だと分かっている。
わたくしなんかが。
なんの才能も無いわたくしなんかが聖女メアリーが契約している魔獣、ワイバーンを超える生物と契約を出来るとは思っていない。
それでもわたくしは何もせずにはいられない。
そうしないと逆に潰れてしまいそうで………。
しかし、どれ程読み進めて行っても何も手掛かりなど見つかる筈もなく、ただただ時間だけが過ぎて行き、それに伴い焦りも出始めてくる。
このまま何も出来ずに召喚魔術の講義を迎えるのだと思うだけで物凄い重圧がのしかかってくる。
「ご馳走様でした」
そんな事を思いながらわたくしは食事を終えて一息つく。
お父様が口癖の様にいつも言っている『腹が減っては戦はできぬ』という言葉に従い、あまりお腹は減ってはいなかったのだけれども少し強引にお腹の中へと入れる。
食事を取らないと身体が動かないというのもそうなのだが頭も回らなくなる為調べ物をしているのならば無理にでも食事は取るべきであろう。
とは思うものの、結局の所は出来る事は全て試してみないと気が済まないだけなのだが。
そして数時間、魔術学園から借りてきた魔術書の書き写しを全て読み終えたのだが、結局は何も手掛かりは得られる事は無かった。
外を眺めると白み始めており、どれ程の時間没頭してたのか時間の経過を教えてくれる。
結局、わたくしは公爵家という肩書を外せば何のことはないただの小娘の一人でしかなかったという事である。
分かってはいたのだが、分かっているのとそれがこうして証明されるのとでは全然違う。
やる気も何もこの瞬間わたくしから無くなり、ただの娘として残りの学園生活を過ごす為にだけ集中する様に意識を切り替えて行く。




