今のわたくしの方がより美しく見える様に振る舞う
そしてわたくし達は一緒に朝食を食べに、家族と使用人が待っているであろうダイニングへと向かう。
先程まで食欲は無かったのだが、今ではお腹が空いていると思える程わたくしの精神状態が回復している事に気づき、ばぁばやナタリア、そしてナナリーへと心の中で感謝をするのであった。
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二日目となると慣れてくると思っていたのだが実際はそうでも無く、魔術学園に近づくにつれてわたくしは腹痛を催し始めてしまう。
「どうしましたか?シャルロットお嬢様」
「何でもございませんわ」
そんなわたくしの異変をすぐさま感じ取ったセバスはわたくしに声をかけてくれるのだが、わたくしはそれを何でもないと答えると共に、幼い頃はこういうセバスの気遣いにも惚れていたのだと今更ながら気付く。
そしてこのセバスが使用人であるナタリアと結婚したと知った時が初めての失恋でもあった。
恋愛の酸いも甘いも教えてくれた人である。
恐らくセバス本人はわたくしのこの気持ち等分かっていないであろうし、ナナリーというとても可愛らしい女の子を授かってくれたので良しとしよう。
「左様で御座いますか。ですが無理はなさらない様にお願い致します。無理だと思って登校しない事は逃げだとは私や使用人達、そしてシャルロットお嬢様のご家族も思いません」
「ええ、ありがとうございますわ」
そう言ってくれるだけで、そう思ってくれていると分かっただけで、わたくしはもう少しだけ頑張れそうである。
その間も馬車は止まる訳もなく、そして魔術学園へと着く。
「それでは行って参りますわ」
「はい。行ってらっしゃいませ」
セバスにいつも通りの挨拶を交わして馬車から降りる。
その瞬間から普段通りのわたくしの日常は終わりを迎える。
先程までご学友同士の楽しそうな会話が聞こえていたのだけれどもわたくしが馬車から降りた瞬間、空気が一気に変わると楽しそうな会話からわたくしを見ながらヒソヒソ話へと変わっていく。
当然ながらこんなわたくしへ近づくに者などいるはずも無く、昨日同様に一人で魔術学園の校舎へと歩き始める。
背筋はいつも以上に真っ直ぐに、歩き方はいつも以上に淑女らしく以前までのわたくしよりも今のわたくしの方がより美しく見える様に振る舞う。
そうする事により勘違いかもしれないのだが少しばかりわたくしに対するヒソヒソ話は少なくなった気がした。
◆
「では、来週は今まで習ったことの集大成として実際に召喚魔術を行使して頂きます。明日明後日の休日を使い各々召喚魔術の練習に励んで下さい。高望みさえしなければ自分に合った召喚魔獣が現れ、契約してくれますので見栄をはろうとしない様に。それでは今日の召喚魔術の授業は終わりです」
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