そんなたらればを考える
そう言うお父様の表情は真剣そのものであった。
もし。
もしわたくしが魔王を召喚したのならば、きっと今のわたくしを取り巻く環境など取るに足らない些末な事であると鼻で笑って一蹴できるのであろうか?
お父様の話を聞き、わたくしはある筈がないそんなたらればを考えるのであった。
◆
寝起きはここ一年、いや、生まれてこのかた最悪の寝起きであった。
にも関わらず外の景色はいつも通りで、小鳥達は楽しそうに囀り地面を跳ね空を舞う。
まるで教室でのわたくしとその他といった昨日の立ち位置を思い出すと共にそれがまた始まるのであると思うと胃がキリキリと痛み出す。
「シャルロットお嬢様………」
「大丈夫ですわ。ですのでわたくしの事は気にせずそのままいつも通り髪を整えて化粧をし、着付けて下さいな。それとも、貴女達までいつもとは違う態度を取るのですの」
「す、すみませんっ!その様なつもりは───」
「良いのですよ。そのお気持ちだけでわたくしは十分ですのでランゲージ家だけはわたくしにいつも通りの日常を下さいませ」
「………かしこまりましたっ!」
そんなわたくしを見てメイドでありばぁばの娘でもあるナタリアが心配してくれるのだが、その気持ちだけで嬉しいのでいつも通りの日常を過ごさせて欲しいと言うと、ナタリアは決意に満ちた表情で止まっていた手を動かし始めて仕事であるわたくしのお世話を再開する。
本当に、わたくしは家族にも使用人にも恵まれている。
ただそれだけでわたくしは頑張れる。
「うん、今日もいつも通り綺麗な出来栄えですわね。ばぁばより上手くなってきたのではなくて?」
「流石にその言葉は聞き流せませんよ。お嬢様。お婆々はまだまだ我が娘などに追い越される程老いぼれでは御座いませぬ」
「シャルロットお姉ちゃん、綺麗っ!お姫様みたいっ!」
そしてわたくしがナタリアを褒めた瞬間に扉が開き、ばぁばとナタリアの娘であるナナリーがばぁばに手を引かれて入ってくる。
「もう、お母さんもいい歳なのですから隠居しても良いのですよ?先程シャルロットお嬢様からお墨付きも貰えましたし」
「私の目が黒い内はまだまだ現役で居させて貰いますよ」
「シャルロットお嬢様は本物のお姫様なの?」
「うーん、そうですわね。こないだまでお姫様候補だったのですけれども今はただのシャルロットですわ」
「ナナリーっ!?す、すみませんシャルロットお嬢様っ!!ナナリーには悪気は無いのですっ!」
「分かっておりますわ。それに心からのお世辞ですもの。悪い気などしよう筈がございませんわ」
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