いつもと違った、俺の通学路
それは金色の朝日が輝いていた時間帯…
俺はある人と出会った。
いつも通りの日常
いつも通りの風景
いつも通りの満員電車
いつも通りの朝の通学
その中に一つ、他とは明らかに違う存在…
一切の淀みもない長い銀髪を後ろでゆるく束ね、翡翠色の瞳は見たもの全てを飲み込んでしまいそう。銀色がかった長いまつ毛に、雪のように白い肌。
完璧な配置に置かれた美しいパーツ。
中性的な綺麗な輪郭。
儚げに見えながらも、他人を寄せ付けない 圧倒的存在感があり、
男女問わず全ての人を魅了する。
それはまるで、美の完成系のように見えたが、俺は感じた。
…何かが欠けている気がする…
ずっと目が離せなかった。
電車に乗っていたのは、ほんの数分のはずなのに。
それがすごく長くも短くも感じた。
…俺の足が無意識に動く。まだだ、まだ見ていたい。
その人の後を追い、俺の足は動いていく。
その人を追ってきた俺は、
ビルの屋上へたどり着いた。
そこで屋上の周りを囲む柵の上に立っていたその人を目にし、飛び降りるつもりなのではと思った俺は叫んでいた。
「っ、なにしてるんですか!?」
「っ!?」
その人は振り向いて、驚いたようにこちらを見る。
「もしかして、死ぬつもりなんですか!?」
「…っ」
「そんなことさせない!人にはそれぞれ価値があるんだ!せっかくの人生なんだ。死ぬなんて、そんなの絶対だめだろっ!」
「…」
「あんたがあんたの、自分の価値が、わからないって言うんなら、俺があんたに教えてやるっ!一人一人価値があって、命がどれほど大切か!」
「………僕は自分が嫌いなんだ。…」
その人は言う。風になびく銀髪が朝日を浴びて、キラキラと輝いている。それが眩しくて、俺は思わず目を細める。
「僕は人とは違ってた。どこへ行っても疎まれて、居場所なんて、どこにもなかった。それでも今まで生きてきた。必死に生きてきた!信じてた人だって沢山いた。でも、みんな僕を裏切った!楽になりたくても、僕には死ぬ覚悟がなかったっ!それを今日覚悟したのに!なんで邪魔するの!?今まで生きてきた僕の気持ちが、君にわかるの!?」
そうか、電車の中で見たときに感じた違和感。あの時感じた物足りなさ、それは生気がなかったからだ。生きているのに死んでいるようで、まるで人形みたいだった。生きているときにずっと感じてきた絶望感、怒り、悲しみ、そんな負の感情が、今その人の中で渦巻いているようだった。
「わからないよ。わからないさ。僕にはわからない!あんたじゃないからな!」
俺がいうと、その人は少し悲しそうな顔をしてから言った。
「…っ、そうだよ、君は僕じゃない。だから僕に構うな!」
「あんたの気持ちはわからない。っでも!残ったものの気持ちはわかる!俺には身内がいない。みんな癌で死んだんだ。だから一人残されてしたったものの気持ちはわかる!あんたを大切に思っていた人やあんたの大切な人はいないのか!?」
「……そんなの…いない。」
「そんなわけない!少なくとも一人はいる。俺はあんたが大切だ。」
「……?僕と君はさっき会ったばかりだ。」
「ああそうだ。しかしそれが何だ?人を大切に思うのは時間じゃない。お前が自分を大切にせず、他人がお前を見捨てるなら、俺がその分大事にしてやる。あんたの気持ちを考えて、あんたが寂しくならないように、いつもそばにいてやる!」
「勝手なこと言うな!簡単にそんなこと言って、あいつらみたいにまたっ…!」
「あんたを裏切るんだろ、って?」
「…っ!それは…」
「見くびんじゃねぇぞ!俺がそんなことするわけねぇだろ!他人と比べんな!」
「でも…っ」
「そんなこと言ってたら、一生あんたを大切に思ってくれる奴なんて現れないぞ。」
「…っ、…それは…………そんな人、どこにもいない。」
「俺なら大丈夫だ。」
「じゃあ…君は僕に暴力を振るわないのかい?」
「ああ」
「君は僕を侮辱しないのかい?」
「ああ」
「君は、僕に酷くしないのかい?」
「ああ」
「君は、僕を大切にしてくれるのかいっ?」
「ああ」
力強く頷いた俺を見たその人は泣いていた。
本当はずっと寂しかったのだろう、悲しかったのだろう。怒りや憎しみ、絶望なんて二の次だったのだろう。微笑みながら泣いているその人の顔はとても綺麗だった。その顔にはしっかりと生気が宿り、生き生きとしていた。
俺たちは互いに抱きしめ合った。
「俺は鈴坂 生志だ。生きるに志すで生志。あんたは?」
「生志、生志か。…いい名前だね。生きることを志す。命を大切にする、君にぴったりだ。あのね、黙っててごめんね。…僕、神様なんだ。」
「…ん?」
「うん」
「???????」
「ふふ」
「?!!?!?!!!」
これには流石に驚いた。
「光星ノ神 帝、 星の神様なんだ。」
「は、はあ…」
「あはは、でもね、もう天界へ戻らないといけないんだ。僕の役目は君の価値を確かめることだったから。」
「…?」
「君ね、もうすぐ死んじゃうんだ。」
「っはあ!?」
「親戚の人と同じで癌になってね。」
「えっ、?」
「それでね、僕のお気に入りだった君を助けるために、最高神様にお願いしたんだ。僕が下界に行って、その子の価値をあなたに見せることができたら、あの子の寿命を延ばしてもらえますか?って。」
「え?、ほ、本当?」
「うん。」
「だから、多分もう君の価値が分かったと思うから、僕は帰らなくちゃ。」
「え、じゃあさっきのは全部演技?」
「ごめんね?」
「っ…っ…っ!」
呆れて言葉も出ない。
「あはは、じゃあね。君に星のご加護を…」
そういうと、帝は空高くへ登っていった。
………
…………………
……天界にて…………
………………………………………
「面白いでしょう、あの子は。最高神様?」
「わっはっはっは、そのようだな。帝よ。」
「では…?」
「ああ、約束通りあやつの寿命を延ばしてやろう。」
「ありがとうございます。」
「わっはっはっは、気にするでない。」
「はい。では。」
「ああ、また来るといい。」
「失礼致しました。」
………
……………………
……生志…嘘をついてごめんね……本当はね…
…生志に言ったこと…嘘じゃなかったんだ…
………僕は……神になる前の記憶がある……
…その時に体験した…本当のことだったんだ…
……その時の辛い記憶が…政治のおかげで……
………少し楽になった気がするよ………
…………人間にも…神になる方法がある……
……生志も今のまま……生きていけば………
………神に…なれるかも………しれないね………
……………生命神とか………似合いそうだね……
………また君に……会いたいなぁ………
…………………あなたに……神のご加護を……
〈end〉
作者「それじゃ一言…って、え!あ、
ちょっと!」
帝「読んでくださった方、ありがとうご ざいました。あなたに星のご加護を…」
作者「じ、自分のセリフが…泣」




