克服のはじまり。
「離してよ!!」
思わず顔を赤らめたみむ
「いや 落ちて来たのあなたでしょ!笑」
それはそうだ。
ユメトに下ろしてもらい 穴の中を見渡す。
こんな感じだっけな?まるっきし覚えてないや。
「それじゃ進むか!」
ユメトは 奥へと進んで行った!
「待ってよ!!!」
みむも急いで ユメトの後をついていく。
「本当リアルだよね!人の夢の中に入る事が出来る日が来るなんて思わなかったなぁ。」
たしかに。夢の中なんて
もっと適当な物だと思ってた。
いつも断片的で 刹那的で
起きたら覚えてない景色がこんなに
繊細に見える。画期的発明だ。
人の脳の情報量は 凄まじいものである。
脳は 1ペタバイトを記憶する事が出来るらしい。
そうな事考えるとどんな コンピュータよりも ハイテクで面白いと思えた。
「あれ?行き止まりだ」
進んで 1分もしないうちに
行き止まりになった。
だいぶ 穴は小さななり 屈んでやっと
進める程度である。
「変な穴!こんなのがトラウマだったの?」
「いや 小さい時の事だから あんまり覚えてないんだよね。」
10数年前の夢の事を覚えてる訳が無いし
ずっと 心の奥に鍵をかけていたから
トラウマってものの 脆弱さを 思い知った。
「掘ってみる?笑笑」
「え?でも どうやって?」
何の道具も持ってない。手で掘るのは馬鹿らしい。
「いや お前の夢だろ!なんか 掘るもん想像しろよ!」
そうこれは 夢の世界である。
自分の想像したものは いつの間にか手にしてるのである。気づいた時には 手には 大きいスコップを
持っていた。
「え?!笑笑何これ 凄い笑笑」
「お前の夢なんだから お前の好きな通り描けるんだよ!ほら そのスコップ貸して!!」
ユメトは スコップを手に取り
その穴を掘り始めた。
しばらく掘っていると ユメトの手が止まった。
「なんだこれ。」
私は ユメトの 視線の先にあるものに
目をやった。
「骨?」
人の骨の様なものが 出てきた。
掘り進めれば 掘り進めるほど
骨の様な物が出てくる。
「随分趣味の悪い 夢見てるんだね。」
ユメトがそう言いながらも掘り進めていく。
すると 唸り声の様な声がした。
「なに? ...」
「お!これで 何かがはじまるのか!この骸骨が
この夢のトリガーなんだな!」
そうすると ユメトは 頭の骨をスコップで
叩き割った。
「ちょっと!?何してるの?!」
「これは夢の世界なんだよ。トラウマなんだろ?
じゃあ 進まなきゃ何も始まらないだろ?!」
「そうだけど...。」
唸り声が鳴り止んだ。
「ほらな。たったこれだけの事だ。お前の夢はお前の自由なんだよ。」
「うん...。」
なんだか嫌な予感がする。
そんな事を想像したら 悪寒がした。
ドン!!!!
物音と共に 急に 世界は暗闇に包まれた。
さっきよりも大きな唸り声がしはじめた。
「やっとはじまるか!!このゲームが!
ほら!みむ!まずは 光るものを想像しろ!」
「わ...分かった!!」
光るものを想像すると その場が少し明るくなった。ランプの様な物を手にしていた。
そして 目の前には 真っ黒の影の様なものが
渦巻いていた。
「な...なにこれ?!」
「これがお前のトラウマの正体か!!倒しちまおうぜ!!...みむ?」
私はその場にしゃがみ込んでいた。
「怖い...助けて!!助けて!!!」
トラウマを思い出して 私は動けなくなっていた。
「もう 私は死ぬんだ。もうダメだ。助けて。
なんでもします。助けて下さい。私が悪いです。
いい子にします。ママ助けて。どこにも行かないで 嫌だ。いじめられたくない。1人にしないで
お父さんを 助けて。ごめんなさい。」
その時の感情がダムが決壊した様に
溢れ出した。
「みむ!これは夢だ!!こっちを見ろ!!
みむ!!!トラウマを倒すんだ!こっちを見ろ!!」
ユメトが 叫んでいても 思う様に
体と心が一致しない。
ユメトと 私は 闇に包まれていく。
「ごめんなさい。ごめんなさい。全部私のせいだから 私が死ねば きっと ママは帰ってくるから
パパ泣かないで。」
もうダメだ。また私は この夢に襲われる
今度こそ終わりだ。感触もある。気持ち悪い。
きっとこれが私の運命だったんだ。
「違う!お前の夢は お前が変えれる!
お前のトラウマは お前が自分自身で変えるんだ!」
その言葉に 私は少し救われた気がした。
「この 化け物を 倒せるもの この化け物を倒せるもの!! もう何も失いたくない!!!!」
大声で叫ぶ様に 願った。
すると 手には 細い剣を持っていた。
「あああ!!!!!」
一心不乱に 振り回す様に 私はその剣を振った。
気付くとそこには ユメトと私だけだった。
「ほら 変えれたじゃん 自分の手で。」
何故か 清々しい気分だった。
「改めて。俺は ユメトよろしく。
今度は 俺の夢に遊びに来てな。」
そうして ユメトは ポリゴンが弾ける様に
消えて行った。