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dreamers high.  作者: 鈴木ひきこもり
2/14

冒険がはじまり。

蝉の声が僅かに聞こえる。

実家の埼玉を離れ 東京で1人暮らしの大学生。

エアコンの温度は 一番低くして

毛布に包まる。

これ程至高な事があるだろうか?

これこそ ヒエラルキーの頂点だけが味わえる

最高の幸せだ。


去年の春先に買った 少し首元が伸びた

白のオーバーサイズTシャツと 黒のショートパンツ。家ではこれくらいで十分である。


「みんなコンクリートに埋まってるのか」


蝉の声が 例年より少なく感じる。


「昔の私は 蝉の"夢"を見てたのかもしれないね」


小学2年生頃 まみの家族は崩壊した。

母親が覚醒剤使用の為に逮捕され

父親方に引き取られた。


大工を生業としていた 父親の大きくて

逞しい体。強くてカッコいい自慢の父親が

その日からは 毎日 泣いていた。


「ごめんな。みむ。こんな思いさせて」


料理が出来ない父親との 回転寿司の帰り道

街灯も無い 夜道で そんな事を言われた時は

流石に どんな顔していいのか 分からなかった。


その数週間後から 私は不眠症になった。

毎日コンクリートに埋められる夢だった。

穴を掘って 黒い人間から 逃げると そこに

コンクリートを流し込まれて 死ぬ夢だ。


そのせいで 車の音 扉が開く音 とにかく

世界に溢れる全て音が 怖くて毎日泣いていた。

特に一番苦しめたのは 蝉の声だった。


そう思うと 蝉は何か伝えたかったのかもしれないね。なんて柄にもなく 情緒的に考えてしまっていた。


-------ピンポーン-------



インターフォンが鳴る。

「宅急便でーす」


はて。なんだろう?注文した洋服?

コンタクトレンズ??

「はい!今開けまーす」

マンションの入り口のオートロックを開ける。


----ピンポーン---


2度目が扉の前に来たという事だ。

玄関前にある 姿見で 申し訳程度 髪型を整え

扉を開ける。


「あっ どーも お届けものです」

青とグレーが半分半分の 作業服

グレーの部分には汗が滲む 初老の男だ。


「ありがとうございます。暑いですね。」

扉を開けると 蒸し釜を開けた様な 熱気と湿気。

ヒエラルキーの頂点に立つ者としても

惜しげも無い 気遣いをするべきだと思った。


「お茶飲みますか?」


「いいんですか?!ありがとうございます!」

もはや 喰い気味できた。


2〜3メートルの廊下を渡り キッチンから

ペットボトルを取り出し コップに注いだ。


「どうぞ」


「あぁ!ありがとうございます!」

2秒...いや...1秒...?あっという間に飲み干した。



「はぁ!!どうも!!」

もう一杯飲みたそうな顔をしていたが

男は ポケットに手を入れ ポールペンを取り出した。

「こちらに サインをお願いします!」

青い用紙にサインを書いた。


-----沓澤-----


「はい!どうも!」

2枚になってる用紙の上の部分をめくり

男は ポーチの中に入れる。


「いいですね!それ!中々手に入らないでしょ?」男は ポーチのチャックを閉めながら言った。


「あ、そうなんですか?」と、箱を見る。

----Dreamers----

あ、この前の...


「中々手に入らないんでしょ?息子も欲しがってたけど 高いしね!もう少し安くなってから買おうかなって!丁度まだ出荷台数も限られてるしね!

それじゃまた!!!ありがとうございます!」

男は帽子を取り 頭を下げた。


扉を閉じようとすると 男が戻ってきた。


「あ!お茶もどうも!!」

律儀な人だ。


「いえ!お仕事頑張って下さいね!」

男は 少し笑い 蒸し釜の中に 飛び込んで行った。



「へぇ。そんなに凄い物なのか。売ったらどんくらいになるんかな?」

ゲームと呼ばれる物は どうしても興味が湧かない。何より 出荷台数が限られてる今 いくらで売れるか 頭の中で算盤を弾いていた。


スマートフォンを取り出し カメラアプリを開き写真を撮る。SNSを開き 文章を打ち込む。

無駄な動作なんてものは 一瞬足りとも無い

最早これは 達人と言えるレベルなのでは無いだろうか?



Dreamers 届きました!

今日から 楽しみだなぁ(//∇//)

#実はゲームっ子

#Dreamers

#夏はひきもり決定

#家スタイル


完璧だ...。惚れ惚れする。

あまりにキラキラし過ぎていても

取っつきにくさを感じさせてしまう

実はゲームが好きだなんていう

...ギャップ!!!!!

我ながら 涎の分泌量が増えるほどの 自己プロデュース力...なんなんだ?完璧なのか?


イメージは出来ている。スーツに包まれた男性達が我先にと 名刺を渡して来る姿。

「どうか うちの事務所に!」

「いや 僕はねずっとSNS時代から この子を事務所に入れると決めていたんだ!」

「待ってください!私達のプロダクションは 君をスターに出来る準備が整って居ます!是非!」


「あぁ...人生 楽しい!!!!!」

Dreamersらしき物を 玄関に置き去りにして

ソファに横たわり 反応を楽しみにした。


いつの間にか みむは眠りについていた。













...本人確認。リンクを開始します。

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