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勇者生産工房

 勝利を祝した晩餐会は限られた物資の中で上手くやりくりしたのか、慎ましいながらも盛大に執り行われた。

 特に勇者イヴと聖女チラの活躍は誰からも褒め称えられたものだ。イヴは内心どう思っているかはさておき淑女の仮面を被って貴族達に応対していた。あくまで公妃ミカルとして来訪している事情もあってだとは思う。多分帝国そのものではなく皇帝である姉のためだろう。健気だ。

 チラは疲労も激しく寝たままとなると思っていたら、晩餐には参加してきた。余計な心配をかけない為に無理をしているのは何となく察したけれど、誰もあえて口にはしなかった。ただ思ったよりは回復に向かっているようで安心した。補助魔法をかけたかいがあったというものだ。

 ただ軍人達は勇者や聖女ではなく軍の指揮官として活躍したアタルヤの方に関心が行っているようだった。意見交換は専ら軍略や運用する兵器、そして訓練法など多岐に渡っていた。アタルヤにとっても勉強になるようで、結構会話を弾ませていた。

 で、わたしは端の方で食事をつつける筈もなくプリシラ共々囲まれてしまった。やっぱり活躍云々のはるか以前の問題として元勇者一行って肩書がまずかったか。こう言うのは全く慣れないから対応に困ってしまったのでもはや開き直って色々喋った。内容は全く覚えていない。

 国が救われたからか、エステルはとても嬉しそうだった。時々歓喜で泣き崩れそうになる所を気遣われたりしていたようだ。彼女も相当苦労を重ねていたしこれからも課題は山積みで山あり谷ありな道が待ち受けている。ただ今日だけは何もかも忘れて楽しんでほしいものだ。


 そんな中、数合わせの員数を揃えた功績を残したバラクの姿は結局最後まで見えなかった。



 ■■■



「別に付いてこなくても良かったのに」

「イヴの復讐には今も興味ありません。けれど放ってはおけません」

「それって私を? それともバラクを?」

「両方です」


 晩餐会も宴もたけなわの内に締めくくられ、辺りもすっかり暗くなってしまった。ただ街中ではまだまだ宴で盛り上がっていて寝静まる気配が無い。やはり魔王軍の脅威が去った反動、嬉しさがあふれ出ているんだろう。

 そんな中をわたしとイヴは街中を進んでいた。時々盛り上がる人達に食事や酒を勧められたけれど丁重にお断りしておいた。ただでさえちょっとお酒が入って妙に興奮した気分になっているのにこれ以上飲んだら潰れてしまいそうだ。


 目指す先は公都の外れにあるバラクの研究施設だ。歩くには少し遠いので馬を一頭借りての道のりになっている。人がいなければ疾走させて人がいれば普通に闊歩させる感じか。

 やがて人気もなくなってきた辺りで研究所の建物が見えてきた。この間訪れた時は朝だったけれど、その時とはやはり雰囲気が違うように思えてしまう。遠目で見ても入口は兵士達によって厳重に警備されているようだ。勤勉だな。


「あら、勇者様とあろうお方が随分とゆっくりとしたご到着ですこと」


 突然側道の方から声をかけられた。しかも良く聞いた、知った声だ。思わずそちらの方に顔を向けると、なんとプリシラとチラがいるではないか。しかも二人とも晩餐会時の着飾った姿ではなく防衛戦時の完全武装状態だった。


「ど、どうしてここに?」

「帆船と同じ要領で車に帆を付けて風を吹かしましたの。そうすれば馬よりも速く疾走出来ますので、イヴ様方が出発されるのを見て先回りいたしましたの」

「いえ、方法も知りたかったんですけれど、一番聞きたかったのは動機の方ですって」

「分かっていますわよ。イヴ様はこれからバラクの研究施設に強襲をかけるおつもりでしょう?」


 プリシラは施設に背を向けつつも親指でそちらを指し示した。彼女は笑顔を見せてきているけれど、目は全く笑っていない。むしろ激情を煮えたぎらせているようにも感じた。隣にいるチラは怯えながらも覚悟を決めているのか強い眼差しでこちらを見つめてきている。


「あの男の研究は必ずや今後もチラ様に害をもたらすと確信していますの。ならば今のうちに排除するのみですわ」

「あ、あの方の研究は主の教えに真っ向から背くものですぅ。私の事なんかより勇者と聖女が……イヴ様やアダちゃんが己の欲を満たす為に利用されるなんて許される筈ないです」

「私共二人も同行しますけれどよろしくて?」

「……邪魔するなら容赦しないからそのつもりでいてくれればね」


 イヴが軽く笑って颯爽と入口の方へと足を進めようとして、プリシラに腕を掴まれて後ろ側に引っ張られた。


「邪魔するなって忠告した矢先にこれは酷いと思うんだけれど?」

「正面突破で立ちはだかる輩を残らず血祭りになんて許されると思っていますの? もっと頭を使っていただきたいですわね」

「ではそう仰るプリシラ様のお手並みをご拝見させていただきたく。よろしいかしら?」

「ええよろしくてよ。そこで指を咥えて眺めているのですね」


 イヴは素早く矢を射ると風を切る音が少し聞こえた。そう言えば弓矢は音も立てずに遠くの敵を狙えるから暗殺にはもってこいなんだと書物で読んだ覚えがある。薄暗い夜の道を矢が突き進み、やがて門の左右で警備に当たっていた兵士達にぶつかった。そう、ぶつかっただけで射抜いてはいない。にも拘らず兵士二名はその場に崩れ落ちる。


「今の矢じりが無かったみたいだけれど、わざと?」

「ええ、殺傷力を無くすために。ただ催眠の追加効果がありますから結果はご覧の通りですわ」

「命中した相手を強制的に眠らせる、か。確かに戦闘不能にさせたいならこれでも十分ね」

「目に映った相手は片っ端からこうすればいいでしょう。さあ、行きますわよ」


 二人の警備兵が守っていた門は固く閉ざされていたが、イヴが剣を一閃させると轟音を立てて警固な扉は鉄屑の山と化した。


「清々しいまでに強引で大雑把ですわね」

「この手の施設は正面突破するまでよ」


 そもそもこう言った研究施設は厳重な警備体制が敷かれていて、敷地外の不審者も捕捉出来るよう監視されている筈だ。つまり裏から息を潜めて侵入しようが正面扉を突き破って堂々と入り込もうが結果は変わらない。魔導師の研究施設に侵入するとは魔導師の叡智、つまり魔導師としての価値全てを盗み取る下劣な行為に他ならない。侵入者はどうされようが文句は言えない立場なのだ。

 まあ、つまり敷地に一歩足を踏み入れるなりけたたましく警報が鳴り響いてもおかしくはないのだ。


「うるさいわねえ。夜中に大音量で警報鳴らして近所迷惑だと思わない?」

「その通りですけれど侵入者のわたし達がどの口で言うか、だと思うんですが」

「二人とも、私めが取りこぼした分は対処してくださいましね」


 プリシラは次々と矢を射出させていく。遠くの方で何かが倒れる音がしていくから、この警報を受けて侵入者を排除すべくやって来る者達を片っ端から夢の世界にご招待しているんだろう。


 敷地内は夜にも関わらず外灯で照らされていて明るい。きっと昼夜を問わず研究に打ち込む為なんだろうけれど、何て贅沢な。せめて灯りを全員に所持させるぐらいにすれば安上がりなのに。そのおかげもあって曇りの夜中でも遠くが見通せるのだからここはありがたがるべきか。


 しばらく敷地内を歩くと一際大きな建物が見えてきた。入口からは煌々と光が漏れてきており、建物の中は昼間のように明るいのだと窺えた。その間プリシラが次々と誰かを沈黙させた以外特に変わった事は起こらなかった。


「マリア様。魔導師の研究所ってこんな簡単に攻略できるものなんですの?」

「いえ、研究室への侵入は魔導師と侵入者の叡智と叡智のぶつかり合いです。死にもの狂いで阻んで当然と言い切ってしまってもいい。バラクの研究内容であれば合成獣が湧き出てもおかしくないのですが……全く見えませんね」

「大方、とりあえず最低限侵入者に対応しましたと格好だけ付けて素通りさせる魂胆では? バラクだって私共四名の力の程は熟知しているでしょうし」

「それも考えられますが……」


 たしかにいくら雑兵をけしかけたってわたし達四人が相手では足止めにもならないだろう。それでも少数精鋭をけしかけるとか狡猾な罠に誘い込むとか対処法はいくらでもある筈なのだけれど。


 結局疑問が晴れぬままにわたし達は建物の前まで来た。閉ざされた扉はイヴの前では意味をなさずにその残骸が床一面に散らばっていく。

 施設内は無駄なぐらい昼間のように照らされていた。ただ誰一人としている気配が無く、同じ光景を目にしている筈なのにこの間と全く印象が異なる。何というか、無機質で冷たいのだ。生活感も無く小奇麗な有様は、どうも命ある者が過ごす空間とは到底思えなかった。


「ところでマリアはこの間ここを訪ねたんだそうね。バラクがいそうな場所に心当たりは?」

「ありませんね。案内されたのは一般公開出来るような施設の表側ばかりでしたから」

「施設の案内図が玄関口にあるようなんだけれど、この間の道順を教えてもらえる?」

「ええ、構いません」


 わたしは壁面にかけられた案内図に指を当てて案内された場所を辿った。高くて指が届かない場所は杖で指し示した。意外にも構内案内図は緻密に記されているので助かった。

 ただ、なぞっていると段々と違和感が生じてきた。何か、敷地面積にしては建物内部が小さくない?


「これ、もしかして全部は記載されていない?」

「ですわね。さらけ出してもいい部分しか明記されていませんの。随分と姑息な真似ですこと」

「じゃあ行っていない部分を片っ端から探らないといけないのでは? わたしは探知魔法は使えませんし」

「ですけどもうちょっと当たりを付けないと一晩かけても回りきれませんわよ」

「そんな事もあろうかと、エステルに良い物をもらってきちゃった」


 案内図を前に相談するわたしとプリシラの前にイヴは何かを広げてきた。大きな羊皮紙に記されていたのは、案内図と同じくこの研究施設についてだった。


「この研究施設の設計図ね。エステルったら私がバラクと共に旅をした勇者だからって公爵権限でこの極秘資料をくれてのよ」

「これ、情報漏らした人はバラクに報復受けても文句言えませんよ」

「確かに案内図で感じた違和感が設計図にはありませんわね。こちらがより正確な間取りが記されていると」

「さっきマリアが教えてくれた場所を除くと、怪しいのはこの辺りかしらね」


 それは案内図には記載されていないこの研究棟の奥側だった。どうやら地下へと通じる階段も設けてあるようだ。資金を提供した相手を招く際は表向きの研究内容を公表して、裏では真の思惑に基づいた研究を進める、か。上手い手口なものだ。


 そうと分かれば、と足を進めていく間は誰にも遭遇しなかった。建物の中では警報は鳴っておらずわたし達が進む足音だけが廊下に響く有様だった。正直学院の施設の方がぼろかったけれどまだ温かみがあったな。

 そしてわたし達は建物の端までやってきた。いや、正確には建物の端と偽られた場所にだ。一見すると先の無い行き止まりだけれど、その目で観察すると確かに先があるように見える。不鮮明で良く分からないな……。


「マリア。この先って扉? それとも壁があるように見えるだけ?」

「壁ではないようですけれど、剣で振り抜いて確認すべきかと」

「それでしたらイヴ様が直に触れるより私めが飛び道具で確認すべきですわね。お退きなさい」


 わたしとイヴは左右に分かれた。プリシラは弓を引き絞り、力ある言葉を放った。


「雷霆よ、その矛をもって大樹を引き裂け!」


 プリシラが射た矢は電気を迸らせながら突き進み、壁へと吸い込まれていった。直後、その奥らしき方向から断末魔の悲鳴が耳をつんざいた。心臓が飛び出るかと思うぐらい驚いてしまい、思わず両手で耳を塞いでしまった。


「偽りの壁の奥に伏兵を忍ばせる。手垢が付いた策ですこと」


 途端に壁だった場所が揺らぎ、奥の様子が露わになった。その先の通路はこちら側と違って全く灯りがなく暗闇が広がっているようだ。ただ、焦げ臭くなった合成獣の物言わぬ体だけは見える。


「マリア様。この先を照らせませんの?」

「そう言ったのは火属性に優れていないと。わたしはその系統はからっきしでして」

「で、でしたら私がやりますぅ。主よ、我らの進みゆく道に光を」


 チラが司祭杖から放ったのは特定方向を明るく照らす光だった。漠然と灯りの周り全体を照らすのではなく光線に方向性を持たせてより遠くを明るくする照明器具があるし、そんな感じだろう。

 どうやら暗闇に潜んでいたのはあの一体だけではなかったようで、合成獣の群れが潜んでいた。そのまま何も気付かずに悠々と進んでいたらたちどころに連中の餌となっていたに違いない。


「ようやくやる気を出してきたみたいね。まあ、急がず焦らず進んでいきましょう」

「本当、敵陣に強襲をかけている割には余裕ですわね」


 イヴはそのまま暗闇に包まれた通路へと進行を開始した。チラが照らす先の敵は悉くプリシラが仕留めていき、その死体を盾に突き進む相手をイヴが難なく切り伏せていく。そんなわたしはチラの後ろでしんがりをしていた。

 程なく、わたしが立てるように持っていた杖の先端から攻撃魔法が射出された。向かう先は後方で、悲鳴が聞こえてくる。念の為に後ろを振り返ってみると、プリシラ達が排除した相手の他に新たな犠牲者が出来上がっているようだ。


「後ろから奇襲でも仕掛けてきましたの?」

「どうやらそのようですね。それに対応する準備はしていますけれど」


 オートマジックアロー、無属性攻撃魔法を自動で発動する。発動させる魔導師に対して悪意、害意を持つ者に対して自動的にマジックアローを放つのだ。帝都からダキア公都に戻る際に見かけた防御設備と同じ理屈だったと思う。

 利点は全方位を警戒しなくても範囲内の敵を自動的に対処する事。欠点は常に待機状態なので消耗は通常のマジックアローの比ではない事。ただこうした暗闇の中などの悪条件ではこの自動発動が役に立つのだ。

 最も、自動発動出来るのはマジックアローのように簡単な魔法だけ。それ以上になるとわたしの技量では無理に近い。よって強敵相手には牽制程度の効果しか見込めないだろう。


 そんな中で裏側を探ってみたものの、特に表側から変わった様子は無かった。やはり本命は地下施設の方だろう。

 わたし達は意外なぐらい長い階段を降り、地下階層に足を踏み入れた。地下階層は足元に照明が点在する以外は暗いままだった。ここまで来ると合成獣すら見かけなくなり、再び無人に逆戻りとなった。廊下を進むわたし達の足音だけが響き、わずかな呼吸音さえ聞こえてきそうだ。

 通路の左右には扉がいくつもあったので調べるかイヴに問いかけたが、彼女が言うにはバラクがこの研究施設の責任者なのにこのような辺鄙な場所に研究室を設けるわけがない、と一蹴された。


 そうしてやって来たのは丁度合成獣精製施設の真下に当たる位置だった。地下施設でもどうやらその場所には何らかの設備があるようだ。


「じゃあ突入するわよ」


 イヴは申し訳程度に一言入れると閉ざされた扉を切り刻んで進入路を確保した。その先には広い空間が広がっていて、上と同様にいくつもの槽が並べられていた。傍らの作業机には筆記用具と羊皮紙が積み重なっていて日夜ここで研究に明け暮れているのだと分かる。

 ただ、液体に満たされた槽の中に入れられていたのは合成獣ではなかった。


 それはイヴやチラによく似た何かだった。ちゃんと人型をしている槽には精錬中と注意書きされた板がかけられ、おぞましい肉塊にしか見えない物体が漂う槽には処分予定日云々と記載された板がかけられている。


「ひ、ひいいっ!!?」

「成程、ね。連中はここで造られていたのね」

「あの外道が……っ!」

「ゆ、勇者と聖女の製造工場……」


 チラが悲鳴を上げる。イヴが冷淡につぶやく。プリシラが憤りで拳を震わせる。わたしはただ口元に手を当てて現実を受け止めるのが精一杯だった。

 理屈では分かっていた。勇者と聖女を量産するとはつまりこういうものだ、と。けれど実際目の当たりにするとやはり嫌悪感しか込み上げてこなかった。バラクが言うにはこういった割り切れない所が魔導師らしくないそうなのだが、そんなのこちらから願い下げだ。


「ところでマリア、量産型勇者やエヴァを見ていた時からずっと疑問だったんだけれど」

「……何でしょうか?」

「バラクの奴はどんな理屈だか知らないけれど私の設計図を複写して勇者を造っているのよね。それにしては細部が違うんだけれどどうして?」

「違う? でもエヴァとイヴは酷似していて――」


 いや、瓜二つだった、酷似していた。けれどイヴとエヴァは細部が何処となく違っていた。言われて初めて気づいたけれど、理由は何となく想像がつく。


「同じ設計図から生まれていてもたどる過程が違いますから。成長する際の食事の栄養、運動の程度、寝相まで体格や骨格に関わってきますし。双子の兄弟だって全く違う環境で育てば差異が広がるものですよ」

「ああ、道理でこの量産型の連中は身体が整いすぎているのね」


 イヴは無造作に自分と同じような顔をした人が入った槽を軽く叩いた。水圧にも耐えられるよう分厚い透明な材質で造られているんだろうけれど、そう乱暴にされると凄く心臓に悪い。


 顔が左右非対称になるのは顔を横にしていた頻度とか食事時での顎の動かし方に関連する。そうやって成長してきたイヴと槽に浸かったまま成長させられたエヴァや量産型では違いがでて当然だ。ただし、それは全くの同一人物ではない程度の話で、双子ぐらいには酷似したままの筈だ。


「それじゃあ例えば私と全く同じ身体を造り出すのって出来る?」

「隅々までくまなく調べて身体の歪みまで情報収集しているなら再現率も高くなるでしょうけれど、バラクの目的は勇者の量産であってイヴの創造じゃあない。全くもって無意味です」

「そうね。アイツの目的と照らし合わせたら細部までこだわるのはばかげているわ。それじゃあマリアに更に聞くけれど……」


 イヴは衝撃を受けているチラを指差す。そして、衝撃的な言葉を口にした。


「――どうしてチラはアダの方に近いのかしら?」


 チラとアダが全く同じ? バラクの口ぶりでは聖女チラはかつて仲間だった聖女アダから造られた存在、つまりエヴァと同じだ。なら製造工程も量産型と何一つ変わっていないだろうから、さっきのやりとりのように良く観察すれば差異が見えてくるはずだ。

 けれど今のイヴの発言が真実ならチラは量産型よりアダの方に似ている、と?


「まるで本当に双子の姉妹みたいね」


 微笑を浮かべるイヴに対し、混乱するばかりのわたし達は何一つ言葉を返せなかった。

お読みくださりありがとうございました。

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