表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/148

成敗

 イヴは虚空から闇の剣を取り出すと、膨大な量の魔力を収束させていく。それはエヴァが行使してきた光の一閃で見た光景。けれど決定的に異なるのは左右対称の構えなのと、属性が光から闇に反転している点だろうか。

 イヴは左利きだったから左手で光の剣を振るって右手で盾を装備していた。その右手で闇の剣を持つのは結構違和感がある。もしかして先ほど大量の魔物を虐殺した際は闇の剣を右手で振るっていたから盾を装備してなかった、とか?


「ま……魔王様……」

「おいたがすぎたね。相応の報いはちゃんと受けてもらうよ」


 慈悲深い穏やかな笑みをさせたイヴは無慈悲にも宣告を下すと、剣を大きく後ろに引いた。これもエヴァが光の一閃を放った際に見せた構えだ。その結果がどうなるかは一度も目にしていない筈のサロメには分からないだろうけれど、彼女は涙を流しながら青ざめてしきりに何かを呟いていた。


「ち、違うんです! 全ては貴方様のご復活を願っての事! 貴方様に刃向うだなんて気持ちは微塵も……!」

「己の主すら見分けが付かない忠誠心なんて信用出来ないね。そこで満身創痍になっているノアは義務と義理で付き合うって公言していたにも拘らず何となくだけど察してくれたよ。なのにサロメったら魔王様への忠義こそ全てってみんなに言いふらしておきながら全然じゃあないか」

「そ、そんなぁ……! 酷い……残酷すぎます……!」

「これからの僕には君は要らない。じゃあね、ご苦労様」


 その時サロメが何をしたかったかは分からない。全てを否定されて失意のあまりに逃げ出そうとしたのか、現実を受け止められなくて自暴自棄となりイヴへと襲い掛かろうとしたのか、それとも単に愕然としたままその場に崩れ落ちようとしていたのか。

 けれどサロメが動くよりも早く、イヴの剣は振り抜かれていた。


「掃え闇の一閃よ」

「ま、魔王様ああああぁぁぁ!!」


 イヴの剣から放たれた闇の奔流は瞬く間にサロメを丸ごと飲み込み、まだ日が昇る空に漆黒の流星となって駆け抜けていく。やがて強大な力が放たれた重圧感は無くなり、イヴの目の前にいた筈のサロメは跡形もなく消えて無くなっていた。

 イヴがもう一度軽く剣を振るうと闇の剣は消失する。そして彼女は思いっきり伸びをしてからこちらの方へと振り返った。その時にはもういつも通りの彼女に戻っていて、凛とした微笑を浮かべた佇まいに戻っていた。


 が、今の顛末を見て先ほどまでと同じようにイヴと接する者がいるだろうか? エステルが見せている感情は安心ではなく明らかな怯えだった。おそらくは平穏を脅かした魔王軍、それを率いる軍団長のノアやサロメに対してよりもイヴに恐怖している。近衛兵達も同じですくみ上りながらも何とか気力を奮い立たせてエステルの前に立ち、イヴへと刃を向けている。


 ……さすがに激戦を抜けてこの緊迫した空気は居心地が悪い。本当は雰囲気作りはわたしの役目じゃあないけれど、仕方がない。


「イヴ、今の一撃でサロメは仕留めたんですよね?」

「ええ、間違いなくね」

「では魔王軍を指揮していた軍団長は二名とも下した形になります。勝鬨を」

「へ?」

「南東方面はイヴとエヴァの奮闘で片付きましたし、北東方面はチラの奇蹟で大打撃を与えて掃討作戦に切り替わった上に率いていたノアはここにいます。南方面を率いていたサロメがあのように深手を負って逃げていたなら、おそらくこちらに戦局が傾いているのでしょう。勝利と言い切っていいともいますが。それとも二方面からの報告を待ってからにします?」

「いえ、部外者の私じゃあなくて、指導者のエステル閣下の方がふさわしいんじゃあないかしら?」


 それもそうなんだけれど、当のエステルがこの様子だととても勝利宣言なんて出来る筈もない。この際勇者のイブがやっても問題は無いと思うんだけれど。この重苦しい雰囲気を吹き飛ばすにはそれぐらいしか方法が……。

 必死になって色々と模索していると急にわたしの肩に手が置かれて、思いっきり体重をかけせられた。危うくその場に膝を付きそうになる所を何とかこらえて、思わず犯人の方を睨みつけていた。


「お、お止め下さい! 死の淵に立たされて間もないのにそう無茶をされては……!」

「だ……大丈夫、です……!」


 わたしに掴まってきたのはなんと聖女チラではないか。彼女は唇まで真っ白にさせた上に苦しそうに呼吸を荒くさせていて、明らかに具合は最悪だ。無理もない、先ほどまで命を落としていた所を無理矢理引きずり上げて蘇生させたんだ。本調子に戻っている方がおかしい。

 それでも彼女の瞳は爛々と強く輝き、先をしっかりと見据えていた。わたしもプリシラ同様に彼女を止めようと考えを巡らせたものの、思い留まって無言で彼女を支える。


「何をするかは分かりませんけれど、それを最後にしてくださいね。この後は何がなんでも絶対に安静にしないと駄目ですよ」

「分かって、いますぅ……。マリア様ったら、酷いじゃあないですかぁ。もう……最悪の目覚めでしたよ。言葉では言い表せない酷い悪夢を……、いっぱい見ちゃったんですよ……!」

「すみません。お詫びに今晩ぐっすり眠れるよう活性魔法をかけておきます」

「……ありがとう、ございました」


 彼女は気力を振り絞りながらも唇に笑みを浮かべて頭を下げてきた。死生観に逆らったわたしに聖女のチラがだ。


「マリア様の想い、伝わってきました。これも立派な奉仕ですぅ」

「はは、物は言い様ですね」

「プリシラさん、私……もっと頑張ります。それで……魔の手を振り払えるぐらい立派な聖女になります」

「チラ様……」


 わたしとプリシラがチラを連れてきた先は城壁上に展開する兵士達を一望できる位置だった。聖女のただならぬ様子を目にした兵士達の間にどよめきが起こる。チラはわたし達から離れると司祭杖を高々と掲げた。その様子は先ほどまでの具合の悪さは微塵も感じさせず、堂々としたものだった。


「魔王軍を率いていた二名の司令官は勇者様とそのご一行が討ち果たしました! この戦争、私達の勝利です!」


 それは紛れもない勝鬨だった。最初は困惑していた兵士達も少しずつ聖女の気迫に圧されて段々と現状を理解していったのか、やがて大歓声に包まれていった。軍の盛り上がりが最高潮に達する様子を上から眺めるのは圧巻の一言に尽きる。

 チラは踵を返して悠々と塔屋上中央の方へと歩んでいき、城壁上の兵士達から見えなくなった段階に糸が切れたように倒れ込む。


「……お疲れ様です。ゆっくりお休みください、チラ様」


 彼女の身体を支えたプリシラは、愛おしそうにチラを抱きかかえた。



 ■■■



 結論から言うと旧キエフ公都の防衛戦は勝利に終わった。


 南東方面は言わずもがなだが、南方面はアタルヤ率いる帝国軍の登場で一気に形勢が逆転、魔王軍を壊滅させたらしい。やはりサロメに深手を負わせていたのはアタルヤ本人だった。逃がした件に付いては本人曰く「詰めを誤った」との事だ。

 北東方面は予測通りチラのもたらした光で半壊し、後は防衛軍と硬直状態に陥ったらしい。指揮していたノアが起死回生とこちらに乗り込んだものだから、打てる策が無かったんだとか。こちらの軍はサロメが打ち取られたと察したのか北東方向に引き上げていった。


 防衛に当たっていた軍が撤収準備に入り始めた頃、ようやくノア配下の魔人二名が動けるようになった。あれだけわたし達やイヴ達と死闘を繰り広げたのに平然としているのは素直に凄いと思う。


「えっと、それで魔王様は――」

「イ、ヴ。もっと愛を込めて!」

「……イヴはこのままイヴとして生きていくつもり?」


 口火を切ったノアの話をいきなりへし折ったよイヴったら。ノアも曖昧な表情で苦笑いをさせるのが精一杯のようだ。


「ええ、魔王って呼ばれていた僕には何の未練もない。好き勝手やってくれちゃっていいよ」

「知っているでしょう。俺は貴方の下だからこそ魔王軍の一員にいたんであって、イヴがそっちにいるなら俺だってあんなところに残ろうなんてこれっぽっちも思わないね」

「あらそう、じゃあどうするの?」

「亡命していいかな?」

「えっ?」


 何でもないようにノアは口にしてきたけれど、何かとんでもない事を聞いたような気がする。亡命? 魔王軍の一角を担う軍団長が?


「だってイヴもいないのにあんな退屈な連中と一緒に侵略戦争に従事する日々なんてやっていられないよ。もうそれだったら身分も財産もかなぐり捨て身軽になりたいんだけれど」

「殿、お待ちを」

「何? 止めるの? もう嫌なんだけれどつまらない毎日は」


 悠々と語るノアに物言いをしたのは魔人セムとハムだった。ノアは心底から嫌な表情をさせて彼らの方へと振り向く。憤怒を露わにふざけるなと怒声を口にするかと思ったら、逆に二人の魔人は片膝をついて得物を床に置き、頭を垂れたではないか。これにはノア本人も青の瞳をさせた目を丸くした。


「我々を置いていかれるおつもりですかな? 地獄の果てだろうと付き従います」

「そうは言うけれど他の軍団長からしたら俺は反逆者にすぎないでしょう。俺に見切りをつけた方がいいと思うけれど?」

「我らだけではありますまい。きっと殿に忠誠を誓った者達は誰もが思っておりますとも」

「どうか同行の許可を頂きたい」

「……勝手にすればいいんじゃあない?」

「ありがたき幸せ……!」


 ノアは面倒くさそうに返事を投げたものの、どこか嬉しそうにはにかんでいた。


「そうと決めたからには今南方を攻めている本軍を撤退させる! 今すぐ出発するよ!」

「ははっ!」


 彼は軽やかに魔人セムの上へと飛び乗ると、魔人二体は大きな翼を広げてそれを羽ばたかせる。ゆっくりと宙に浮いていく中、ノアは丁寧にお辞儀をした。その対象は……わたし?


「俺を二度も退かせたんだ。今度は菓子や酒でも持って挨拶に行くよ」

「目立たないようにしてくれたら紅茶でも用意しますよ」

「それじゃあ、またいつか!」


 魔人二体を伴ったノアはそのまま川沿いに南へと飛び立っていった。おそらくもう彼と敵対する場面には遭遇しないだろう。次会う時はきっと日常での一場面になっている筈だ。ふふ、これは早くも今後の楽しみが出来てしまったな。

 と思わず笑みをこぼしていたら何故かプリシラに生暖かい微笑みを送られた。


「マリア様、もしかして殿方に好感持たれたのは初めてですの?」

「別に異性とか同性とか関係ないですって。恋愛抜きに好印象を覚えたっていいでしょうよ」

「あら、ノアは結構真面目だし一緒に過ごしていて楽しいから、良物件だと思うけれど?」

「イヴまで何言っているんですか! どうして友情をそっちに結び付けたがるんです!?」


 何故か茶化されたけれど、別に男性としての魅力を感じないとは言わない。ただそれが恋愛感情に発展していないだけの話だ。わたしはイヴのような人生が狂うほどの恋い焦がれを未だ経験していないけれど、今後機会なんてあるのだろうか? 無くても困りはしないけれど……。


 ちなみにエヴァはイヴが先ほど内緒話をしていた。撤収作業で賑やかになっている中でのやりとりだったけれど、大まかな内容はプリシラが盗み聞きしてくれたので判明している。うん、正直他の人には到底聞かせられない内容だった。


「エヴァ。貴女にはサロメ亡き妖魔の軍勢を指揮してもらって、旧キエフ公国に蔓延る連中を大河東側に撤収してもらいたいの。いいかしら?」

「仰せのままに、マスター。しかし旧キエフ公国解放を名目に軍を起こした帝国軍は如何します?」

「まだ人類が生き延びている大河西側はともかく、人類が全滅した大河東側まで攻め込むとは思えないわね。しばらくはこの河を人類圏との大まかな境にしましょう」

「畏まりました」


「――って相談し合っているみたいですわね」

「……物陰に隠れて密談だって出来たのにわざわざ声を落としてこの場で打ち合わせするんですね。もしかしてプリシラの聴力を念頭に入れてわたし達にだけは把握させるつもりなんでしょうか?」

「アダム様はいたずら心がありましたの。単に私共の反応を窺って愉悦を味わうだけかもしれませんわね」

「それはそれでらしいと言えますけれど……」


 エヴァはイヴからの命令を受けて恭しく一礼し、その場を後にしていった。

 結局、本物の勇者が現れてしまって代役の女優は舞台から降りてしまった。けれど今のエヴァは希望の偶像として祭り上げられていた頃より生き生きとしているようにも見える。勇者として創られ魔王の虜となった彼女が行く先にはどのような茨の道が待っているのだろうか?



 ■■■



 エステルが南方側を担当していた防衛軍を労いに足を運ぶとの事だったのでわたしも同行させてもらった。プリシラは聖女チラの傍にいるそうなので、イヴと二人でだ。

 南側はほとんどイヴの独壇場となってしまった南東側とは異なり深い爪痕が残っているようだった。南方側の敵を破ったアタルヤ軍が守備に当たっていた兵士達と共に戦の後始末に従事する姿が見える。怪我人の治療、犠牲者の弔い、瓦礫の撤去と崩壊箇所の応急的修復など、多岐に渡っているようだ。

 防衛軍の兵士達はエステルの来訪を受けて作業の手を止めてその場に跪く。それは帝国軍として派遣されたアタルヤ軍、そして軍を指揮していたアタルヤ本人も含まれていた。


「帝国魔導協会所属、魔導師アタルヤ。救援要請に従い馳せ参じました」

「援軍を派遣していただいた事、心からお礼申し上げます」

「この度は遅参してしまい大変申し訳ございませんでした」

「い、いえ! 帝国の方々が来なければ私達はどうなっていたか……!」


 かしずくアタルヤが堂々とした振る舞いで公爵のエステルの方が緊張しているのか少し慌てているようだ。それでもアタルヤは一介の騎士らしくエステルを立てるように頭を低くする。


「敵本軍は此度の戦で破りましたが今だ公都は敵魔王軍の脅威に晒される可能性があります。つきましてはここより南東の第二都市、並びに北東の第四都市の奪還作戦を提案いたします」

「分かりました。今日中には正式な文章として形にしますので、それまではお待ちいただけます?」

「かたじけない。では明日にでも出陣いたします。それと大河西側に今だ散開する魔物共の掃討ですが、我が軍を二万ほど割いて従事させようと考えております。つきましては国土徘徊の許可を頂きたく」

「はい、民の安全が最優先です。各地域の平定に取り組んでいただけたらありがたいです」


 矢継ぎ早にアタルヤが要望を出し、エステルがそれに答えていく。記録する秘書官が大変そうだ。


「それと、遅れて出発した帝国軍本隊ですが、同日中に第三都市オデッサに入城出来る予定です。報告によればその数は十一万だそうです」

「じゅ、十一万!? そんな大勢の軍をこの国を救う為だけに……?」


 その場が大いにどよめいた。五万でも大軍なのにその倍以上が追加で動員されてくるのだ。もし帝国の気が変わってこの国を侵略しだした場合、総勢十六万もの大軍が矛を向ける形になる。そうなれば今の疲弊した旧キエフ公国ではされるがままとなってしまいかねない。そうした危惧からだろう。


「本隊はオデッサ入城の後に北進、公都を目指すとだけ聞いております。平定の後に帝国と条約を結ばれるのであれば、本隊を指揮している皇帝陛下としていただければ」

「帝国皇帝殿が自ら軍を率いて……!?」

「我々は今日中に公都北東側に軍を移して陣地を築きたく。兵站は不要ですので場所の確保を許可していただけますか?」

「わ、分かりました……。文官達には対応させましょう……」


 この後も会談は続いたものの、結局終始エステルは圧倒されっぱなしだった。何だか着実に皇帝陛下の旧キエフ公国属州化計画が進んでいるような気もするけれど、もはや誰にも陛下の野望を止められる者はいなかった。

 エステルが疲れ果てた顔をさせてその場を立ち去った後、アタルヤはわたし達にはにかんできた。


「聞いたぞマリア。大活躍だったそうじゃあないか」

「大活躍だなんてそんな。アタルヤさんの方こそ獅子奮迅の猛攻だったとお聞きしていますよ」

「敵が腑抜けていただけだ。これなら一年前人類圏に進出してきた魔王軍の方がまだ練度、士気共に上だったな」

「からめ手を得意とする種族だったそうですから、正面からの戦いには向いていなかったのでは?」


 アタルヤがわたしとの雑談をしている間もアタルヤ軍の兵士、騎士達はアタルヤの命令無しに手際よく動いていた。指揮系統がしっかりしていて頭を討ち果たされても軍を維持する仕組みが出来ている証だろう。これを含めてアタルヤは軍の練度と呼んでいるのかな?

 他愛ない考えを頭の中に巡らせていると、アタルヤがわたしの肩に手を置いてきた。


「お疲れ様だ。マリアは十分役目をこなしたから、別に皇帝サロメの到着を待たずに帝国に帰還してもいいんじゃあないか?」

「……言われてみればそうでしたね」


 わたしが正式に帝国魔導協会より下された任務を思い出す。確か公国使者の聖女チラと同行して帝国からの救援が到着するまで援助せよ、だったっけ? つまりはアタルヤ軍が到着したので任務達成になったので晴れてお役御免になのだ。

 つまりやっと帝国に戻れるわけだ。万歳したいぐらい嬉しかったけれど、ここで出会ったプリシラやチラ達とはお別れになる。多分彼女達とは今後行く道が重ならないだろうから、寂しさが込み上げてくるな。

 まあ、今後の予定は明日考えよう。今日は何だか疲れてしまった。ゆっくりと休みたい……。南方の防衛軍の人達は負傷を手当てしてもらっているようだから、わたしの出番はもう無くていい筈だ。


 いつの間にか日がもう傾きかけている。魔王軍進出の知らせを耳にしたのは日が昇る頃だったのに随分と早く時が過ぎてしまった。エステルが勝利を祝したちょっとした晩餐会を開くとか言っていたっけ。それに参加すれば長かった一日もやっと終わりか……。


「あら、悪いけれど私は祝賀会の後は外出するわよ。ちょっと訪ねたい所があるからね」

「へ? 何処か行くところが――」


 疑問を口にした所でイヴの本懐を思い出した。思い出してしまった。

 そう、彼女にとって魔王軍の侵攻なんて前菜に過ぎない。主食がまだ手つかずなんだった。


「バラクの研究所を強襲するのよ。アイツはもう明日の朝日は拝めないわ」


 つまりは、勇者一行への復讐劇が――。

お読みくださりありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ