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合成獣増産計画

「魔導師バラク、ここに馳せ参じました」


 旧キエフ公国首都の宮殿、謁見の間に現れた投擲手バラクは先日会った時の研究者の服装のままだった。彼はそのままわたしの傍までやってくると恭しく跪く。この国の統治者を前にしても彼は雰囲気を先日と変えておらず、実に落ち着いて堂々とした物腰だ。


「ようこそいらっしゃいましたバラク様。本来なら私の方が足を運ぶべきなのに、忙しい中ありがとうございます」

「いえいえ、この国には大変世話になっている身ですのでこちらから赴くのは当然です。どうかお気遣いなく」


 社交辞令から始まったバラクとエステルの会話は和やかに行われる。正直関係の無い世間話を聞かされる身としては辟易してしまう。どうやらわたしのみならず文官の何名かもそう思っているようで、早く本題に切り出せとばかりに苛立っている様子が見て取れた。


「それで早速なのですが、バラク様にはお頼みしたい事がございます。かなり無茶な注文になってしまうのですが……」

「魔王軍の侵攻を防ぐために我が研究所製の合成獣を揃えよ、ですな? 三日……いえ、二日ほどいただければお望みの数をご用意できるかと」

「ふ、二日? 随分と早くないですか?」

「何、こんな事も想定して大目に資材を研究室に備蓄しているだけですよ。では早速研究室の者達には作業に取り掛からせましょう。少し失礼を」


 肝心の部分が随分と早くまとまってしまった。これでは前置きの筈の世間話の方が長いくらいで、結構話の過程が吹き飛んでいる気がしなくもない。この迅速さにはエステルも驚きを隠せない様子だ。

 そんなバラクは気にする様子も無く非礼をわびつつ魔導具で研究室に作業開始の連絡を入れる。通信用魔導具とはまた随分と高価な物を使うものだ。魔王軍との紛争地域最前線に研究所を構えているだけあって方々から資金が流れてきているのか? やっぱり揃う所は揃っているなあ。


「可能だそうです。合成獣の種類はこちらが勝手に決めてしまいますが、よろしいですかな?」

「あいにくこちらには貴方様ほど知識が深い者がおりません。専門家にお任せしましょう」

「結構。では引き続きまして報酬の方ですが、こちらも合成獣一体辺りを通常の価格で頂ければと」

「昼夜問わずに作業させるのに割増を払わなくて良いのですか?」

「問題ございませんな。その分各国より援助を頂いているので、懐はそれなりに温かいのです」

「分かりました。詳細な見積もりを頂ければ経理の者に処理させます」


 淡々と話が進んでいく。書記官が会話の内容を必死になって記しているけれど、この早さでちゃんと記録は出来ているんだろうか? 一方、聞き入るだけの文官達は話が進展していくうちに段々と安堵の表情を浮かべてくる。お先真っ暗の中でも光明を見いだせた、そんな感じだろうか。

 やがて細々とした取り決めが交わされて話が収束へと向かっていくのがわたしにも分かった。跪きっぱなしで姿勢が辛いので早く終わって欲しいところだ。ふとプリシラの方を覗いてみると、彼女もうんざりだとばかりにため息を漏らす様子が見えた。


「閣下、つい先日の戦では聖女殿と勇者殿が活躍したそうですな」


 バラクが話題を切り替えてきたのはそんな時だった。彼の問いにエステルはわずかに顔をひきつらせたものの、概ね先ほどのまま穏やかな表情を見せている。勇者の活躍、などと言われても皮肉にしか聞こえなくなってしまったのは純粋に悲しいし、人類にとって大きな損失だろう。


「……ええ、まあ。聖女様の浄化魔法で敵が一掃されたと聞いていますし、勇者様も皆を奮い立たせて獅子奮迅の活躍をされたとの事です」

「それは良かった。窮地に立たされる人々に手を差し伸べる救世主、それが聖女であり勇者でありますからな」


 はて、バラクの質問の意図が分からないな。彼の耳にも人類連合軍の快勝と惨敗は入っているだろうし、聖女の奇蹟と勇者の籠絡だって知っていてもおかしくないのに。まさか嫌味を口にするだけなんて非建設的な真似をする筈もないだろうし。

 疑問符を浮かべていると、バラクは顔は下げたままで視線をこちらに向けてくる。


「所で閣下、今この場でこちらの方々と会話してもよろしいですかな?」

「聖女様方と? 私は別に構いませんが、聖女様はいかがですか?」

「いえ、私共は――」

「わ、私も問題ないですぅ。何でも聞いてください」


 プリシラが何か言い出そうとした所で口をつぐんでしまった。多分ただの聖女に付き従う修道女に初対面のバラクの要望を拒絶する理由が無いからだろう。わたしだって個人的感情はさておきただの魔導師風情で人類を救った彼を断る口実は無い。

 きっとエステルにとっては勇者一行が集うこの光景に感無量かもしれないが、わたしにとっては心中穏やかではなかった。彼もマリアやプリシラ同様に打算があって勇者イヴに同行してその果てに勇者を裏切ったなら、かつての仕事仲間に向ける言葉に絆などある筈も無く……、


「ではプリシラ。君が付き添う聖女チラは聖女アダと比べてどうだったかな?」


 己のエゴをさらけ出したものだろう。


 プリシラは御前なのも忘れて立ち上がり、殺意が込められた凍てつく眼差しをバラクへと向ける。慌ててわたしも立ち上がってプリシラが変な真似をしないようバラクとの間に立った。


「バラク、何が言いたいんですの? はっきりと、もう一度、この私めに言って御覧なさい」

「チラはアダと比べてどうなんだ、と聞いた。それ以上聞きたい事など無い」

「お、落ち着いてくださいプリシラ! ここで騒ぎを起こしても何にもなりませんって……!」

「……分かっていますわよ。けれどマリア様も分かったでしょう、この男の本性はこんなものだと」


 プリシラはしばらくバラクを睨みつけていると、顔を大きく振ってから大きく深呼吸を取った。彼女から殺気は無くなったもののバラクを見つめる視線には明らかに侮蔑と嫌悪感が現れていた。


「チラ様の奇蹟はアダのそれと比べると術式に無駄がありすぎて非効率的ですわね。その分効果はアダを凌ぐと言い切ってもいいでしょう。ただ、チラ様は大規模な奇蹟しか起こせない。アダが得意とした緻密な光の術を行使できないのは今後の課題とするとして、少なくとも人間性ではアダよりはるかに好感が持てますわ。完璧で崇高な聖女より少し頼りないけれどひたむきな聖女の方を応援してさしあげたくなるものでしょうよ。これで満足?」

「結構、さすがはプリシラ。良い観察眼を持っている。私の欲する回答そのままだ」


 プリシラの聖女チラへの感想は驚くほど贔屓目が一切混じっていなかった。聖女アダと共に勇者一行として旅をして今は聖女チラと共に奉仕活動を行っている。だからこそ彼女は双子の姉妹を客観的に比較して語れるのだ。

 プリシラの評価を聞いたエステルを始めとする旧キエフ公国貴族達は呆気にとられていて正直間抜けに見えてしまった。最も無理も無い。何せその時代に一人いるかいないかの神の奇蹟を体現する者なのだから、盲信しても十分なぐらい。なのに付き従う修道女のプリシラが冷静な評価を下しているのだから、にわかには信じがたいのだろう。

 ただ一人反応が違ったのは当のチラ本人だった。感動しているのか涙と鼻水を流してプリシラへと飛び込んでいく。あまりに突然だったのでプリシラもとっさに受け止めきれず、勢い余って二人ともその場に倒れてしまった。


「プリシラさあぁぁん!」

「わっ!? ちょ、聖女様どうなさったのです!?」

「私頑張りますぅ! プリシラさんにアダちゃんより凄い聖女なんだって胸を張れるぐらい立派になりますぅ!」

「わ、分かりました、分かりましたから離れてくださいまし!」


 引き剥がそうとするプリシラは言葉では怒っていてもまんざらではないようで顔が笑顔のままだ。見ているこちらまで思わず口元が緩んでしまう。チラはよほどプリシラを信頼しているし、プリシラもまた聖女とか関係なしにチラを支えたいと思っているのだろう。


 さて、結果的にはこんな形になったから良かったものを、この人は――。

 わたしは怒りを込めてバラクを睨みつけたものの、彼はプリシラへの無礼な問いかけといい全く反省する気は無いようだ。


「一体何のつもりですか? 聖女二人を比較した感想を聞くなど……」

「魔導師としては当然の好奇心と思うがね。私はむしろ私より魔導の才能を持ちながら魔導をただの道具、手段としか捉えていないマリアの方が理解に苦しむよ」

「学問は生活の知恵を育む為にあります。魔導とて例外ではありませんよ」

「そう考えている以上マリアが私を理解する事など無いだろうよ」


 それはさすがにうぬぼれに過ぎるだろう。わたしは理解はしているけれどその選択肢を選ばなかっただけだ。バラクはわたしをマリアのままと思っているんだろうけれど、マリアだってそう考えている筈だ。探求に全てを捧げる魔導師に聞きたいと毎回思っているのだ。探求の果てに何をするのだ、と。


「貴方はわたしにも聞きたい事があるんじゃあないですか?」


 プリシラに聖女について質問を投げかけたんだ。どうせそれだけには留まるまい。バラクは満足そうに唇の端を吊り上げると、手で眼鏡を僅かに持ち上げた。


「察しがいいのは話が早くて助かるよ。ああ、勘違いしないでほしいのは純粋に気になるから問いかけているだけで悪意がある訳じゃあないからな」

「御託は良いからはやく本題を切り出したらどうです?」


 チラと親しくするプリシラに対して聖女の感想を聞いたんだ。どうせわたしには……。


「では、マリアが戦った勇者エヴァは勇者イヴと比べてどうだった?」


 勇者についてだろうな。


 お茶を濁して適当に言葉を並べてもいいのだけれど、わたしは単に帝国の使者であるミカルに扮したイヴに付いてきただけの身。彼の機嫌を損ねてこの国に不利益はもたらしたくない。それに、彼が何故人類の救世者たる勇者と聖女の評価を聞きたがるのかは少し興味深い。

 そう言えば何故彼はエヴァの名を知っている? 人類連合軍の中では勇者イヴの帰還を装っていたのに。勇者一行としてイヴを知っているプリシラやわたしには全く隠す気は無かっただろうから彼に対してもそうだったんだろうけれど……。


「名女優でしたね。勇者イヴを中々良く再現出来ていたと思いますよ。光の魔法を使えたのは結構驚きましたけれど、世の中そんなものなんでしょうかね?」

「それで?」


 それだけではないだろう、と言いたげな視線をバラクはわたしに送ってくる。どうやらわたしが他にも彼女から感じたのだと見抜いているようだ。どこまで考えが及んでいるのか分からないけれど、どこまでも見通すような目は正直気持ちいいものではないな。


「……妖魔に堕ちた彼女は仮面が剥がれ落ちたのか、その本質までイヴに似通ってきたような気がします。おそらく単純な実力で言えばもう一年前のイヴを超えているかもしれません」

「本質的には、か。そう言えば光の剣の一閃はどうだったかな?」

「一振りで千もの魔を薙ぎ払う、という伝説に恥じない威力だったと思いますよ。今のわたしではいなすのが精一杯でした」

「……そうか、そうだったか」


 彼は笑みを隠そうともせずにそのまま立ち上がった。感極まり無いと言った満足げな顔をさせる彼の頭の中にはこの国の人達の平穏など全く無いだろう。彼はただ己の探求が果たされる工程を思い浮かべ、勇者イヴや公爵エステルを利用しているだけだ。それがたまたま人類を救う結果に結びついているだけに過ぎないだろう。

 だが、それが本来あるべき探求を求める魔導師の在り方であり、素直だとも言える。


「では閣下、私は研究所に戻ります。何かご入り用がございましたら連絡いただければと。担当の者を向かわせますので」

「わ、分かりました……。ではよろしくお願いいたします」


 狂気を伴っているようにも見えるバラクに気圧されたのか、エステルは若干押され気味で彼の退出を見送った。彼が去って扉が閉められたのを見計らったかのように、プリシラは突如癇癪で地団太を踏んだ。


「あんの男はぁ、言うに事欠いて聖女様に無礼極まりない! これだから魔導師などという存在は気に入らないのですわ!」

「ぷ、プリシラさん落ち着いてくださいぃ。私アダちゃんと比べられても気にしてませんからぁ」

「あの自分の目的と計算だけで動く男に慈悲など不要ですの! あの男が聖女様に害を成すものならいっそ一思いに……!」

「あら、そのわりにはアイツが姿を見せている間は冷静だったじゃあないの」


 怒りを抑えられないプリシラと彼女をなだめるチラを見ているしかない貴族達をよそに、謁見の間の片隅から場違いにも思える拍手の音が聞こえてくる。振り向くと、柱の陰から姿を見せたのは落ち着いたドレスに身を包んだイヴだった。


「プリシラったらアイツを始めとして勇者一行の面子と結構折り合いが悪かったものだから」

「この場で迷惑をかけたくなかっただけの話ですの。そう仰る貴女様の方こそ随分と冷静ですわね」

「あら、私の名女優っぷりはプリシラが一番ご存知かと思っていたけれど?」

「……そう言えばそうでしたわね」


 プリシラは肩の力が抜けたのか、軽くため息を漏らすと次には落ち着きを取り戻していた。彼女に語りかけたイヴは優しく微笑みを浮かべているけれど、その目はどうも獲物を定めたように見えて笑っていないような気がする。

 しかし、プリシラが凄腕のハイエルヴンアーチャーだとはつい先日の戦いで発覚してしまっている。そんな彼女に気さくに語りかけるイヴはこの宮殿の危機を一人で救った。こうなると折角ミカルを装って外見を取り繕っていてもイヴの真実はもうばれたも同然じゃあないだろうか?


「で、マリアはアイツの魂胆がどこにあるのか分かったかしら?」

「へ? わたし?」


 突然話題を振られて素っ頓狂な声をあげてしまったが、意見を求められてすぐに頭を切り替える。

 彼の魂胆、ほぼ間違いなく性能のいい合成使い魔の創造じゃあ無いだろう。そして使い魔の大量生産でこの国の窮地を救う事でもない。と言うか彼本人がそれを否定していた。それでいて彼の先ほどの質問と、研究室での彼の発言を踏まえると……。


「彼の目指す人の境地とは勇者や聖女といった神の奇蹟の担い手を指す、とか?」

「あー、彼が事ある度に口にしていた世迷言ですわね。何の事かと思ったら……」

「いえ、アイツは勇者や聖女程度には留まらないでしょうけれど、今はそんな事はどうでもいい。今肝心なのは、じゃあどうしてそのアイツが聖女チラと勇者エヴァの感想を勇者一行だったプリシラとマリアに聞いたか、って所ね」


 それは確かに疑問だった。単に勇者一行として集った人類の精鋭達以外から現れた新たな勇者と聖女の評価を聞きたかったわけではないだろう。しかしどうしてもエヴァやチラがバラクと結びつかないのだ。

 ただ、あまりにも馬鹿げた一つの可能性が頭の中に浮かんできた。ありえないとすぐに忘れようとしたものの、プリシラが表情を無くしてイヴに視線を送るのを見て、ひょっとしたら……などと思ってしまった。


「……まさかとは思いますが、貴女様は――」

「おっと、あいにく私は証拠が何一つない憶測だけで結論を語れるほど物事は見通せないのよ。真相を知りたければアイツの研究室に突撃すればすぐに発覚するでしょうけれど……」

「この情勢でそのように事を荒立てたくはありませんわね……。踏み切るとしてもまずは魔王軍の方を片付けてからでないと」

「ま、とりあえずはアイツのお手並み拝見でいいんじゃあない? アイツがあんな真似をしでかしてもやりたかった事には結構興味あるし?」


 あんな真似、とはきっとマリア達が勇者を裏切った顛末を指すんだろう。動機を知りたがっているのはイヴの意思か、それともイヴを陥れた点を決して許さないアダムの意思だろうか。

 イヴは置いてきぼりを食らう旧キエフ公国の貴族達をよそに、背筋が凍るほどの笑みを浮かべた。


「楽しみじゃあないの。二日後に何を見せてくれるのか、ね」



 ■■■



 いくら馬車の中で仮眠を取ったからって疲れが癒えたわけではない。何しろわたしは一回死の淵に立たされたのだから。いや、アレはもう棺桶に片足を突っ込んだかもしれない。とにかく今日の所は何も考えずに身体を休めたいものだ。

 幸いにも来訪時と同じくわたしには宮殿内に部屋が割り振られた。ありがたく使わせていただくとしようじゃあないか。


「ちょっと待ちなさい、マリア」


 と、部屋へと足を進めていると、不意に背後からイヴに声をかけられた。相変わらず微笑を顔に張りつかせてこちらへと歩み寄ってくるものの、どうも嫌な予感がしてくる。


「どうかしましたか? 夕食にはまだ早いかと思いますが」

「えー、用が無ければ声をかけちゃあ駄目なの? 冷たいわーマリアが冷たいわー」

「い、いえ、そんな事はありませんけれど……。でも用件はあるんですよね?」

「ええ、頼みたい事があるの。明日いっぱいちょっと手伝いをしてもらいたいのだけれど、いい?」


 ほらやっぱきた。と言ってもわたし自身は明日特にやる事は無い。チラとプリシラは公都中を回って奉仕活動に従事するらしいけれど、さすがにその手伝いには付き合っていられない。聖女には聖女の、わたしにはわたしのやれる事があるのだから、無理に合わせなくても、と考えたからだ。どうやら今のところ公都が直に戦火に見舞われたわけでもないので、わたしの出番はそもそも無い。

 なので別にイヴの手伝いをするのは構わないけれど、まさかバラクへの闇討ちに協力しろとか言われないでしょうね……?


「別に今アイツを始末して汚名を被る必要はないと思うけれど。アイツの調子だったら時機に巡ってくるでしょうし」

「心の中を読まないでくださいよ……。それで、じゃあわたしに何を頼むと?」

「大掛かりな作業になるから、私一人だと二日ではさすがに仕込みきれないのよね。マリアが手伝ってくれるなら出来るって信じているわ」

「で、本題に入って、わたしにやらせたい事とは?」

「それはね――」


 そして彼女が口にしたのは戦慄するものだった。思わず周囲を窺って誰もいない事を確認の上で改めて詳細を説明してもらう。そんな発想がどこから出てくるんだと恐れおののいたものの、確かに十分在り得る話だと納得しまった自分が怖い。

 思い出すのはついこの間の悪夢の光景だった。前回地獄を見たのはわたし達だったのに、今回は立場が逆転するなんて……正直複雑な感情を隠せない。


「それで、回答は?」

「……いえ、わたしでよければ喜んで手伝いますよ。ただ今日はちょっと疲れが溜まっているので、本格的に手を貸すのは明日からでいいんですよね?」

「ええ、構わないわ。明後日までに間に合えばいいし」


 きっとこれは最善手と言うより悪巧みと表現した方がいいんだろう。けれど、この仕組みがどんな結果をもたらすのか楽しみになってきた。きっとイヴにとっては愉快痛快な展開となるだろうし、それが結果的にこの都市に住む人の為になるならそれでいい。


 勝負は二日後、これで全てが決まるだろう……。

お読みくださりありがとうございました。

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