表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/148

公爵との問答

 謁見の間に戻ったわたし達は、西の公爵と対峙していた。


 皇帝陛下は謁見の間の中央やや玉座寄りに椅子を設置した上で座っている。脚を組んで腕は肘掛に乗せ、つまらなそうに顎を手で支えている。彼女の両脇は親衛騎団の騎士で固められている。これは陛下が玉座への着座を拒んだためだ。

 その玉座には公爵が座っているので、本来は自分の上に立っている帝国の尊厳者を現在は見下ろす形となっている。初めは公爵も拒んだのだが陛下は座れと命令を下した為にこうなっている。どうやらこの状況下は相当な重圧のようで、公爵は汗を大量に流して落ち着かずに顔を触ったり頭を掻いたりしている。

 わたしは謁見の間の右側、つまり西の公爵家側で立っている。最も入口に近い左隣なので末席になる。公爵家で一番幼いカインの左隣でもいいと陛下は言ってくれたが、固辞して公爵家の家老達よりも下位になるこの位置にしてもらった。特に社会的地位もないわたしは話さえ聞ければいい。

 一方のイヴは皇妹なのもあるのか、謁見の間の左側一番奥に位置していた。これまた簡易的に設置された椅子に腰を落としている。これはイヴの脚がまだ完全に治りきっていないとの配慮もあるので、わたしとしてもイヴの事ながらとてもありがたい配慮に感謝している。


「で、弁明を聞こうじゃないのダキア公爵」


 ミカルに問いかけていた時と違い、公爵を問い質す陛下の口調、眼差しなど全てがとても鋭く相手へと向けられていた。真実を明らかにしたかっただけだった公爵夫人と、職務怠慢の責任を負うべき公爵との決定的な扱いの違いがそこにあった。


「何故有効な手立てを何一つ打たないまま、全責任を年端も行かないカインに任せたの?」

「陛下、それは私がカインなら適任だと判断したまでの事です。結果として異変は解決できましたから、この采配は間違っていなかったとも考えております」

「ダキア公爵。それが最終回答だったとしたら、私は国を統括する尊厳者の名においてあんたを罷免するから。嫡子に公爵の地位をすぐにでも譲ってもらい、あんたの身柄は拘束するわよ」

「……っ」


 公爵は渋い面持ちで口をつぐんだ。

 多分公爵が並べた言い分は家族や臣下へのものなのだろう。西の公爵領で最高権力者たる公爵が語るので今までは何も言い返せやしなかったが、帝国の頂点に君臨する尊厳者がいる手前では強制的に話を終わらせられないだろう。


「責任者に命じられたカインは良くやってくれたわ。この西の公都を防衛しきり、そして死者の都を攻め落とした上で復活した魔王をも撃破した。その働きは称賛に値すると言っていいわ」

「も、勿体ないお言葉です」

「けれどダキア公爵。あんたが初動で迅速に対処していれば異変はもっと小規模に抑えられたでしょうよ。帝国軍一万四千人強や西の公都軍総勢数千名の尊い命が失われずに済んだかもしれない。次世代の養育なんて悠長に言っていられる異変ではなかったでしょう?」

「……っ」


 公爵に対する陛下の追及は実に厳しいものだった。責任者だったカインを褒めてはいるが、公爵ならもっと手際よくやれたと責めているのだ。

 心配になってカインの様子を見てみた。彼は俯いて唇を噛み締めていた。隣にいた彼女の姉らしい見麗しいご令嬢が彼に両手を添えて励ましているようだ。

 カインが力不足だったのは否定しきれないけれど、彼は最善を尽くして異変に取り込んでいた。まだ彼には長い今後があるのだから、これを糧にすればいい……後でそう言葉をかけるとしよう。


「だから、公爵としてこの地を治める能力なしって判断しても別にいいでしょうよ。だってカインに全部丸投げするのが最善の手だって思っていたんでしょう? そうやって民に不安をまき散らす有害な無能は帝国には要らないわ」


 そう、結局ミカルが異変の元凶で、かつ復活した魔王が絡んでいたけれど、公爵が介入してはいけない制約はどこにもなかった。魔王がミカルを人質に公爵を脅しているならまだ話は分かったんだけれど、結局そんな顛末ではなかったし。

 本当にカインが責任者として駆けずり回るのが最良だと公爵が考えていたなら、判断力が衰えたと断じられても文句は言えないだろう。それだけカインを始めとして誰もがその采配を疑っていたのだから。


「さあ答えなさいダキア公爵。別の思惑が絡んでいて手が出せなかったのか、それともその若さでもう耄碌したのか。答えなかったらあんたの立場が悪くなるばかりdからね」

「……人払いをお願いいたしたく」

「却下よ。あんたまたそうやって家族や臣下の者達に何も知らせずに事を内々に留めるつもり? 今、この場で、明かしなさいって命令してるのよ。お分かり?」

「……そうですか」


 公爵は背もたれにもたれかかると天井を仰ぐ。目元を手で抑える仕草は色々と思考を巡らす為のように見えたが、やがて公爵は陛下の目を見据えて重い口を開いた。全く気乗りしないようで、その声はとても重く低いものだった。


「では、お話いたします。陛下はどこまでご存じなのでしょうか?」

「カインとミカルが知る限りは、って答えておくわ。疑問点が出てきたら遠慮なく質問させてもらうから、私を気にせず洗いざらい話しなさい」

「あれは三年前、魔王軍がこの地に攻め込んできたのが全ての始まりでした」


 三年前に西の公都を襲った悲劇、多数の市民と共に犠牲となったミカル、神の下に召されたと分かっていても諦めきれない想い。公爵の口から語られたその辺りはわたしの知っているものと同じだった。わたしは包み隠さず報告しているから陛下も把握している内容の筈だ。

 それから二年後にマリアが公爵を訪れ、悪魔の囁きをした。公爵夫人を蘇らせてやる、その代わりに資金と施設を用意しろ、と。魔王を撃破し世界に平和を取り戻した後のマリアは勇者一行として讃えられるほどの魔導師、その腕は疑う余地もなかったそうだ。


「妻を蘇生させたものの副作用が残っているから少しの間待ってほしい、と虹のマリアより報告があり……それを最後に彼女からの連絡が途絶えました。無論配下の者に探させましたが、結局行方は分からないままとなりました。突如として彼女は失踪してしまったんです」

「……続けて」


 陛下は何も言わなかったけれど、マリアは直後にイヴに殺されている。ミカルはアンデッドを発生させる副作用を抱えたまま置き去りにされたわけだ。ミカルの方はその後魔王を復活させて楽園とも悪夢とも言える日々を始めたわけだが……。

 ちなみにカインの弁ではわたしがマリアだとは公爵は知らないらしい。マリアについては一応死亡ではなく失踪扱いになっているから、酷似と言うか同一人物のわたしとマリアを結びつけるのは不可能ではない。最も、教授がわたしの経歴を詐称している上にわたし自身の人柄が変わっていてそこまで考え付かないだろうが。


「虹のマリアが研究していた場所に配下の者を派遣しましたが、既に魔物が厳重に警護していて手が出せない有様となってしまい、途方に暮れたものです」

「まあ、普通ワイトキングの討伐って言ったら大規模な討伐隊を結成して取り組む一大異変だものね。死者蘇生だなんて禁忌をひた隠しにしながらやり過ごすにはちょっと重たいかしら」

「……そんな時、彼女が私の前に現れました」

「彼女?」


 陛下は手から顎を離し、脚を組むのを止めてわずかに前のめりになる。公爵は視線を彷徨わせて瞬きの回数も多くしているので、どうやら明かそうかを相当迷っているようだ。だがやがて意を決して公爵の口から出てきた名は、驚くべき者だった。


「レモリアの聖女、アダです」



 ■■■



 レモリア、それは帝国発祥の地、そしてかつての帝都でもある。はるか昔に大帝国が二分した際にレモリアは西レモラ帝国の帝都となったが、ほどなく滅ぼされた。残った東レモラ帝国が非人類圏国家や魔王軍といった外敵との争いを繰り広げてる間にレモリアは西側諸国有数の都市へと発展した。

 レモリアは同時に聖地でもある。高名な聖者が殉教したかららしいが詳しい話は興味が無かったので知らない。その為、西側諸国でも覇権国家の座こそ別に譲っていても、レモリア自体は屈指の存在感、発言力を持つ。レモリアを総本山とする教会から異端扱いされれば明日は無い、とまで言われる程だ。

 そんなレモリアには聖女と呼ばれる存在がある。奇蹟を起こしそれが教会に認められれば聖女として登録される。歴史上空席だった時期もあれば複数人いた時期もあるらしい。奇蹟を体現せし聖女は主からの使いだと崇め奉られた。


 ちなみに帝国には西側諸国の影響が及ばない為、聖女もレモリアの要人として扱われるものの崇拝の対象にはなっていない。西方と帝国で宗教的価値観に大きな隔たりがある以上、聖女個人に人気が出てくる時もあったようだが、レモリアの聖女という存在そのものが敬われたりはしないのだ。


 そんなレモリアの聖女アダは帝国でも人気が高い。何故ならアダは勇者一行として世界を救済した者だからだ。

 つまり、イヴが復讐する対象でもある――。


 そこまで思い至ってイヴの方へと視線を向けると、彼女は一切の表情を消し、ただ公爵の方を瞬きもせず見つめていた。さすがに名前が話題に出た程度で我を忘れはしなかったようだが、明らかに内側では沸々とわき上がる怒りと怨みがあるようで、椅子の肘掛を握る手に力がこもるのが遠く離れたわたしにも見えた。


「はあ? 何で西方の聖女がそこで出てくんのよ? 連中がどんな阿呆言ってきたって帝国には何ら影響はないでしょうよ」


 陛下は困惑を一切隠さずに疑問を公爵に投げつけている。陛下はイヴの様子が一変した事も気づいてはいるようだが、あえて受け流したようだ。


「それは私も分かっておりました。しかし、聖女アダは思いがけぬ提案を私に示してきたのです。マリアを失いどうしようもなくなった私は藁にもすがる思いで聖女アダの手を取ったのです」

「提案、ねえ。内容は?」

「悪魔の所業に委ねるからこんな事になる。私に任せれば完全な死者蘇生をしてやる、と」

「死者蘇生、と来たか……」


 死者蘇生、おそらく聖女が語っていたのは冥府の魔導である反魂魔法ではなく、神の御業たる蘇生魔法だ。聖女アダは勇者イヴと共に光属性の魔導を担う数少ない人類の一人だ。闇を掃う勇者の光と異なり聖女の光は人を癒し、守るものだと学院時代に噂で聞いた覚えがある。

 死者蘇生は神に選ばれし者が行使する最大の奇蹟と言ってしまっていい。マリアが反魂魔法を半端に成功させて失踪してしまったため、それを一旦無かった事にして改めて神の名の下に死者を蘇らせる、聖女はそう公爵に語ったのか。

 マリアと言う道標を失った公爵にとっては渡りに船どころではなく、正に救いの主だったのだろう。


「条件としては期限を設けるからその間アンデッドの異変を長引かせろ、と言われました。動機は聞いておりません、聞くなとあらかじめ言われましたので」

「で、その期限の間は西の公都を守りつつアンデッド発生には消極策で行く、か。その為のおあつらえ向きな責任者がカインなわけ?」

「はい。人選で悩みましたが、最も幼く経験は乏しいが才能とひたむきさのあるカインに任せる形で人選しています」

「……で、その期限ってどれぐらいよ? まさか数年とか言わないでしょうね?」

「つい先日聖女アダが提示してきた期限は尽きた筈です」


 つまりはおおよそで数か月と言った所か。その間アンデッド発生の異変を長引かせて聖女アダにどんな利益があったのだろうか?

 だが今となってはそこを推察しても何の意味もない。カインの努力によって異変はついに解決したわけだから、公爵と聖女の約束は果たされなかったわけだ。おそらく今後聖女が公爵と再接触してくる可能性は限りなく低いだろう。利が無いし。


 陛下は面白くなさそうに指で肘掛を叩き始める。


「……あんたさ、わざわざ聖女になんか頼らなくたって帝国にも優秀な魔導師はいくらでもいるのよ。異変を速やかに解決した上で魔導協会に依頼してどうにかしてもらえば良かったじゃないの」

「その件は弁明の余地もございませんが、何せ死んだ者を蘇らせるなど主の道理に――」

「西側諸国と違って帝国における教会の影響力はそれほどでもないでしょうよ。あんたが死者を冒涜したのは確かに罪だけれど、だからって何の罪もない民を脅威に晒したままなんて言語道断よ。どちらの罪が重いかなんて明白じゃあないの?」

「……返す言葉もありません」


 人類圏は信仰と共に発展してきたと言って過言ではない。かつては様々な神が色々な形で信仰されていたと聞くが、現在は主を信仰する宗教が人間の間で信仰されている。大帝国を失った西側諸国では教会の権威が諸国を上回った。結果、国の権力者だろうと主ないしは教会への背信行為を行えば異端扱いとされ、教会の名の下に裁きが下されるわけだ。

 帝国も同等の宗教が信仰されているものの、皇帝と言う尊厳者が健在だったために帝国側の教会、すなわち東方教会と皇帝はそれぞれどちらかに従属する形とはなっていない。確かに皇帝権力が東方教会に多大な影響力を持つのは事実だが、東方教会の権威もまた世論、政治に強い影響力を持つ。

 そんな経緯もあり帝国では異端扱いされる背信行為を犯したとしても問答無用で神の名の下に処刑されるわけではない。あくまで帝国の定めた法に則って裁かれる。確かに死者への冒涜は軽くない罪だろうが、それと帝国を脅かした失策と比べると、と言った所か。


 というか、死者への冒涜に関して言われるとマリア、つまりわたしまで罪が及ぶからなるべく忘れてもらった方がいいんですがね? そう思うのは贅沢だろうか?


「まあ、信仰深きダリア公爵がそちらの方を重く見たのは理解できなくはないけれどね。他に言う事ない?」

「……いえ、特には」

「よろしい、では現時点での私の裁定を貴方に伝えるわ」


 陛下は椅子から立ち上がり、公爵の方へと歩み寄っていく。玉座への段差を昇っていき、最後には公爵の目の前に立った。玉座に座る公爵を陛下が見下ろしている形だ。公爵の方が明らかに大柄で、しかも権力者の席たる玉座にいるのに、この時の彼は陛下と比べてとても小さく感じた。


「まず叔母様の蘇りについては不問ね。術者たる虹のマリアは行方不明で、マリアへの設備用資金は貴方の資材から投じられているから、魔術的研究の一環として処理しておくわ。いい?」

「はい」

「次に異変における叔母様の責任についてだけど、これも不問ね。これまでの処理通り内々では復活した魔王による所業のままにしておくわ。これもいい?」

「問題ございません」

「で、異変のおけるダキア公爵の責任についてだけれど、やっぱり失策は見過ごせないわ。亡くなった帝国軍兵士達の家族への補償費用はダキア公爵家に払ってもらう形で既に約束されてるから、最低限の義務は果たしているんだけれど、それだけでは不足なのは分かっているわよね?」

「無論、分かっております」


 公爵は神妙に頭を下げた。やはり公爵も分かっているのか、現在の己がどんな立場にいるか。

 

 わたしも二週間の間に街の人達から噂話や愚痴を色々と聞いたが、現在の公爵の評判はほぼ地に落ちている。これはアンデッド発生の異変解決にカインが奔走して公爵が何も行動していなかった事に起因している。カインの打つ手は最善とは言えなかったかもしれないが、それでも彼の行動はきちんと評価されているのだ。やはり市民からは多大な労力、費用、犠牲を払った結果よりもそこまでに至る過程を見られていたのだろう。

 このまま何食わぬ顔で公爵として統治しても求心力がなくなった以上支持は得られないだろう。もはやこれは修復不可能な所まで到達してしまっている……とわたしは考えている。少なくともわたしが何も事情を知らなかったとしたらそんな権力者に自分の明日は任せたくない。


「私は帝都に帰還して直ちに現ダキア公爵の罷免を命じるわ。正式な決定は元老院を通過してからでしょうけど、有能だったあんたを蹴落としたい連中は山ほどいるし、間違いなく通るでしょうね。だから……」


 陛下は公爵の肩に手を置いた。わたしにはそれが陛下から公爵に送る精一杯の温情に見えたが、受け取る人によっては引導を渡しているようにも感じるだろう。はたして陛下はどのような思いで最後通行を口にしているのだろう?


「私としては速やかな引退を進めるます。それで国民や元老院共の溜飲も下がるでしょうし、一番円滑に事を治められると私は思っているけれど」

「……真、仰る通りかと。私もまだ行けると思っておりましたが……耄碌したものですな」

「家族を想う気持ちは分からなくもないけれどね。ただ頂点に君臨する者としてはいただけない、それだけの話よ」

「陛下、温情の数々、痛み入ります」

「これまでの帝国への貢献を踏まえた上よ。今までご苦労様でした」

「ありがたきお言葉です」


 公爵が深々と頭を下げたのを見届けた陛下は笑みを浮かべると、踵を返して玉座が設置された段差を降りていく。


 結局公爵夫人は何らお咎めなし、公爵もあくまで多大な犠牲を払った件の保証と責任による引退だけ負ったか。厳格に法と照らし合わせたならもっと重い罪を被った可能性もあったから、そこは陛下の配慮なのだろう。法と人の情の間で絶妙な均衡を取っているのか……中々出来るものではない。


「はい、これにてアンデッド発生の異変は一件落着! みんなお疲れ!」


 陛下の凛とした宣言は謁見の間にいる全ての者に異変終結を実感させるには十分なほど力強く、しかし陽気にこの場に響き渡った。



 ■■■



「さあて、じゃあ昼過ぎの追悼式の準備でも――」

「お取込み中失礼いたします」


 公爵への追及を終わらせた陛下が退出しようとした矢先、公爵家の使用人が音をたてずに部屋へと入ってきた。彼女は扉の傍で恭しく一礼すると部屋の端を通るようして公爵の方へと足早に歩み寄っていく。

 使用人の女性より耳打ちで何かを聞いた公爵の顔が曇った。公爵より何か命じられた使用人は再び首を垂れると、足早に扉の方へと戻っていく。そして再び突然の入室を詫びると退出していった。


「随分と緊急事態みたいだったけれど、何かあったの? いや、都合が悪いなら話さなくていいけど」


 当たり前の話だが現在公爵が陛下に謁見しているのは周知の事実の筈だ。些事であれば後から報告すればいい話であり、皇帝への謁見の邪魔をしてまで報告しなければならない事項となれば、よほど重大なものだとは容易に想像できる。

 陛下は純粋な疑問を率直に公爵へと投げかける。頭を軽く抑える公爵は大きくため息を漏らすと、ゆっくりと重い口を開いた。


「……レモリアの聖女が私に面会を求めている、そうです」 

お読みくださりありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ