謁見の間にて
臨時休業の看板をお店の扉にかけ終わったわたしはイヴと共に繁華街を抜けて街道に出た。カインが馬車を出すと言ってくれたけれど、別に時間に追われているわけではないので、と断っている。イヴは車椅子に乗りながらも自分でハンドリムを回しており、わたしは軽く押すだけだった。
北の城門と中央区を結ぶ西の公都の大動脈とも言うべきこの街道は、軍隊の行進にも耐えられるほど幅広に整備されている。わたし達はそんな中を公爵家の居城に向けて歩いていた。普段生活する上でこの街道とは縁が無いから、同じ公都の中であっても目に映る情景は新鮮なものばかりだった。思わずお上りさんも同然に辺りの様子に目移りしてしまうな。
行き交う人の姿は多種多様で、市民もいれば馬車を走らせる商人もいるし、これから外へ赴こうとする冒険者の姿も見られた。さすがにアンデッド軍の来襲がなくなった為に傭兵の姿は少なくなったものの、その分労働者の数が増えた気がする。
中央区に向かう乗合馬車を停留所で待つ間、わたし達は不機嫌にも愚痴をこぼし合っていた。
「大体あの異変の顛末は洗いざらいカインに喋りましたよね。わたし達って本当に要りますかね?」
アンデッド発生の異変の責任者だったカインにはアダムとイヴの融合を除いてわたしが体験した攻略戦の出来事を全て報告している。今更改めて出向いたからって新たな情報を開示出来やしないし、ミカルの状態が改善されるとも思えないのだが。
「もっともらしい言い分を並べてたけれど、単に私達を呼び付けたかっただけかもしれないわね」
「陛下の気まぐれで呼び出されるとか勘弁してほしいんですけど」
「昔から姉さんは人を連れまわしたがるからね。それが頼もしくあり鬱陶しくもあるんだけれど」
とのイヴの弁だが、陛下について語る彼女はどこか嬉しそうにはにかんでいた。親族は敵ばかりだったと彼女は語っていたけれど、陛下はイヴにとってどのような存在だったんだろうか?
「姉さんは私の味方とか敵とかそんな小さな事象に留まっていちゃあいけないわ。姉さんは、多くの民の上に立つべき人物よ。庶子のわたしを気にかけるようじゃあ駄目なのよ。姉さんには私の敵であってもらわないと」
「可愛がってもらったとは聞きましたけれど、それほどだったんですか……」
「ええ、道が分かれちゃった今でも私にとって姉さんは尊敬する人よ」
陛下が皇帝となった経緯や宮廷での生活模様はわたしの知る所ではないし、おいそれと踏み込めやしない。けれど、イヴの語る言葉には秘めたる熱い想いを感じずにはいられなかった。
もしかしたら、私が思う以上にイヴと陛下の間には深い絆があるんじゃあないだろうか?
無事に行きたい方向に向かう乗合馬車に乗れたので、運賃を払って乗り込んだ。イヴの車椅子は畳んだうえでわたしとイヴの二人がかりで何とか馬車に搭載出来た。女性二人の肉体労働を見た男の人達が手伝おうかと言ってくれて、その親切にちょっと感動した。
「……陛下がミカルにお会いして、何か進展あると思います?」
「あいにく姉さんは私の想像を軽く超えてくるお人なもので。予測も付かないわ。ただ……」
「ただ?」
「姉さんならどうにかしてくれる、そんな期待はして損はないと思うわよ」
中央区に入ると行き交う人の層が変わってくる。庶民や出稼ぎの労働者が多かった北地区と違って身なりが整った人が多くなってきた。おそらくこの公都、ひいては西の公爵領の経済や行政を担う人達ばかりなのだろう。一介の魔導師のわたしは場違いにも思えてしまう。
やがて公爵家の居城が見えてきた。城は城壁とまではいかないが一帯を高めの塀と、外壁には無かった堀で囲われており、堀には門へと続く橋がかけられている。ただ人の通りは掘の外側を囲む環状道の往来ばかりで、門へは誰一人として向かう気配が無かった。
「このまま門まで行って入れるの?」
「いえ、公爵邸の正門は帝都向きの東側なので、そちらまで足を運ぶ必要がありますね」
「じゃあ目の前にあるアレは何なの?」
「城内で働く方の通用門、ないしはカインのように城外に用がある場合に使う勝手口でしょうね」
なのでわたし達は一旦中央区と北地区を結ぶ乗合馬車を降り、今度は一番内側の環状道を走る乗合馬車に乗り換える。一周回ってもそんなに時間はかからないけれど、足腰の弱った年配の方々や子供連れを対象に設けた所評判がいいんだそうだ。ちなみに乗合馬車で一番閑散としているのが城壁内側の環状道を走る奴だったりする。
城沿いの環状道は公爵の居城から近い事もあって大商人の営む店や様々な組織の公都支部が立ち並んでいた。まあ、どうせ魔導協会以外はわたしには全く縁のない世界だ。景色だけをただ眺めて楽しむとしよう。並木道になっているのは堀が決壊しないようにだろうか?
公爵邸の正門の前までやって来た。こちらの門はごくわずかながらも人の往来があり、門の前には守衛らしき屈強な兵士が二名程左右で待ち構えていた。堀にかけられた石橋を渡りきった所で兵士達に視線を投げかけられる。
「失礼、お嬢さん方。名前と身分、それから用件を」
「わたしはマリア、こちらはイヴ。わたしは魔導協会所属魔導師、イヴは冒険者になります。こちらが身分証明になります」
「確認するので預からせてもらうがいいか?」
「構いません」
わたし達はそれぞれで身分証明になる魔導師の証と冒険者の証を胸元から取り出して兵士に手渡しした。兵士が門を三回ノックすると門に小さく開けられた扉が開いて、兵士はその中に二つの証を入れた。多分内側にも兵士がいてそれらを受け取ったんだろう。
「用件は?」
「さあ? 来いとしか言われていないのでわたし達にもさっぱりです」
「……ちょっとそこで待っていろ」
兵士達は明らかにわたし達二人を怪しんだようだ。何せただでさえ帝国を担う公爵の居城なのに、現在は皇帝陛下まで滞在しているのだから、厳戒態勢を敷くのは当然の措置とも言える。
ただ、個人的にはむしろ追い払ってもらった方が助かるんだけれどなぁ。面倒事に巻き込まれる可能性が高い中に突撃しようとしている現状だし。なおその場合この兵士達が陛下よりどんなお咎めを受けるかは知った事ではない。
だがそんな淡い期待を打ち砕くかのように時間をおかずに厳重に閉ざされた門が軋む音をあげながら開いていく。あれ、こう言う場合って入門の許可が下りても凶器を預けたり手続きとかを執り行った後に初めて門が開かれると思っていたけれど?
「お待ちしておりました、イヴ様、マリア様。皆様方がお待ちです。私めがご案内を務めさせていただきます」
門を開けた先で待ち構えていたのは普段カインに付き従っている執事の男性だった。彼はわたし達に対して頭を恭しく下げたままの体勢でいる。よく見ると門の中にいた守護兵達も左右に整列しているではないか。わたしと門外の守護兵は呆然とその光景を見つめる。
イヴだけは軽くため息を付いて、うんざりだとばかりにわたしに視線を送ってきた。
「そんな仰々しく迎えなくたっていいのに。そう思わない?」
わたしはただ苦笑いを返すだけしか出来なかった。
■■■
「来たわね、イヴ、それからマリア。待ちくたびれちゃったわよ」
公爵家の居城に入ったわたし達は謁見の間に通された。そこで待ち受けていたのは、謁見の前の中央に堂々とした佇まいで立つ皇帝陛下だった。
「陛下、魔導師マリア、ご命令により馳せ参じました」
「同じく冒険者イヴ、ここに」
若干の間反応を忘れた後であわててわたしは片膝を付き、杖を前方に置いてこうべを垂れた。イヴは落ち着いた様子で優雅に一礼を取る。
「面を上げていいわよ。今日は別に畏まった席でもないしね」
「はい」
許可が下ったので頭をあげて辺りに視線を走らせると、謁見の間の右手には貴族や公爵領の要職と思われし方々が並んでいた。カインは奥から四番目に位置しており、正装に身を包んだ彼は可愛さより凛々しさの方が際立っていた。彼の奥側はおそらく姉や兄達だろう。
陛下の真後ろに位置した玉座は空席で、代わりに隣には中年になるだろう厳格な男性が控えていた。彼は確か学院に行く前の行事で何度か見た覚えがある。彼がこの地域を治める領主、西の公爵だ。アンデッド発生の異変では静観の立場を取ったものだからわたしの中で彼の評価はガタ落ちしているが。
左手には手前側に武装した騎士、奥側には政務官らしき人達がいる。おそらく陛下の西の公爵領視察に同行した方々だろう。特に騎士達は確か公都への帰還の際に遭遇した剣士サウルの部隊の武装より凝った作りをしている。おそらくは禁軍、しかも皇帝直属の親衛騎団の者達か。
けれど、そんな国を担う人達の中でも一際目立つのは――。
「陛下、発言の許可を頂きたく」
「ええ、別にいいわよ」
「では陛下、恐れながら一つお聞きいたしたい事が」
「あー、もしかして彼?」
さすがはイヴ。わたしが言いたくても言い出せなかった疑問を遠慮なしに投げかけてくれた。このまま何も明かされずに話が進められると気が散ってたまらないからね。
そう、騎士の後ろに立っていたのは、何て表現すればいいんだろう……うん、見たそのままを言えば縫いぐるみだった。
全長はわたしより頭三つ、四つ分ぐらいは高い。形はわずかに縦方向に長い楕円球体にとても短い手足がついていると言えばいいか。上半分が頭で下半分が胴体になるのか? 顔らしき位置には目と嘴っぽいものが付いているし。頭部にはターバンらしき布が巻かれ、胴体部らしき部位には確かカフタンって名の帝国東部の民族衣装を着ていた。
そんなゆるさのある姿には明らかに不釣り合いなのは、背負っているハルバートだろう。大木すら一撃で切り落とせるほど巨大な武具を平然と背負っている。可愛らしい縫いぐるみの姿と物騒な殺傷武器という相反するちぐはぐさはこの場に何とも言えない空気を発していた。
あまりにも厳かな雰囲気に包まれたこの謁見の間には場違いな出で立ちに、右側のみならず左側でも笑いをこらえている人が何人かいるようだった。
陛下は悪態をつくかのように嫌そうな顔をして軽くため息を漏らした。
「彼は腰巾着その一だから気にしなくていいわよ」
「皇帝ちゃん、それ酷いっす。もうちょっといい感じの紹介の仕方ってものがあるっすよね」
喋った!? しかも口調こそ砕けているけれど、思っていたよりはるかに威厳ある野太い声をしている。中の人はもしかしてあの縫いぐるみと同じぐらいの背丈で、しかも筋骨隆々の大男なのだろうか? けれど外見が愛嬌ある縫いぐるみのせいで一つ一つの仕草がとても愛嬌がある。
しかし、その声を聴いた右手の公爵家の者や従者達からどよめきの声があがった。それはそうだろう、この帝国において公の場でここまで尊厳者に対して気さくに話しかける人物などいない。例外があるとすれば先帝ぐらいで、イヴのように血を分けた姉妹も公の場では彼女に臣下として振舞うのに。
「何よ、付いてきたいって言ったのはアンタの方でしょうよ。許可してやっただけありがたく思いなさい」
「それにしたってこの格好は無いっすわー。皇帝ちゃんの趣味疑うっすわー」
「金色の鷲を想像して造形した縫いぐるみよ! 可愛いでしょう? あんた外見だけで人を震え上がらせるほどの厳つさなんだから、東側からこっち来る場合は公式の場じゃあない限りずっとその恰好でいるって条件を呑んだでしょう?」
「鷲!? これ鷲っすか!? 無いっすわー。実に無いっすわ」
わ、鷲だったのか。あまりに象徴的な見た目だったから全然分からなかった。けれど言われてみてば確かにそう見えなくもない。むしろ特徴を良く捉えているとも思える。
陛下とその縫いぐるみのやりとりは皇帝と臣下の関係とはとても思えなかった。どちらかというと仲間、ないしは友が語り合うように打ち解けている印象を覚える。陛下に同行してきた騎士達はそれが当たり前のように無反応だったが、政務官達は複雑な表情を見せていた。
困惑するわたし達にようやく気付いたのか、陛下は縫いぐるみとの談笑を切り上げてこちらに向き直った。
「彼は東の公爵領出身の武人よ。今回はこちら側の内情を勉強したいからって理由で同行してるのよ」
「初めまして、自分は――」
「名前以外の自己紹介禁止だからね! 何の為に変装してると思ってるのよ!」
「き、厳しいっすねー。まー確かに自分本当はこんな所にいちゃあいけないんでぐうの音も出ないっすけど?
何だこれ、漫才か? 若干呆れながら眺めていたが、縫いぐるみはあの丸々した姿にも拘らず優雅に一礼してきた。そして、驚くべき名を口にする。
「自分、名前はヘロデって言うっす。よろしくお願いするっす」
「ヘロデ……!?」
わたしはおろか右側からも彼の名を思わず復唱する人がいたようだ。玉座の傍らに立つ公爵すら目を見張って縫いぐるみの方を凝視している。
東の公爵領、人類圏西方諸国の定義ではその地域はもはや人類圏ではない。そこに住む人々を連中は亜人と呼ぶ。人のように二足歩行しながらも神の像と肖に沿った姿ではない彼は人類の枠組みには含まれない、という考えに基づく。亜人は恐れ多くも己を神に似せようとした紛い物。故に西方諸国では彼らは明確に区別、ないしは差別の対象となっている。
だが彼らと長きにわたり国境を接し、彼らの住む地域を領土としていた帝国は彼らも人類として扱っている。これは神の像である人を彼らを含めてだと解釈し、家畜等の地の全ての獣と明確に区別した為だった。最も、この決定的な宗教観の違いのせいで帝国は西方諸国と頻繁に争っているのだが。
故に、帝国は彼らを亜人、人の偽物ではなく、獣でありながら人として共に地上を治める存在、すなわち獣人と呼ぶ。
「イヴさん達の評判はこっちにも届いてますし、皇帝ちゃんからも良く聞くっす。後でお話し聞かせてもらうと嬉しいっすね」
「ちょっと、昼前は私の用事優先よ。昼過ぎに旧死者の都に行きがてらでもいいでしょう?」
「自分はいつでもいいっすよー」
東の公爵領。西、南と並んで帝国に三つしかない公爵家の一角……と、建前はなっているが、実は本当の東の公爵家はとっくに滅んでいる。と言うのも現在の帝国東側、つまり獣人の住む地域は長年にわたり人類圏国家の帝国と獣人国家が熾烈な争いを繰り広げていたからだ。
獣人を人類として認めた瞬間を歴史的転換点として、帝国は獣人国家を併合し、領土の半分以上が獣人国家の地域という今の形になっている。その際に旧東の公爵家の者が獣人国家の首長と色々あって結ばれていたので、東の公爵に当てはめたのだ。
その為、東の公爵領と便宜上呼ばれる獣人王国は今でも帝国を超える規模を誇る。それでも帝国に下っているのはひとえに帝国の政策が獣人と人類を平等として扱っており、かつ彼らの信仰に寛大なためでもあった。今でこそ帝国の皇帝と東の公爵の関係は良好だが、この先もそうとは限らないだろう。
そんな獣人王国の中でも最大規模を誇る現東の公爵領、その首長は金の獅子な獣人だそうだ。決して短くない獣人の歴史上でも屈指の強さを誇るんだとか。一振りで数十名もの敵をなぎ倒す一騎当千ぶりは一人いるだけで戦局を覆せるほどで、相当腕の優れた武人らしい。
確かその首長、東の公爵の名がヘロデだったような……。
「ま、彼は帝国マスコットなんだからヘロなんたらさんとは一切関係ないから!」
「皇帝ちゃん、やっぱあの約束無しにするって言うのは?」
「そうしたいなら最初から面倒な諸手続やって来なさいよ。過程吹っ飛ばすための苦肉の策がそれなんだから、感謝こそされても非難される謂れはないわよ」
「くぅ~、やっぱ手抜きは駄目っすねえ」
どうやら中の人が誰だかはさておき、あの縫いぐるみはお忍びで西の公都に来訪する秘策らしい。確かにあれだと正体不明のままだけれど、陛下と親しく接するって時点でもはや公然の秘密な気もするんだけれどなあ。
「イヴも彼の事は動くカカシ程度に思ってくれていればいいわよ。深く考えないでおいて」
「辛辣っすねー。まー自分はそれでもいいんですけど?」
ヘロデは頭を掻く動作をしたかったのだろうが、短い腕では頭の所まで到底届かずに腕が持ち上がっただけに終わった。あれでどうやって背中のハルバートを振るうのか非常に気になるんだけれど、緊急時にはあの縫いぐるみが脱げる仕組みなんだろうか?
陛下はこちらに向き直ると腕を組んだままこちらの方に歩み始めた。
「とりあえずヘロデは置いといて、時間も限られてるしさっさとミカルの目を覚ましに行くわよ。イヴとマリアは同行してもらえる?」
「はい」
「か、畏まりました」
わたしまで呼び出されたからもしやと思ったけれど、やはり声がかかったか。これは色々な意味で腹をくくって当たって砕けるしかあるまい。なるようにしかならないだろう。
「それからカインは案内よろしく。さすがに私が我が物顔で城内歩き回るわけにもいかないしね」
「は、はいっ」
カインが慌てた様子で一度頭を下げてからこちらに駆け寄ってきた。途中で器用にも自分のつま先に足を引っ掛けて転びそうになるが、何とか体勢を立て直して陛下の前にやって来る。
陛下はそんなカインに朗らかに笑いかけてから、西の公爵達へと顔を向けた。陛下が彼に送る視線は、彼を怯ませる程にとても鋭いものだった。
「他にこの場にいる者はここで待機よ。体勢は崩していいけれど、追って命を出すまではこの謁見の間から一歩も出ない事。いいわね?」
『はっ!』
「特に西の公爵、あんたには改まって聞きたい事があるから。今のうちにアンデッドの異変の件についての言い訳でも考えていなさい」
「……は」
親衛騎団の者が切れのある返事をする。ほぼ間違いなく彼らは皇帝が次の命を出すまで現状の背筋を張って起立したままの姿勢を崩さないだろう。
西の公爵は陛下の厳しいお言葉にも動揺は見せず、いやむしろ上手く覆い隠したと表現すべきか? 重く一言返事を述べるに留めたようだ。
「さあ、じゃあ色ボケした叔母の横っ面を引っぱたきに行きましょう!」
「姉さん、対話するんじゃあなかったの?」
「肉体言語も対話のうちよ!」
正直、陛下はどう贔屓目に見ても破天荒だろう。口調といい行動といい、あまりにも枠から外れている。わたしの想像が足りなかったと言えばそれまでだが、おそらくは人類史を紐解いてもこれ程の型破りな尊厳者……いや、君主はいなかっただろう。
けれどイヴの言った通り、陛下からは頼もしさを感じるのだから不思議なものだ。
お読みくださりありがとうございました。