死者の都攻略戦①・出陣
朝になった。起床後、とりわけ朝食はここ最近とあまり変わりない過ごし方となった。わたしが朝食を作ってその間にイヴがリハビリを、食事時は他愛ない話で弾む。とても平穏なひと時だった。これがわたしが望んだ日常の風景と言い切ってしまってもよかった。
けれど、身支度はいつもと全く異なる。わたしは学院のローブや杖はいつも通りだけれど、肩や腰の帯にかけていく道具袋、そして靴は普段決して履かない頑丈なものだった。都市の外に出る際に危険に備えての準備、だろうか。
イヴの方はここ最近日常を過ごすだけだったため上下一体の布の服を着ていたけれど、今日は鎖帷子や胸当て、籠手、脛当、盾を装備していく。髪はまとめ上げて兜を被っている。ややぎこちない動作で身にしていく姿はわたしに一抹の不安を覚えさせた。
「その装備品、市販していた中では良品でしたけれど、本当に良かったんですか?」
「別に。剣と盾以外はある程度身体を保護出来て動きやすければ特にこだわりはないし」
これらはこの数日で揃えた装備品だ。幸か不幸か西の公都ではアンデッド軍に連日襲撃されていて需要がある為か品数と品ぞろえが良く、高くない値段でそれなりのものを揃えられた。……当たり前だが勇者として装備していた武具には遠く及ばないが。
更に、肝心の剣は一般兵に支給されるものではない業物ではあるけれど、それは通常品と比較してだ。この間に放棄した光の剣とは雲泥の差。達人が得物に拘るのは実力を最大限に引き出せるようになるためだから、これでは勇者の一撃にはとても耐えられまい。
最も、今のイヴでは本来の力を発揮出来るような気がしないのだけれど。
「それにしても随分と大きめの盾にしていませんか?」
「ああ、これ?」
盾の最近の主流は腕の肘から先程度の大きさの筈だ。これは全身鎧が一般兵に広まりだして盾で防ぐ必要性が薄くなったからだ。その為、盾は金槌のような打撃攻撃、矢や投石などの飛び道具の防御に使用するようになっている。半身を覆い隠せるほどの大きさをしたその盾はどうも腑に落ちない。
それからイヴの盾は中央に取っ手があった。ベルトで片腕に固定する方が強い衝撃に耐えられるし負担も少ないのに。手で掴むだけだとその大きさでは取り回しに苦労して実戦には不向きだと思うのはおかしいだろうか?
「盾は別に攻撃を防ぐために使うわけじゃないしね。武器としてはこれぐらいが丁度いいのよ」
「え、武器?」
盾は防具で武器じゃない、って認識しているわたしが間違っていると言わんばかりにイヴはさらっと答えてくれた。武器って、まさか金槌や戦棍みたいに鈍器として敵を殴るのか? 腕の長さほどの大きさの鉄板を振り回す姿はあまり想像できないのだが。
そもそもわたしは重傷を負ったイヴしか見ていないので、どのように戦うのかは今のわたしには分からないのだ。彼女の気がふれていないならわたしの及びもつかない形でその盾は使うんだろう。
わたしの疑問をよそにイヴは盾を背中に背負い、鞘に納めた剣を腰にかける。その姿は無骨な熟練者を思わせ、伝え聞いている華々しい活躍をした勇者の面影は何一つなかった。
準備を終えたわたし達は互いに顔を見合わせた。先ほどまでの和やかさはどこにもない。イヴは凛とした真面目な面持ちをしていた。
「さあ、行きましょう」
「ええ」
イヴの足取りはしっかりしているものの、まだ自然体ではなくどこか自分の身体に気を使っているように思える。四肢を失ってからまだそれほど経過せずにここまで回復したのは驚異的だけれど、それでも戦場を駆け抜けるには不十分に思えた。
彼女を治療していた魔導師としては彼女は止めるべきなんだろうけれど、仲間としては彼女には今日という日に蚊帳の外にいてもらいたくない。アダムにはイヴが面と向かってもらいたいのだ。
玄関に鍵をかけたわたしは店の扉に臨時休業の立札をかける。今日は神の定めた休みではないし、事前に通達したわけでもない。一応予告なしに休む場合が有る、と立て看板には書いていたが、待ち望んだ日常と引き換えにしてでも今はやりたい事があるのだ。
いつもより速い朝を迎えていたが既に日は昇り始めている。今頃は北の城壁外に陣を構えていた帝都からの討伐軍は出立の準備、もしくは既に出陣しているだろう。最もわたし達は初めからあちらと合流するつもりはない。西の公都の魔導師としてここの軍と共に行くつもりでいる。
「マリアさん!」
「カイン」
しばらく街道を進んでいると後ろから声をかけられた。振り返るとカインが馬車から身を乗り出してこちらに向けて手を振ってきている。彼の馬車は機能性の他に装飾など細部の作りまで凝らされたもので、馬車の側面扉には公爵家の紋が入っている。
けれどカインはいつものように明るく振舞いながらもどこか硬く、沈んでいるような気がした。
「いつもは歩きでやって来るのに珍しいですね」
「いえ、重要な日ぐらい公爵家の者として恥じない振る舞いをしろって昨日の晩餐の時に言われてしまって……」
晩餐って、教授がさぼった会食か。どうやら話を聞く限りお断りしておいて正解だったらしい。今後も誘われる機会があるならやはり適当な理由をでっち上げて拒否する方向で行こう。社交性とか立場とかは知った事ではない。
にしても、公爵家の者として恥じないように、か。公爵はとことんカインに全てを任せる気なのか。公にはしていないけれど公爵には魔王を名乗る者が現れたと報告が届いている筈だ。当人は無能では無い筈だけれどカインに丸投げする動機が未だ見えてこないな。
「こちらからも帝都からの討伐軍に追従して軍を出すんですよね。どれだけ集められたんです?」
「最後の防衛戦で展開していた数と同程度を見込んでいます。治安維持や城壁の守護を疎かには出来ませんでしたが、公爵家の私兵、傭兵、周辺地域からの応援など、集められるだけ集めました」
「それはお疲れ様でした。色々と大変だったでしょう」
「そんな、僕はまだ裏方しか出来ませんから、それぐらいはやらないと」
確かにまだ少年のカインが戦場に赴いたところで力不足が露見するだけで活躍は出来ないだろう。だからと言ってその小さい肩にこの異変の重みがのしかかっているかと思うと、感心や感動の他にそうさせてしまっている申し訳なさも生まれてくるものだ。
そんなやるせない気持ちをどこかに抱いていると、カインが神妙な面持ちでこちらの方を見つめてきた。あまりに真剣な様子に一体何を言いだされるのか分かったものではなく、こちらの方まで自然と緊張してしまう。
「あの、マリアさん、その……お母様なんですが……」
それはこの一週間ずっと避けてきた話題だった。異変対策の責任者のカインには当然わたし達が遭遇した死者の都侵入の顛末を報告している。わたしの事、魔王の事、そしてミカルの、つまりカインの母親の事もだ。
三年前に亡くなった彼女をマリアは公爵を唆して蘇らせた。けれど決して家族と顔を合わせられず、囚人も同然な日々を送る彼女は決して救われたとは言えない。報告した際は罵倒されるのを覚悟していたけれど、カインは返事を返すのが精一杯で憔悴しているのが見て取れた。
その後もカインは普段通り振舞ってわたしに接してくれた。それに甘えたわけではないけれど、結局お互いに何も言えぬままに今日という日を迎えてしまっていた。
「大言壮語はあまり好きではありませんけれど……大丈夫ですよ、カイン」
「えっ……?」
神に背いて死を覆したのも、ミカルが死者の都で囚われの身になっているのも、全てマリア……わたしのせいだ。過程がどうであれわたしがやるべき事を果たせずに為にみんなに迷惑をかけている事実は変えられない。
かと言ってカインに深々と頭を下げて謝罪するのは何か違う気がする。マリアの所業が他人事なのもある。けれど、わたしが同じ立場だったとしても同じ道を辿っていただろうし、反省はしても後悔は微塵もしなかっただろう。
日常を今一度、と思う心は嘘偽りのない本物なのだから。
「明日になったらきっと失われた日常が戻ってきます。期待しろとは言いません、ただ待っていてくれませんか?」
「マリアさん……」
わたしはカインに笑いかけたけれど上手く笑えただろうか? これは確かに気休めなのは否定できないけれど、同時にわたしの意思表示でもある。わたし、イヴ、ミカル、アダム……今日で様々な出来事にけりをつけてやるんだ、という。
マリアの日常と過去は永久に失われてしまったけれど、カインの過去は背を向けられているけれどもまだ手に届く範囲にある。それなら手を掴めれば引っ張ってこちらに向けられる。それだったらわたしは手を差し伸べたい。例えそれが利己的な考えに過ぎなくても、だ。
「行きましょう、カイン。今日で全てに決着を付けちゃいましょうか」
「……はいっ」
先ほどまで緊張と不安に包まれていたカインの表情は気が楽になったのか、明るくなっていた。
■■■
西の公都北の城壁外、ついこの間まで毎晩アンデッド軍の襲撃を受けていたこの場所は、今は逆に反撃の狼煙が上げられようとしていた。昨日の晩には帝都より派遣された討伐軍が陣地としていたがやはり既に出発しているようだった。
代わりに今まで公都の防衛に付いていた軍勢が今度は逆襲に打って出るべく集まっていた。城壁上に展開していて分からなかったけれど、こうして平地で並んでいると予想よりも多い人数が集っているようだった。
カインの到着に気付いたのか、部下と意見を交わしていた将官がこちらへと駆け寄ってきた。彼の顔には見覚えがある。確かこの間の防衛戦の時にカインの傍らにいた指揮官だったか。
「カイン様! わざわざこんな朝早くに来ていただかなくても……」
「いえ、僕にはこれぐらいしか出来ませんから」
カインの言った通り集められた兵士達は公爵領の兵士が半分、傭兵部隊が半分と言った所か。まあ職業軍人は平時にはそれほど任せる役目が無いから頭数が必要になったら傭兵で補うのは分かる。それでも正規軍がそれほど多くないと統率の取れた軍にならないような気もするのだが。
まあ、そんなものは素人の邪推、杞憂だろう。わたしが帰ってくる大分前からこの公都を守護してきた彼らは有無を言わさぬ百戦錬磨の強者達だ。今も彼らの目つきはとても鋭く、やる気に満ち溢れている。異変解決まであと一歩なのが理由か。
「それでカイン、わたし達はどちらに加われば?」
「あ、いえ。マリアさんとイヴさんは魔導協会が派遣して下さった軍に加わっていただこうかと」
「魔導協会? ではアタルヤさん達と共に?」
「はい、あちらになります」
将官が手を向けたはるか先にいるのはどうやらイゼベルとアタルヤか。多くの人が出陣の為に並んでいるせいか、防衛軍とはまた別の部隊を率いるアタルヤ達が自然と遠くなっているな。
「ではカイン、行ってきますね」
「どうかお気をつけて。絶対帰ってきてくださいね!」
「ええ、勿論!」
わたしは懇願するようなカインに力強く返事を返し、イゼベル達の方へと足を向けた。
「おはようマリア。今日はいい天気ね」
「おはようございますイゼベルさん」
一週間ぶりに会うイゼベルは微笑みながら気さくに手を振ってくる。彼女は普段通りのヘンテコな帽子とドレスにも似たゆったりしたローブ、そして日傘を差しながら扇を広げてた格好をしていた。戦場に赴く魔導師だって不意の事故を想定してある程度防具を身にするものだが、そんな様子は一切見られなかった。
「あれ、もしかしてイゼベルさんも今回同行されるんですか?」
「ええ、折角指揮者としてのアタルヤを見る機会だもの」
イゼベルが視線を向ける方向にはアタルヤが佇んでいた。彼女は防衛戦の時と同じく白銀の全身鎧と兜に身を包んでいた。公都に帰ってきた初日に会った彼女は肩幅が広く腕や脚が太いながらも出るところは出て引っ込む所が絞られた身体の線が強調されたドレス姿だったのに、今は重装備なせいでほとんど隠れてしまっているのが少し残念だ。
けれど上げられた面から見える美貌だけで彼女が女性だと分かるのは素直に凄いと思う。社交界に出たら多くの殿方の視線を集める事間違いなしだろう。
「今日もアタルヤの部隊に加わってもらいたいんだけれど、いいかしら?」
「構いませんが途中まででいいですか? わたし達にはやりたい事がありますので」
「ええもちろんよ。敵軍の頭数を減らすのは帝国軍に任せておけばいい。マリアはマリアのやるべき事を果たせばいいでしょう。アタルヤがきっと道を切り開いてくれるから」
「……感謝します」
イゼベルの配慮はとてもありがたい。露払いと言ったら聞こえが悪いけれど、デスナイトやリッチの部隊、ワイトキング達を排除しながら進むのにはアタルヤ達の奮戦が必須だ。帝国軍の強さが不明な以上、アタルヤ達を踏み台にしてでも先に進まなければならない。
それでもどこまであのアダムに通用するかは結局今となってもわたしには計り知れなかった。たった一週間でわたしの実力が飛躍的に伸びる都合のいい展開が起こるわけもなかったので、イヴや他のみんなを信じて当たって砕けろ、だ。
「来たかマリア」
「おはようございます、アタルヤさん」
わたし達に気付いたアタルヤとも挨拶を交わす。これから死地に赴く筈だけれど、やはりアタルヤは落ち着き払っていていつも通りと言った感じだ。魔導師の彼女がどうして戦い慣れしているかは興味深いけれど、聞くのは今度にしよう。
それにしても……とアタルヤの前で整列する彼女の部下の方を眺める。壮観、とでも言えばいいんだろうか? 防衛戦の時には騎乗兵百名で構成された彼女の部隊は、今目の前にはそれとは比べ物にならない人数が展開されていた。
「まさか彼ら全員アタルヤさんの部下ですか?」
「この間は即日と言われて百名だけ動員したが、今回は準備期間があった上に兵糧は考えなくて良かったからな。総勢七千五百ほどだろうか?」
「七千五百!?」
もはやそれは軍と呼ぶのが相応しかった。騎乗兵、重装歩兵、軽装歩兵と様々な部隊が一様に並んでいる。装備の統一はあまりされていないものの、先日の騎馬部隊同様に実用性重視で無骨、かつ使い込まれたように傷と汚れがある。まあ、だから毎度魔法で豪華絢爛な装備を整えるアタルヤが目立つのだが。
そんな彼らが掲げる旗は帝国を示す双頭の鷲と、白き竜?
「アタルヤさん、あの白い竜は?」
「私の部隊の紋章とでも思っていればいい。マリア達にとってはさほど意味はないよ」
アタルヤは淡々と説明したつもりだったようだけれど、その言葉には計り知れない深みと重みがあった。多分、帝国に所属しているから義務か義理で鷲を掲げているんであって、彼女らの志はあの白き竜と共にあるのだろう。わたしの想像もつかない想いがアタルヤの熱い眼差しから見て取れた。
それも短い間で、顔は自分の軍に向けたままで視線をこちらに投げかけてきた。正確には、わたしの隣にいたイヴに。
「それで、今日は彼女を連れてきたのか」
「ええ、大事な場面で置き去りには出来ませんでしたから」
「……そうか。上手く補助してやれ。彼女を生かすも殺すもマリア次第だからな」
てっきり半死人は足手まといだ、とか言われるかと思ったら意外にも優しい言葉が送られてきた。イヴの参戦が彼女にとっても望んだものなのかは分からないけれど、彼女はどこか満足そうに笑みをこぼしていた。
そんな反応をされた当のイヴは特にこれと言った感慨も湧かない様子で、何の関心も示さないままアタルヤの部隊を眺めているばかりだった。
「それで、私達はどの部隊に加わればいいのかしら?」
「マリアにはこの前と同じように騎乗兵の部隊に加わってもらうつもりだ。イヴはマリアの馬にしばらく相乗りさせてもらえばいいだろう」
「あらそう、それは良かった。騎馬戦ってあまり得意ではないもの」
私だってそこまで馬術は達者ではないのにイヴを後ろに乗せてアタルヤ部隊の猛攻に付いていけるだろうか? まあ敵軍の中で孤立さえしなければ別に早々に離脱してしまえばいいか、と考えれば少しは気が楽になってくるというものだ。
と、向こうの公都軍の方で兵士が両手に持った旗を何やら上げ下げしてきた。それを見たアタルヤは大地を蹴ると軽快な動作で馬に乗った。もしかして今のは声が聞こえない距離でも意思疎通が出来るような合図の一種だろうか?
「準備が整ったから出発するとの事だ。まずは我々が先を行き、公都の軍は後から続くそうだ」
「分かりました。わたしが乗る馬は?」
「この間と同じ馬を用意させた。乗り心地等で不満があるなら少しは検討するが?」
「いえ、十分です。ありがとうございます」
彼女の部下が乗り手のいない馬を引き連れてきた。肌の色はそれっぽいけれど、この馬が前回も乗ったものだと言われてもあまり分からないな。まあわたしでも乗れるような穏やかな気性だったら別にどれでもいいのだけれど。前回と同じだからと特に愛着が湧くわけでもないし。
「よっ……と。ふう、イヴ、引き揚げますからこの手を掴んで下さい」
「それじゃあ遠慮なく相乗りさせてもらうわ」
わたしは馬に乗った後、イヴの手を引っ張る。彼女は地面を蹴るとあぶみも無しに馬に飛び乗ってきた。腕にかかった負担はそれほどでもなく、実に軽やかな動作だった。本当にこれが障害を負った者の動きなんだろうか?
いや、彼女にはまだ体力面で不安がある。とっさの動作の一つや二つが問題なくてもそれがまだ持続出来ないのだ。やはりしばらくは地道にリハビリを積み重ねるしかないだろうけれど、今日の決戦で良い方に上向くか悪い方に転がり落ちるかは正直未知数と言える。
「イゼベル、言っておくが私は貴公を守らないからな」
「それで結構。アタルヤの邪魔にならないようにするわよ」
イゼベルもいつの間にか馬に乗っていたものの、馬をまたがずに横向きに座っている。確かサイドサドルって言うんだったっけ。ドレスにも近いローブや日傘といい、完全に貴婦人のお散歩にしか見えないのだけれど、不思議と場違いだとは思わなかった。それだけ堂々としているからか。
アタルヤは手を虚空へと掲げると突撃槍を現出させた。そして、矛先を降ろして死者の都の方角へと向け、一帯全てに轟くほどの命令を発した。
「出陣!」
彼女の命を受けて軍が一斉に反転する。その一糸乱れぬ動作には素直に驚嘆する。軍はそのまま待機を続け、代わりに北の城壁を背にしていたアタルヤと近衛の騎乗兵およそ百名にイゼベルが加わって整列した軍の間を抜けつつ進軍を開始する。
「じゃあ行きましょう。全てを明らかにするために」
「ええ、そうですね」
わたし達もアタルヤ達に追従する形で出発した。いざ出発となると緊張で不安になってくるし吐き気もしてきたけれど、何とか堪えられた。そう言えばこの緊張感がたまらないなんて主張する歴戦の戦士もいるようだけれど、イヴは違うよね?
向かうのは死者の都。わたしとイヴが失った一年前の真実を求めて。
いよいよこの章も佳境に入ります。
お読みくださりありがとうございました。