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大会六回戦①・魔人長を攻略せよ

 特に番狂わせも無いまま五回戦も終わって六回戦に突入した。

 六回戦第一試合は陛下とロトが舞台に上がって相対している。最初こそ派手な勝ち方をした陛下はその後無難に剣と剣を交えて純粋な腕前でここまで上り詰めてきている。対するロトは鉄砲とやらを始め様々な道具を駆使して勝ち残ってきた。この二人の戦いもまた面白くなりそうだ。


 試合開始の合図が流れると陛下は剣を携えたまま堂々とロトの方へと歩み寄っていく。王者の行進とは正に今の陛下を差す言葉だろう。対するロトは怯まずに右手を向けつつ手首を少し曲げた。それが装置を作動させる引き金だったらしく、彼の袖の中から高速で銛のような鋭利な凶器が飛び出した。

 陛下はそれを難なく回避した。とは言えイヴやアタルヤと比べるとそこまで機敏な動きには見えない。それでもロトが次々と発射させる飛び道具を躱したり剣で切り払って悉く対処していく。徐々に陛下とロトとの距離は縮まっていった。


「……恐ろしいですねー」

「え? 何がですか?」


 半分ほど陛下が間合いを詰めた所でタマルが口元に手を当てながらうなった。目をわずかに細めて陛下を注視する彼女からは警戒心すら感じられた。疑問を浮かべるわたしに対して諭すように陛下へと指を向ける。


「陛下の初動が、ですよ。よーく見てみてください」

「……あれ?」


 注意深く観察すると妙な事実に気付いた。確かに陛下の動作はイヴと比べたらさすがに鈍いように思われる。それでもロトの遠距離攻撃を全て凌いでいるのはロトの挙動から読んで対処に繋げていると判断したけれど、そんなものではなかった。

 陛下は明らかにロトの攻撃を先読みしている。彼が引き金を絞る前には動いているのだ。


「ロトの次の動きを計算しているんでしょうか?」

「それとも対戦相手の動作の兆しから攻撃を判断して対策を練っているのかもしれませんね~」

「未来予測とか未来予知みたいな能力だったりしたら……」

「いや、そんな高尚なものじゃあないってさ」


 距離が大分縮まった辺りで陛下は飛び出した。ロトは後方に飛び退きつつ更に弩で射かけるもののやはり陛下には通用せず、矢は残さず舞台上に転がる破目になっている。ロトは無駄と悟ると弩を始めとした飛び道具を駆けながら取り外して身軽になっていく。


 教授の一言にわたしとタマルばかりかナオミも興味を引いたようで視線を投げかける。


「バテシバが言うには直感なんだってさ。何となく先が見えるらしいよ」

「それ、何気に凄いんじゃあないです? 相手が攻撃を仕掛けようとした時には既に回避行動を取られているんでしょう?」

「しかも精度がいいんだってさ。突拍子もない場面でも時折類まれな直観力を発揮して、それが今の帝国の繁栄にも結び付いているんだとか」

「それ、確かに凄いですね……」


 ロトは銛を撃った側とは逆の手を陛下へ向けると、手首の甲まで伸びていた細い筒から火炎を放射させた。さすがに広範囲へと燃え盛る炎を前にして陛下の怯んだようで足を止める。けれど火属性魔導と違ってそれほどの火力は出ていないらしく、陛下が力を込めて剣を一閃させるとたちまちに消し飛んでしまった。

 火炎放射器も背中から降ろしたロトは腰の後ろにかけていた道具を放り投げる。車輪が前後に二つ付いた乗り物の上に飛び乗ろうとしたロトだったが、陛下は彼より先んじて乗り物の近くまで駆け寄ると場外まで蹴り飛ばしてしまった。

 舞台上を駆けるロトの逃げ道を阻もうと陛下が回り込むので段々とロトは端へと追い詰められていった。とうとうロトはあと一歩後ろに退けば場外といった所まで迫られていた。


「バテシバも何だかんだで陛下を尊敬しているようだよ。自分じゃああの人を超えられないとか敵わないとか」

「あのバテシバがそこまで言うんですか!」

「ああ、だってね……」


 陛下は臆さずにロトへと突撃した。対するロトは……あろう事かそのまま後方へと跳んだではないか。

 そのまま放物線を描いて場外へ、と思いきや彼は上方へ死者の都侵入の際にも使った昇降用の縄を射出させていた。先端の鉤爪金具が引っかける先は先ほどわたしも乗っていた防御壁の効果範囲ぎりぎりの場所だ。ロトの身体は縄に引っ張られて場外に落ちる事なく宙に浮いたまま防御壁へと向かっていく。

 ロトへと突撃した陛下はそのまま舞台に踏みとどまる、と思いきやいつの間にかロトは陛下の服飾に金具を引っ掛けていたらしく、二人の身体は縄で結ばれている。このままだとロトが陛下を引き寄せれば陛下は場外に投げ出されてしまう。


「バテシバもイヴも陛下と戦って勝った試しがないんだとさ」

「――えっ?」


 危機を前にした陛下はなんと逆に自分からロトへと飛び込んでいった。剣を一閃させるとロトを上から吊っていた縄を断ち切り、更にそのままの勢いでロトの懐に飛び込んだ。恐れも知らぬ攻勢に驚愕するロトと絶対の自信を絶やさず笑みを浮かべる陛下の対比が凄まじい。

 するとどうなるか、両者共に場外へと打ち付けられるもののロトが下で陛下が上。つまりロトの方が先に場外に落下した形になる。

 この試合もまた陛下の勝利に終わった。実に見ごたえのある試合運びに会場内は拍手喝采に包まれる。


「どんなに優れた知識があっても経験を積んでも、陛下は直感で潜り抜けちまうんだって。全く、大したものだよ」

「それでバテシバは賢者を三人も引き連れて陛下を阻みに来たんですか……」

「そう言う事。直感だけじゃあどうしようもない大規模な魔導を駆使できる三人を選出してね」


 歓声にこたえて満面の笑顔で手を振る陛下だけれど、あの人には今後さらなる強豪が待ち構えている。決勝に行く前にはノアやアタルヤを相手にしないといけないし、決勝で当たるのはバテシバの可能性が濃厚だろう。

 それでも陛下だったら何とかしてしまう。そんな気さえしてしまう一幕だった。



 ■■■



 次の試合はノアとレイアの組み合わせになった。落ち着いた物腰なノアに対してレイアは真剣な眼差し彼を見据えている。唇を固く結んだ面持ちからは深刻な想いがにじみ出ている。

 それもそうだろう。レイアはノアに対して明らかに相性が悪すぎる。全てを氷結させてしまうノアの魔導をレイアは阻めないからだ。シーリングアロー等の魔法も炎を起こすとは言え猛吹雪の前には吹き消えてしまうだろうし。どんな手で挑むつもりだろう?


 試合開始の合図が流れても両者ともに動こうとしない。ノアは身体から力を抜いた様子でレイアを眺めていたものの、やがて大げさに肩をすくめてみせた。


「そっちから来ないなら俺の方から行くけれど、どうするの?」

「……そうね。だったら私から行っちゃうけれど、いいの?」

「いいよ。何をやるのか見せてみて」

「――そう、なら遠慮なく」


 レイアは天に木製の杖をかざすと、不敵な笑みをこぼした。先ほどまでの警戒心は鳴りを潜ませていた。……まさか、怯えにも似た先ほどの振る舞いはノアを油断させるための演技だったとでも言うのか?


「アストロノミカル・ダスク」


 レイアの杖から天へと闇の線が伸びた。それはやや高い位置で四方へと広がっていき、この闘技場を漆黒の幕で覆っていく。しかもただ暗くなっただけじゃあない。太陽の光だけが完璧に遮断されているのか星空が天空を見えるのだ。

 闇ではなく夜。そう、夕方には少し早い時刻にも関わらず闘技場は夜が舞い降りていた。


「ようこそ夜の世界へ、ってね。感想はどうかしら?」

「……確かに驚いたよ。単に光を遮るだけならそれほど難しくないけれど、太陽だけ遮るのは並大抵じゃあない」

「それはどうも。ならこれはどうかしら?」


 ノアと対峙していたレイアの身体が風景と溶け込んでいく。保護色程度ではなく硝子のように透明になったわけでもない。本当に姿が服などの装備ごと段々と薄れていくのだ。最終的にはどこにレイアがいるのか分からなくなってしまった。

 ノアが手の平に収まる程度の大きさの氷を剛速球で投げ放つものの、レイアがいた場所をそのまま何事も無く通過する。遠く離れた防御壁に激突し粉々に砕けた氷を見たノアはわずかに顔をしかめた。


「ナイトハイド。夜に溶け込んだ私をあんたは捉えられるかしら?」

「別に捉える必要は無いと思うよ。だってこの舞台上にいるのは明らかなんだから」

「あら、よそ見は禁物よ」

「……!」


 突如レイアが姿を現したかと思ったら既に杖を弓のように見立てて前方に構えていた。矢としてシーリングランス、だったっけ、をノアへと向けている。

 すぐさま射られた炎の槍は一直線にノアへと突き進んでいく。彼は迫りくる炎の槍へ手をかざすとすぐさま熱を奪って霧散させた。あまりに瞬間的に対処したので目を凝らして観察していないと単に吹き消えた様にしか見えなかった。

 成程、レイアのナイトハイドとやらは攻撃に移ると効果を失うのか。あと心なしか彼女が移動している間はかろうじて彼女を感じ取れる。静止している間は本当にその場にいるのか疑いたくなるぐらい綺麗さっぱり姿が見えないし、吐息等の気配も感じない。


「隠れ潜みながら機を窺って攻撃、か。随分と姑息な真似をするものだね」

「魔人とまともに戦っちゃあいられないわよ。それに無駄だって思うかもしれないけれど、好機を手繰り寄せる布石って考えてもらえない?」


 レイアは続けざまに炎の矢を放つ。シーリングアローも難なくダイヤモンドダストでかき消したものの、ノアが反撃に移ろうとした時には既にレイアは姿をくらませている。たまらずにノアが舞台全体を捉える大規模魔導の準備に入る間際にレイアが続いての攻撃を繰り出す。そのさじ加減は絶妙と言ってよかった。

 とうとうノアがこの試合で初めて駆け出した。狙いを一点に絞らせない事で術式構築の時間を稼ぐ魂胆なんだろうけれど、そんなのはお見通しとばかりにレイアの矢は的確にノアへと襲い掛かっていった。


「……凄い精度ですね」

「あら、やはりマリアもそう思う?」

「えっ?」


 わたしは試合も近くなったので選手控室と舞台を結ぶ通路から試合を観戦していると、後ろからバテシバに声をかけられた。正直彼女はわたしが包み隠している全てを暴いてくるほど聡明だ。なので少し気まずかったりする。

 そんなわたしの心情すら手中なのか、バテシバはわたしに微笑んできた。貴賓と優雅さを感じさせる仕草は学院で多くの同級生や後輩に慕われていた彼女に磨きがかかったように思えた。


「あのレイアって人は魔人に調子を掴めないよう巧みに立ち回っているわね」

「先ほどは絶好の機会を掴む布石だって言っていましたけれど、それでもノアには何ら有効打になっていないのは結構厳しいですね」

「けれど単に当て逃げをしているわけじゃあなさそうね。狙いは何かしら?」


 レイアの猛攻は段々と勢いづいていき、炎の矢の数が増えたり速度が増したりと攻勢を強めていく。それでもノアに傷一つも付けられずに全て受け止められてしまうばかりだ。一方のノアも中々攻めに転じられない。レイアの攻撃が絶妙に襲ってくるせいで彼は狂わされている。

 段々とノアは苛立ちを募らせているようで、表情が険しくなっていく。


「いい加減無駄なあがきは止めてもらえないかな?」

「無駄じゃあないわよ。言ったでしょう、布石を打っているってね」

「石ころを転がしているの間違いじゃあないの?」

「なら見せてあげるわ。夜の星々の煌めきをね……!」


 突如レイアが姿を見せた。彼女は先ほどと同じように杖を天高く掲げる。けれど今度は闇夜を齎すのではなく夜空の星々が強く輝き始めたのだ。レイアがそのまま杖を振り下ろした。杖の先が指し示す方向は相対するノアだった。


「スターフォール!」


 彼女の力ある言葉と共に夜空から流星群が降り注ぐ。ただ教授のように隕石を物理的に落下させるのではなく、粒子状の尾を引いた箒星のような光が舞台へと向かう感じだろうか。ただその性質から考えると軍を相手にするならともかく個人と対峙するには向かないのでは? そう思ったものの、どうやら輝く星々は狙った相手に向かっているらしい。

 ノアは舞台を蹴ってレイアへと一直線に突き進む。彼がいた位置に次々と星が落ちていき舞台を容赦なく破壊していく。バテシバが一度だけ研究の成果だと見せていたメテオスウォームも真っ青な威力に見える。

 ただ動く対象への捕捉が甘くてレイアとの距離を詰めるノアに全く当たらない。その間も次々と流星が降り注いでいて彼女は全く身動きを取れないし別の対策を講じられない。ノアが拳を握りしめてその暴力を発揮せんと間合いに捉える。


「――そう来ると思っていたわよ」


 次の瞬間だった。どこからともなくノアが狙撃されたのは。


「な、に……!?」

「一対一で対峙しているからって敵が一人だと思ったら大間違いよ」


 彼を貫通したのは先ほどもレイアが見せた狙撃術のシーリングスナイプ。けれどレイア自身は微動だにしていないのに一体どこから、と舞台を見渡すと、闇夜に紛れて何やら影のようなものが明後日の位置で蠢いていた。

 注意深く観察したらどうもその影はレイアと同じ姿形をしているようにも見える。ただ影は構えを解くとその姿を薄くしていき、最後には消えていった。


「シャドウサーヴァント、影の自分を作り出す術よ。影の私もまた夜の闇に溶け込む事が出来る。出現させてから今までずっと隠れ潜ませていたってわけ」

「……成程、俺が君に注力した瞬間に伏兵が行動したってわけか」

「御明察。そして私の流星群はまだ降り注ぎ続ける!」

「それなら、こうするまでだ……!」


 純白の衣服と肌を鮮血で真紅に染めていくノアは身体をよろめかたものの、次には更に踏み込んでレイアを間合いに捉えた。影のレイアは追撃を加えようとシーリングアローを放つものの、既に射線上にレイアが入ってしまっていて上手くノアに当たらない。


「……っ!? 胸を貫かれてまだそんなに動けるなんて!」

「あいにく魔人の頑丈さを舐めないでもらいたいね……!」

「懐に入ったからって怯むと思ったら大間違いなんだから……! 星の輝きを食らいなさい!」

「ダイヤモンドダスト!」


 次の流星がレイアを巻き込みつつノアに直撃したのとノアが凍気を手の平から放ってレイアの腹部に襲い掛かったのはほぼ同時だった。派手に舞台を破壊する威力にノアが、冷気に翻弄されて宙を舞うレイアが描く放物線の高さはほぼ同じ。

 ただノアは瓦礫の山と化した舞台上に転がり落ち、レイアの方も舞台端から突然生えてきた木に受け止められて場外落ちは免れた。凍傷が酷いもののノアの一撃を受けたにしては随分と軽度に留まっている。多分常時発動型の冷気対策を取っていたんだろう。


「ヒーリング」

「トランクィリティ」


 ノアは自分自身に回復魔法をかけつつゆっくりと起き上がった。レイアもまた月光を浴びて自分を癒していく。瞬時に生えた木は最初のやりとりの際に舞台に仕込んだものだろう。役目を終えて急速に成長した木はそのまま枯れ果てて脆く崩れていった。


 先に動いたのはノアの方だった。彼は傷口をふさぐ程度に留めたのかほとんど時間をおかずに別の術式を構築、拳をレイアの方へと突き出した。それを見たレイアも慌てて術を強制中断させて前方へと杖を突き出す。


「グランブリザード」

「ガスティウィンドカノン!」


 再び発生した猛吹雪に対してレイアは暴風を発生させて阻む。互いの烈風は跳ね返ってそれぞれ自身に襲い掛かる。冷気に平然とするノアに対してレイアは切り刻まれる一方だ。意外にも拮抗しているけれど、良く見たらレイアの方は影のレイアも加わって実質二倍になっているのか。

 レイアが別の手を講じようとする度に猛吹雪が押していく。これではレイアの方は完全に詰んでしまっている。ノアの方はまだ空いているもう片腕で巨大な光の矢じりを構築し始める。アレは私の魔導であるマジックアローレイか。


「その、瞬間を待っていたわよ……!」


 レイアは更に追い込まれるのを気にせずに別の術を編み込んで明後日の方へと発動させた。ノアからもレイアからも離れたその位置では先ほどと同じように急速に木が成長していく。それだけでも圧巻ではあったけれど、なんと目や口らしき穴が生じたではないか。

 枝や根は纏まって腕や脚を形成し、最後には二足歩行する生命体へと姿を変えた。死者の都侵入の際にレイアが創造したトレアントが舞台上に出現していた。


「まさか木の無い所にトレアントを召喚するだなんて!」

「一体どんな術式を構築すればこんな高度な現象が……!」


 これにはさすがのバテシバでも驚きを隠せていない。当然だろう、普通の木を変化させたり呼びだすならまだしも、木を成長させてそのままトレアントに変貌させるなんて聞いた事も魔導書で呼んだ事もない。わたしも目の前の現実を疑いたくなってしまった。

 トレアントはレイアが起こして跳ね返される烈風を真正面から受けるので段々と損傷していく。それでもトレアントは手と足を動かして先ほどスターフォールで砕けた舞台の瓦礫を一つ掴み取った。一見か弱い女の子のように華奢なノアの身体と同じぐらいの大きさだ。


「マジックアローレイ!」

「やれ、ガーディアントレアント!」


 トレアントが岩を投げ放つのとノアが矢を射るのは同時だった。マジックアローレイは猛吹雪や暴風を切り裂いてレイアに到達、胴体を斜めに切り裂く。岩はそのままノアに直撃してその身体を勢い良く跳ね飛ばす。

 ノアの身体は場外に転がり、レイアは大量の血を滴らせながら膝を付いた。確実にアローレイがレイアを斜めに両断した筈だけれど、右手と左手で胸と胴を押さえて上半身がずり落ちないようにしている。

 ノアはすぐさま体勢を立て直して起き上がるものの場外にいる事に気づいて軽く息を吐いた。レイアはそんな彼に口角を吊り上げてみせた。何かを呟こうとするものの地を口からあふれ出させるだけに終わってしまう。


 吐き出された血は、月に照らされた夜の空のように深い青色をさせていた。

お読みくださりありがとうございました。

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