魔人長とのデート
「上がっていい? 遠路はるばる来たから疲れてて」
「え、ええ、別に構いませんよ。今別の人がいますけれどいいですよね」
「俺は構わない。相手がどう思うか次第じゃあないの?」
「タマルさんだったら別に気さくに迎え入れると思いますけれど」
ノアはわたしの後に従って家へと上がる。階段、廊下を抜けた辺りで食器を洗い終わって台所から出てきたタマルと遭遇した。
「ああ、マリアさんの知り合いでしたか――」
突然だった。タマルはわたしの後方にいたノアを見るなり床を蹴ってわたし達と一定の距離を置いた。重心をやや下にしつつかかとを浮かせた体勢は相手がどのように動いても対処できる構えだった。身体をやや左に向けて右腕を前に出しているのは急所を守るためか?
咄嗟な動きもそうだったけれどタマルが今まで見せた事のない真剣な面持ちでわたし達……いや、ノアを警戒する様子にわたしは少しの間何の反応も出来なかった。そして我に返ってようやく自分のうかつさに気付いた。
まさか、タマルはノアを一目見ただけで彼が魔人だと看破した?
彼女は警戒するように目を鋭くさせてノアを見据えている。
「で、そちらの客人は誰なんですか? それとも何者なのかって聞いた方がいいですか?」
「……へえ、分かるんだ。意外かな。この姿で見破られるなんて思いもよらなかった」
「怖ろしいですねー。天使のような美少年と美青年の境にしか見えないその容姿の裏にはどれだけの暴力が隠されているんだって話ですよ」
「本来の姿を圧縮させて取り繕っているから貴女の想像以上じゃあないかな?」
ノアは相変わらず落ち着いた物腰を崩さずにタマルを見つめるばかり。タマルは呼吸を整えながらも一筋の汗を頬に流したものの、やがて深く息を吐いて構えを解いた。タマルは張り詰ませていた雰囲気を元に戻し、穏やかで少し間延びしたいつもの彼女に戻していた。
「察するに魔王軍の軍団長ノアと見受けますけれど合っていますかー? まさかあたしが出くわすなんて思ってもいませんでしたねー」
「初めまして。知っているようだから自己紹介は必要ないかな。それで一方的に知られているのはちょっと癪なんだけれど?」
「あ、ごめんなさい。彼女はわたしの同僚の魔導師タマルって言います」
「よろしくー」
「ええ、よろしく」
タマルはこちらに歩み寄るとノアに手を差し出した。ノアも何も警戒せずに彼女の手を握る。少しの間静寂が辺りを包んだ後、タマルはほどかれた自分の手を握ったり開いたりする。ノアの方も握手した手を少しの間見つめていた。
やがてタマルは拳を握りしめて満足げに笑みをこぼす。タマルがノアへと向ける視線は敵意でも畏れでもなく、凛とした自信に満ちていた。
「成程、これが魔人ですかー。けれどあたし達の理解が及ばない未知の存在じゃあなくてちゃんとした生命体だったんですねー」
「酷い言われようと思うんだけれどどうなの?」
「けれど決して太刀打ちできない相手じゃあないんだって確信は持てましたよー。あとは自分の技量次第ですかねー」
「実に興味深い意見かもね。からくりを聞くのは野暮って所かな」
わたしの想像に過ぎないけれど、もしかして今の握手だけでタマルはノアの身体の構造を把握したのだろうか? 水属性魔導に秀でた者は触れた対象の流れを知覚できる。水のような流体ばかりではなく血が流れる人の身体の流れもだ。握手を求めたのはノアの人体構造を解析する為か。
ひょっとしたら彼女がアタルヤを苦手だって言ったのはこの辺りも要因かもしれない。魔力を原動力にするアンデッドに身体の流れなんて関係ないし。
ノアも探りを入れられたとは察しているようだけれど、特に気分を害さずに大らかな様子を崩さないままだった。ただ今のやりとりでタマルに興味を持ったらしく、彼女を見つめる瞳に若干の熱がこもるのがわたしにも分かった。
「聞いた話だと祭りは明後日から開かれるらしいけれど、マリアは何か予定あるの?」
「いえ、特には。そもそも明後日は平日なのでお店の切り盛りをしないと」
「それなら明後日俺と付き合って案内してよ」
「へっ?」
いきなり爽やかで凛々しい笑顔をさせて一体何を言っているんだこの魔人は?
祭りは三日間で初日は駄目って言っているのが聞こえなかったのか?
「自営業なんだから自己都合で休業出来るでしょう。あんなにやり合った仲なのに」
「その表現誤解を招くんで止めてください。それに自分勝手にお店を閉めたんじゃあ信用を無くしてしまいます」
「いやーデートですかー。それじゃあこのあたしが一肌脱ぐしかありませんねー。助っ人で店番は頼まれますからどうぞマリアさんは楽しんでくださいねー」
「タマルさんも何言っているんですか!? 第一それ親切心からじゃあなくて絶対に協会支部の仕事さぼりたいだけですよね?」
急に好き勝手言い出してきたぞこの二人。それにしたって短時間の間で意気投合しすぎじゃあないだろうか? 既に手の施しようもないほど堀を埋められているような気もする。
と言ってもタマルが店番をしてくれるならそこまで店の信頼が損なわれる心配はないだろう。ここで強引に我を通した所でわたしの平常通りの仕事が一日増えるだけで、今後機会があるかも分からないノアと過ごす時間とは比べるまでもない。
「そんなに愛想良くないですからまともな案内は期待しないでくださいね」
「その点は些細な問題だと思うけれど、ありがとう答えてもらえて」
「どういたしまして」
ノアは朗らかな微笑を浮かべる。今のノアの姿は仮初の姿なんだけれど、デートなんて言われてしまったから妙に意識してしまうじゃあないか。ただでさえノアの顔立ちはおそらく大半の女性が好印象を持つと思えるほど整っているのに。
彼は無駄に鼓動が早くなって顔が紅潮してしまうとわたしをよそに、わたし達を過ぎていくとソファーへと腰を掛けた。完全に身体を預ける姿勢となり、顔は上を向いていた。彼はわたし達に向けて手の平を泳がせる。
「それじゃあ悪いけれど少しの間くつろがせてもらうから」
「すみませんがわたし達は下の店に行きます。何でしたら鍵をかけないまま出かけてもらっても構いませんので」
「いや、昼まで寝させてもらうよ。おやすみなさい」
言うが彼は目を瞑って全く動かなくなった。静かな呼吸の音がこちらまで聞こえてきそうだ。
タマルは軽くわたしの肩を叩くと階下を指差す。分かっている、そろそろ時間も時間だから本当に行かなくては。
朝からこんな風に思うのも変な話だけれど、良い夢を。
■■■
あっという間にその明後日になってしまった。その間特に何も起きずに日常が過ぎ去っていったけれど、そうした日記に書く事柄に困るぐらいの平穏こそ望むものだろう。その中でささやかな幸せを見つけていく生き方は決して悪くない筈だ。
祭りは朝からなので家近くの繁華街もいつになく賑やかな声が聞こえてくる。テラスから伺うと既に多くの人が往来しているようだ。少ししたら中央区の公爵邸では開催を宣言する式が開かれる筈だ。そうしたら本格的にお祭りの始まりだ。
折角ノアが誘ってくれたのだからさすがにいつもの学院のローブではまずいだろう。別に特に意識する必要は無いだろうぐらいは思っていたものの、そう言えば私服には公都に戻ってきてから買い込んだっきり袖を通していないと気付いた。基本的に休日でもローブ着ているしなあ。
とにかく繁華街で見かける女の子を参考にドレスと靴を合わせて、小物バッグにハンカチ等の必要最低限だけを入れて、帽子を被って、腕と首にアクセサリーを、と。さすがに耳にピアス穴を開ける勇気は無いので耳たぶに挟むイヤリングを付ける。
「ちょっと気合入れ過ぎじゃあありませんかー?」
普段は寝癖を整えるだけにしか使わない化粧鏡を前に紅を引いていたらタマルからこんな事を言われた。彼女の口調はからかいよりあきれ果ての方が色濃く出ている辺り、彼女の目からはわたしから並々ならぬ意気込みを感じるのだろう。自覚は無いけれど。
「どこまで手を抜いていいのか分からなくて、気が付いたらこうなってました」
「真面目ちゃんですねーマリアさんは。しかも普段使わない口紅とかファンデーション、香水まであるじゃないですかやだー!」
「学院時代におさがりもらったのはいいんですけれどずっとしまいっぱなしだったんです。こんな時こそ出番かと」
この辺りの話は本当だ。ダキア公都出身とは言え一般市民の出だったわたしにそんな女の美を追求する化粧品の類を購入する余裕は無い。ただ学院には裕福層が多く集っていたので、流行から外れて不要になった化粧品を譲ってもらったのだ。
ただわたしから要求した覚えは一切無い。あげると言われたから貰っただけの話だけれど、結果的に物貰いになってわたしにバテシバから苦言を呈された覚えがある。曰く蔑んだり嘲笑ったりする意図があるとか。別に何を言われても気にしなかったけれど、彼女の心配には感謝したものだ。
「あと帽子を被ると顔に影が差しますから駄目ですね、髪飾りに切り変えましょうー」
「帽子の方が好きなんですけれどタマルさんがそう言うなら。確か化粧机の棚にいくつか……」
「胸元は全部隠さずに少し谷間を露出してはどうですかー?」
「あいにく胸元を強調した私服は持っていません。鎖骨の下辺りが少し見える程度でいいんですよ」
全部終わった後は鏡の前には普段の自分からは想像も出来ない女の子がいた。化粧だってそう厚くは施していないのにいつもの自分より輝いて見える。実に自慢になってしまうけれど、誰でしょうねこの目の前にいる美人は? 詐欺もいい所だ。
わたしはその場で一回転してみる。重かったローブと違ってドレスのスカートが少し浮いた。鏡に向けて笑顔を作ってみる。猛烈に可愛い。普段見慣れない自分を目の当たりにしてしまったせいか無性に恥ずかしさが込み上げてきた。
「や、やりすぎちゃいましたかね……?」
「魔性の女ですねー。これからマリアさんは何人の殿方を弄ぶんです?」
「い、いや、わたしそんなつもりはありませんからね?」
「冗談ですよー。いい感じだと思いますよー。相手が人間じゃあない点に目を瞑ればですけれど」
それはあくまで関係が恋愛に発展した場合の話でしょう。普通に交流を深めたいなら別に種族が違ったって意思疎通さえ出来れば全く問題ない。それで突き抜けた結果がアダムとイヴなもので、正直平穏な未来が思い浮かべられないし。
「ではすみませんがタマルさん、今日はよろしくお願いします」
「このお礼は明日の大会であたしに勝利を譲ってくれればいいですよー」
「ふふっ、分かりました。観衆が違和感を感じない程度の所で負けますから」
「いや冗談ですってー、勇者一行として活躍したマリアさんがどれほどの魔導師か、対決の時が来たら正々堂々勝負するまでですから」
わたしはタマルに見送られながら家を後にし、一路公都北区でも有数の広場に向かう。
普段は人は多くても静かな時が流れる憩いの場も賑やかな祭典の場へと早変わりしていた。普段は見かけない出店や鮮やかな手並みを披露する芸人、聞き惚れる音を奏でる楽団など、そこでは全く異なる世界が広がっていた。
いつもよりはるかに多い人が集まる中で、こちらへ手を振ってくる純白の男の子は否応なしに目立っていた。わたしは彼、ノアの下に早足で駆け寄った。
「すみません遅くなりました。待たせちゃいましたか?」
「いえ、俺が早く来すぎただけだから全然問題ないかな。それにしても……」
ノアはわたしの頭からつま先まで視線を移動させ、感嘆の声をあげる。はて、化粧鏡で身だしなみは確認した筈だけれど、どこか汚れていたりゴミが付いていたりするんだろうか?
「可愛いと美しいがいい感じに調和していて素敵だよマリア」
「どうもありがとうございます。そこまで褒めていただけると朝から頑張ったかいがあります」
彼は可愛さと凛々しさを兼ね備えた笑みをこちらに送ってくるので、わたしは冷静に努めていつも通りに笑顔で返事をした。いけない、タマルに妙な事を吹き込まれたせいか変に意識してしまうじゃあないか。確かに日常でのノアには大変興味があったけれど、恋話とは違うでしょう。
「それじゃあ行こうか。さっき案内図貰ったんだけれど結構会場は広いみたい」
「基本的には中央区から東西南北四方に放射状に延びる街道とその脇の繁華街、そして近隣の公園や施設で行われるらしいですね」
昔は中央区だけだったけれど祭りのにぎわいを羨ましがった他の地区が便乗していき、現在のように公都全体が盛り上がるようになったそうだ。一日では絶対に見切れないほど拡大したのも三日間に渡って開催される要因なのかもしれない。
まずは広場を歩き回った。ノアは様々なものに興味を示して瞳を輝かせていた。見事な演奏を披露した楽団には拍手喝采を、出店の料理を口に頬張ったりもしたし、雑貨店であれこれ意見を交わしたりもした。彼は時折見た目相応の無邪気さが出はしたけれど、基本的に紳士的にわたしに接してくれた。
「ノアの姿って仮初なんですよね? どうしてそんな幼い姿を?」
「あいにく魔人の擬態は年相応にしかならないの。俺まだそんなに年重ねてないもので。人間換算にしたらマリアよりも年下じゃない?」
思い切って疑問を口にしたらノアは串刺しされた肉を口にしながらあっさりと答えてくれた。
人間換算って所が曲者だけれど、まだ大人になりきっていないのは分かった。とすると人間……と言うより魔族を装う彼の姿は彼が化けたら自然とこうなったものか? 意図的ではないのにここまで恵まれた容姿だとしたら末恐ろしい。
悪魔が人をたぶらかすって教会の教えもあながち間違いではないのかもしれない。
「ちなみに身体の構造は魔族そのものになっているから、人と交われば子も宿せるよ」
「えっ!? あ、いや、確かに……」
経典では確か神を裏切った堕天使達が人との間に子を成したって書かれていたような。ただ人の母が生んだその子は人ではなかったような……。
「勿論そちらの神の教えが記された教本のように魔物が生まれるばかりじゃあない。両親の特徴を受け継いだ全く新たな人が生まれるだろうね」
「そうなんですか?」
「だって人も天使も悪魔も等しく神の子でしょう。最も、神が己の肖と像で創り上げた人間から遠ざかるのは間違いないけれどね。そっちの教えでは堕落って言うんじゃあなかった?」
アダムとイヴの間で育まれた愛は勇者一行のわたし達が引き裂いてしまった。挙句二人は身も心も魂すら蕩け合って一つになった。けれどもし世界に許されたなら、愛する者と子供達に囲まれた慎ましくも幸せに包まれた家庭を築いたのだろうか?
……止めよう、今となってはもはや有りえたかもしれない可能性に過ぎない。そんな幻に想いを馳せても無駄だし空しいだけだ。
「だから魔王様が勇者を自分のモノにするって言い出した時は正気こそ疑ったけれど、別に間違ってはいなかったとは思う」
「人と魔とで愛し合える、と?」
「勿論解決しなくちゃあいけない課題は山ほどある。魔の者の方が人間よりはるかに長生きだから、例えその時は愛し合ってもいつか必ず片方が置いていかれる日がやって来る。そんな寿命差を題材にした小説がそっちにもあると思うけれど?」
「確かに同じ人類でも人間とエルフやドワーフとは寿命に差がありますけれど……」
それでもエルフはせいぜい数百歳、ドワーフだって百ちょいの筈だ。魔物ではない生粋の魔の者よりはるかに短い。
「けれど、愛の前ではどんな障害があっても軽く蹴散らしちゃうんじゃあないです?」
「あはっ、それは違いない!」
ただ、イヴを想うアダムだったら彼女が寿命を全うした後に後を追うかもしれない。いや、彼ほどの者ならイヴと同じように人として時を重ねられる方法があるかもしれない。他にもどんな難関が待ち受けていても二人はお互いだけを見つめ合って乗り越えていっただろう。
――それこそ、仲間だったマリア達や家族だった陛下達には目もくれずに。
「軍団長程の地位に上り詰めたノアだったら縁談話も出てるのでは? それとも恋愛相手が?」
「あー、確かに無駄に歴史を積み重ねた由緒正しき家柄の出だから、良家の者と縁を結べとは良く言われるかな。けれど無駄に高い地位にいるおかげでえり好みが出来るから、今のところは全部断っている」
「良い縁に恵まれていないんですか?」
「いや、単に俺が興味を持てない人ばかりだから。そうだね……必死なコとか可愛くない? とても太刀打ちできない相手を前にしても立ち向かっていく、みたいな」
「つまり自分より弱いけれど刃向ってくる反逆者みたいな女性が?」
「いや。己の全てをかけて挑んでくれて、一瞬であっても俺を超えてくれる女性がいい」
それはまあ随分と高い理想なものだ。魔王軍の軍団長と言えば魔の者の中で魔王に次ぐ存在、そんな彼に挑もうとする異性なんているわけがないだろう。ましてやその彼をほんのわずかな間でも抜き去って勝つなんて夢物語もいい所ではないだろうか。
と心なしか呆れてしまったわたしを、いつの間にか前に出ていたノアは見つめてきていた。深い蒼を湛えた瞳がわたしを捉えて離さず、まるで吸い込まれていく錯覚に陥ってしまう。
「そうだね……現時点ではマリアが一番好印象かな」
「ふぇっ!?」
わたしは驚きのあまりに手にしていた串刺し肉を取り落としそうになってしまった。自分でも頬が熱くなっていくのが実感できる。脚に力が入らなくなってきたので少し押されたらその場に尻もちをついてしまうだろう。
「な、な、何を言って……!」
「三か月ほど前の決闘を忘れたとは言わさないよ。マリアほど全力で俺にぶつかってくれた人は今までいなかったもの」
「……っっ!!」
いや待てあの時はプリシラとチラと一丸となって戦った……ってそれは第一戦目だ。二戦目だってプリシラとマリアが団結したからこそ……ってマリアはわたしだった。
つまり、今のノアにとってはわたしこそが一番好感度が高いと?
いや待て相手は人間ではない魔人だ。付き合いの良い友人ならともかくそこから関係を発展させる勇気はわたしには無い。……いや、イヴのように他の全てと替えてでも共に歩みたいほど愛しい存在と巡り合えたならそれだけの勇気と決断を持てるだろうに。
混乱するばかりの頭では何の判断も決断も出来そうになかった。
「ご、ごめんなさい。わたし、何て言えばいいのか分からない……」
「悩んで当然の大事だと思う。そんな軽々しく受け止めてもらったらむしろ失望するぐらいだ」
そう述べて彼はわたしに向けて手を差し伸べてきた。困惑するばかりのわたしでは彼の手に自分の手を恐る恐る乗せるぐらいしか判断出来なかった。
凍気を放ちわたし達を苦しめた筈の彼の手は、とても温かかった。
お読みくださりありがとうございました。