4話 本当の君(ベル)は
4話 本当の君は
拓人は夏美たちと別れ、教室に向かっていた。
その間、拓人は言いたいことを整理していた。オーランド・ベル。
君は、君だけはこの負の連鎖から脱出しないといけない。
そんなことを思いながら、拓人は教室のドアの前まで来た。
拓人「ふーー......」
俺は一回、深く深呼吸して、覚悟を決めた。
そして、教室のドアをゆっくりと開け、しっかりと足を地に着けて
オーランド・ベルが座っている机へと歩んだ。
ベル「あら? 朝峰拓人様ではありませんか。
どうしたのですか? わたくしに何か御用でも?」
拓人「ああ。とても大事な用があって、ここに来た」
ベル「あら、それでは是非ともお聞きしたいですわね? どういった御用件で?」
彼女の言い方は威圧的で、いかにも人を寄せ付けないような雰囲気を漂わせていた。
ホントは、彼女はこんなことをしたくないはずなのに......
拓人「オーランドさん。君は、オーランド財閥のところのご令嬢だよね?」
ベル「!? あなた、なぜそれを知っているのですか?」
拓人「当然だ、俺の父さんのとこと犬猿の仲の財閥の名前ぐらい
父さんがいつも言ってるから、いやでも覚えるよ」
ベル「......じゃああなたは、わたくしがなぜこの学園に入学したかも?」
拓人「ああ。だいたい見当はつく」
オーランドさんは、拓人が告げた言葉を聞いて、ふふっと笑い、
これまでかと思ったのか、拓人に全てを話し始めた。
ベル「もうこれ以上あがくのも無駄なようですわね......
わたくし、オーランド・ベルは、あなたの偵察を父様に命じられました」
やっぱり......っと、拓人は胸の中で呟く。
だとしたら、俺はやはり彼女を救いださなければならない。
拓人がそう思っているのも束の間、彼女は再び口を開いた。
ベル「わたくしにとって、父様の命令は絶対です。
父様はわたくしを育ててくださり、わたくしにいろんなことを教えてくださいました。
だから......わたくしにとって、父様はすべてなんです!
どんな扱いを受けようとわたくしは父様のためならなんでもやりました。
......けど、それももう無駄な努力でした......」
拓人「どうして?」
ベル「父様に言われたのです......
”お前への命令はこれで最後だ。朝峰財閥の次期責任者、朝峰拓人
の偵察だ。奴に近づいて色々と探りを入れ、私に報告しろ。
そしてもう一つ。ベル、お前はもうこの家に戻らなくていい。
日本での宿泊先と執事は用意してある。
お前はよく働いてくれたが、他の者たちと比べると劣っている。
そんな不良品は我がオーランド財閥には不要だ。
分かるな? では、もう2度と会うことはないだろう”と」
拓人「なっ......!?」
ベル「変な話ですよね、実の親子なんて感じていたのはわたくしだけで、
父様には、ただの物としか思われてなくて......
わたくし......悔しくて......
それで、ついあなたに当たってしまって......」
そういうと、彼女の瞳から涙が流れた。
拓人「俺と同じだな」
ベル「えっ......?」
拓人「俺も、父さんに言われたんだ。
お前は朝峰財閥の道具でしかないってね」
そう言う拓人は、どこか遠くを見つめて続けた。
拓人「俺、オーランドさんに初めて会って殴られたとき、
君の瞳が前に鏡で写ってた、俺の瞳と似ていたんだ。
だから、俺、オーランドさんを助けたいと思った」
赤裸々に告げた拓人の言葉はどこか重みを感じて、そしてどこか温かみを感じた。
拓人「オーランドさん。
君は物なんかじゃない、君は、俺の目の前にいる君は、
オーランド・ベルっていう一人の女の子で、お父さん思いで、
心優しくて、かわいくて、美人で!」
拓人の言葉に、吸い込まれていくような感覚に陥るベル。
拓人「だから!」
そういった拓人はすっと手をベルの前に差し伸べた。
拓人「もう抑えなくていいんだ。
本当の君のままでいいんだ、お父さんに気に入られるために
やってきた君じゃなくていいんだ!
それに文句をつけるやつなんて誰もいない、もしいたら、その時は
俺がそいつをぶっとばすから。
だから、もういいんだよ」
その言葉を聞いて、ベルは体にかかっていた重い何かが、
全てなくなり消えたような気がした。
ベル「いいの......ですか......?」
拓人「ああ、ほら」
そう言い、拓人はベルの前にもう一回手を差し伸べた。
そして、ベルはその手に自分の手を添えた。
拓人はその手をぎゅっと握って、その手を引っ張り、ベルの華奢な身体を、
拓人の胸に預けた。
拓人「これで君は今日から、本当のオーランド・ベルだよ」
ベル「は......はい///」
パチ......パチパチパチパチ!
拓人「ん? なんだ?」
クラスメイト「途中から聞いてたけど、朝峰くんかっこいい!」
クラスメイト2「オーランドさんそんなことがあったなんて、
私知らなくて、勘違いしてたかも......」
拓人「まさか、全部......?」
クラスメイト3「ばっちり聞こえてたわよ!」
拓人「/////////」
ベル「/////////」
拓人はここが教室だということに深く後悔した。
しかし......
クラスメイト「ねーねー! その髪の色ってもともとなの?」
クラスメイト2「その瞳の色とかももともと?」
クラスメイト3「今度一緒にお弁当食べましょう?」
クラスメイト「あーずるいーじゃあ私もー」
クラスメイト2「私も私も~~~!」
ベル「え、え~~~~~?///」
オーランドさんの周りには見事なまでに女子たちが群がっていて
色々と聞かれているが、オーランドさんは満更でもなさそうだ。
拓人「ま、これはこれでよかったか」
拓人はそう呟くと、影を潜めて教室を去った。
ベル「あれ? 拓人さんは......?」
教室を後にした俺は、廊下にいた真と夏美と合流した。
真「お! きたきた!
今、お前とオーランドさんの噂で持ち切りだぜ?」
拓人「噂!? なんか嫌な予感が......」
夏美「”朝峰くんがオーランドさんに愛の告白をした~”とか
”2人が付き合い始めた~”とかよ」
拓人「な、なんだと!?///」
拓人が、これはヤバいと冷や汗をダラダラと流していると、
ベル「拓人さ~~~~~~ん!!」
拓人「オーランドさん!? ど、どうしてここに!?」
ベル「もちろん、拓人さんに会いに来たために決まってますわ!」
拓人「決まってますわって......」
ベル「それでその、お願いがあってきたのですが......
その......わたくしのこと、名前で呼んでいただけませんか?」
拓人「え!? いや、その、まあ、いいけど......」
ベルからの突然の頼みに少しぎこちなく応答すると、
拓人は顔を赤くしながらこう言った。
拓人「ベ......ベル......」
ベル「拓人さんが私の名前を~~~~~!///」
拓人「呼べって言ったのはベルだろ!///」
ベル「はっ!? いけませんわ、わたくしったら!
そ、その......もう1つお願いがありまして......よろしいですか?」
拓人「あ~......うん、なに?」
そういうと、ベルは拓人に歩み寄り、肩に手を置き、
拓人の頬に優しい口づけをした。
拓人「//////」
夏美「は~~~~~~!?///」
真「こりゃ、また面白い展開になってきたね~(ニヤニヤ)」
ベル「わたくし、拓人さんのことが大好きになりましたわ!
これからよろしくお願いしますね? 拓人さん?」
拓人「ふぇっ!?//////」
女子に免疫のない拓人にとって、キスされたことさえ異常事態なのに、
そのうえ大きい胸を腕に当てられ、上目遣いで好きと言われ、
拓人の思考回路は完全にショートした。
拓人「ベル......いくらなんでもキャラが変わりすぎじゃ......?」
ベル「本当のわたくしは、こっちですわ!」
誇らしげに言うベルを見て、拓人と夏美と真は一斉にいうのであった。
「そんなのあり~~~~~?!」
そして、一歩ずつ、拓人の学園生活が動き始めた。
今回は長くなってしまった~~~~
それでも、書きたいことはかけたので満足です!
そして、今日ついに僕の小説にブクマがつきました!!
ホントに嬉しいです!ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします!