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3話  負の連鎖(スパイラル)

3話 負の連鎖スパイラル



 ---だから俺は嫌なんだ、財閥の御曹司なんて......

昔にもあった......こういうことが。

拓人「(俺が朝峰財閥社長、朝峰誠二あさみねせいじの実の息子で、

その跡取り、すなわち次期社長に俺がなるのは誰もがわかることだった。

そのため朝峰財閥を良しとしない財閥や会社から、俺と同い年ぐらいの

偵察者を送り込み俺のことを調べようというやつらを、

俺は何度も何度も見てきた)」


拓人「(そして、今さっき俺にビンタしたこの金髪少女もおそらくその偵察者に過ぎない。

彼女の瞳でわかった。昔にもあったといったが、送り込まれた偵察者というのは、

自分の意思とは違い上からの命令で動いている。

そのため、絶対に逆らえないのだ。

いくら自分が送りたいと思っていた生活も、

偵察に行ってこいと命令されたら、その瞬間自分が思い描いた生活は崩れ落ち、

ただひたすら俺を偵察し、情報を上の者に差し出し、任務が終わったら

すぐ戻ってこいと言われ......)」


拓人「(そんなの、可哀そうで悲しすぎて、無責任じゃないか......

だから俺は思うんだ、俺が朝峰財閥の御曹司じゃなかったらって、

そしたら、今までの偵察者もこの金髪少女も自分が思い描いた生活ができたのに。

こんな寂しいそうな瞳をしなくても済んだのに......)」



キーンコーンカーンコーン


金髪少女が拓人を殴って、教室全体が沈黙の中、チャイムが鳴った。

それと同時に、教室のドアが開き担任とみられる先生が入ってきた。

みな、一斉に自分の机に戻り、金髪少女もまた、自分の机へと戻った。

花山先生「え~コホン。今日からこの1年間、2組の担当をすることになった

花山香織です。よろしくお願いします。」

フワッとした雰囲気で、おっとりとした目が印象的な、まるで拓人らと同級生

なんじゃないかと見間違えるような先生だった。

花山先生「え~っと、今日はみんながみんなにはじめましてに近いと思うから

自己紹介してもらいたいと思います!」

新しいクラスになったことと今さっきのこともあったせいか周りのみんなは、

一言も発さず、ただひたすら俯いていた。

花山先生「きょ、きょうはみんな緊張してるのかな......?

で、では、さっそくではありますが、自己紹介をしてもらいたいと思います。

え~っと、じゃあ朝峰拓人君から!」

ギクッ! ただでさえあの時殴られた張本人がこの雰囲気の中でどう自己紹介をすればいいんだ。

くっ、こうなったらやるしかない、拓人!

拓人「え、え~っとその、はじめまして、朝峰拓人です。

趣味は読書で、特技は特にありません!これからよろしくお願いします!」


シ~~~~ン


え、えーーーーーーー!! 拍手無し!? 

教室に再び異様な空気が流れると、真ん中のほうから手と手をたたいてパチパチという

音が聞こえた。その音を出す正体は......夏美だった。

夏美が拍手し始めると、みんなも拍手し始めた。

拓人は夏美にありがとうと心の中でそっと呟いた。

そしてついにあいつの番がやってきた。

彼女は悠々と席を立ち、自己紹介をはじめた。

ベル「わたくしの名前はオーランド・ベルですわ! わたくしの父様から言われて

この花咲学園に入学いたしました。わたくしと同じクラスになれたことを、

幸運とおもってくださいな! それでは」


独特すぎる自己紹介を終えて、拓人は再認識した。

拓人「(やはりそうだ。オーランド、朝峰財閥とは犬猿の仲である財閥の名前は、

確かオーランド財閥だった。

となると、父様というのはおそらく財閥の社長、そしてその娘が

このオーランド・ベルということになるのか......

つまり、オーランド・ベルは令嬢で間違いないな。

やっぱり、そうだ。俺と彼女は同じだ---------------)」


夏美「は~~~緊張した~~~!」

真「そうか~? 俺は全然緊張しなかったぜ?」

夏美「あなたは美人さんと会わない限り緊張しないじゃないのよ」

真「そんなことねーよな? 拓人?」

拓人「............」

夏美「拓人?」

拓人「ん!? あ、あ~そうだな、」

夏美「......ねー、拓人また変なこと考えたりしてない?」

拓人「え?」

真「お前今変こと考えてたのか!?」

夏美「あなたは黙ってて!」

真「はい......(しょぼん)」

夏美「それで拓人? あなた、あのオーランド・ベルさんのこと、

助けたいとか思ってるんじゃないでしょうね?」

拓人「......」

図星だった。

夏美「やっぱり......ねー? あの子、あなたのこと殴ったのよ?

なんの理由もなく。それに、あなた方とはしゃべることはありませんわって

頑なに私たちとしゃべるのを嫌がってるし。

あなたがあの子を気遣ったところでなにもならないじゃない」

夏美の言ってることは何の反論もしようのない正論だった。

けど、俺にはやっぱり、オーランド・ベルをこの負の連鎖スパイラルから

救い出す責任がある。

それが俺の彼女に対しての罪滅ぼしだ。


拓人「夏美の言ってることは正しいと思う」

夏美「だったら!「それでも!!」

夏美の言うことを遮り、拓人が話を続ける。

拓人「それでも彼女は、君たちと仲良くなりたいはずなんだ!

一緒に話したり、一緒に笑いたいはずなんだ!

けど、俺のせいで彼女は、その気持ちを必死に抑えて......

だから、俺が助けないといけないんだ!」

夏美「......」

夏美は黙って下を向き、仕方ないわねとほほえみ、

拓人に行ってきなさいと背中を押した。

拓人「ありがとう! 夏美!」

夏美「......拓人は、いつもこうなんだから......」

拓人「ん? なんか言ったか?」

夏美「な、なんでもないわよ!

はやくいってきなさいよこのバカ!」

拓人「うん、それじゃ」

そうして拓人は教室へと向かった。



夏美「は~~なんで拓人はいつもあーなのかしら......」

真「女子にコンプレックスを抱いていて、女子を前にすると

まともに話せないのに、困っているところを見つけると、

居ても立っても居られなくなって、なんとか助けようとして、

......拓人らしいじゃねーか」

夏美「......そうね。今に始まった話でもないし」

真「あーそうさ。あいつはいつだってそうだった。

だから今回もあいつのやりてーように見守ってやろうぜ。

......友達として」

夏美「そうね、......友達として」

夏美は、そう言った瞬間胸がキュッと締め付けられるように感じた。














 











 

今回は少しシリアスシーンもありましたが、次話あたりから

拓人がベルを負の連鎖スパイラルから救いだそうと動き始めますね。

この話とは関係ないのですが、最近”最弱無敗のバハムート”を

アニメで見たんですけど、あれけっこー面白いですね(笑)

推しキャラはフィちゃんです!

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