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30話  第三回会話(コミュニケーション)部活動記録

30話  第三回会話コミュニケーション部活動記録



夏美たち「............」

只今絶賛昼休み中の花咲学園の4階、生徒会長室前の曲がり角にて、

夏美たちが体を必死に隠しながら生徒会長室の方を伺っていた。


茜「ねー、拓人と会長、本当に今あの部屋にいるの?」

美雪「はい、私、ばっちりこの目でご主人様と生徒会長を見ました!」

ベル「本当に拓人さんだったんですの?」

美雪「メイドの私がご主人様を見間違うようなことは絶対にありえません!」

えっへんというように誇らしげに胸を張る美雪。

その様子を見て呆れながらも、夏美はベルに向けてこう言った。


夏美「でもまあ確かに、美雪が拓人のことを見間違うようなことは確かにしそうにないわね」

ベル「確かにそうですけれど......1年の学級委員1人と生徒会長で

どういった話し合いがされていますの?」

核心を突くようなベルの質問に、皆も小首をかしげる。

初音「ボク、前生徒会長と拓人が仲良く話しているとこ、見かけたことあるよ」

ベル「ホントですの?!」

初音「ああ、この前の委員会で、終わった後に拓人が生徒会長に呼ばれて

なにか仲睦まし気に話しているのを見かけたよ」

茜「ああ、私も見たことあるわ」

初音の話を同調するように、3組の学級委員でもある茜が口を開いた。

茜「最初の委員会で、学級委員補佐が出席せずに学級委員だけが出席した委員会で、

終わった後に生徒会長が副会長も帰らせて拓人と二人きりにしたのよ」

美雪「そ、そんなことが......!?」

夏美「ちょっと怪しいわね......」


ガチャ......


茜「あ! 生徒会長室から誰か出てきたわよ」

茜のその一声で、夏美たちは一斉に物陰へと隠れ、出てきた人の姿を確認した。


音葉「拓人君、今日はわざわざありがとね?」

拓人「いえ、もうすぐですもんね。細川先輩も忙しいのに大丈夫ですか?」

音葉「私は大丈夫よ、それより......」

音葉の言葉が切れた次の瞬間。

音葉は倒れかけるように拓人の胸に体を委ねた。

その様子を壁際で見ていた夏美たちは「なー!?」というようなリアクションを取った。


拓人「せ、先輩?!///」

音葉「もぅ~二人きりの時は呼んでくれるって言ったじゃない......?」

拓人「だって、ここ廊下ですよ? 他の人に聞かれたらどうするんですか!」

音葉「あら、私は聞かれてもかまわないけど?」

拓人「っ......無茶苦茶な......」

音葉「そ・れ・よ・り、ね? 早く呼んで?」

上目遣いでそう言う音葉に、拓人は顔を赤く染めながら観念したかのようにこう言った。

拓人「......あ~もうわかりましたよ! お......音葉先輩///」

音葉「あははっ! やっぱり拓人君はかわいいね~」

拓人「からかわないでください!」」

音葉にそう言われると、再度顔を赤く染める拓人。

音葉「じゃあ、そろそろ時間だし、また今度ね”朝峰君”?」

拓人「はい......それではまた、”細川先輩”」

二人はお互いの名前を少し強調させながら、この場を去っていった。

そして、一方生徒会長室の前の壁際では、だいぶ黒い色をした邪悪なオーラが漂っていた。



拓人「......それで、どうしてこうなった」

只今の時刻3時半。

大抵の人は、自分が所属のクラブに参加したり、友達と帰り道にどこか寄り道している時間だ。

そして、今会話コミュニケーション部の部室でぽつんと座っている拓人も例外ではない。

いつもの部活動かと思う人もいるだろうが、あいにく、

拓人の正面に座っている人物が、「そうじゃない」と言葉じゃない何かでそう語りかけていた。

音葉「へ~ここが会話コミュニケーション部の部室か~」

拓人の正面に座っている人、すなわち細川音葉生徒会長は、部室の周りを顔を動かしながら見物した。


拓人「それで、どうして生徒会長がここにいるの?」

拓人はややむすっとした表情で机のそばで立っている夏美たちに視線を向けた。

夏美「今回は、そこに座っている鈍感変態拓人と向かいに座っている生徒会長に事情聴取します」

拓人「俺の説明どうなってるんだ!」

音葉「う~ん、なんか面白そうね!」

お互いに反応は違えど、とりあえずはこの場に集められた理由はなんとなくは分かったようだ。


拓人「それで、なにを事情聴取するんだ? 俺と先輩は何もしてないぞ」

ベル「いいえ、拓人さんと生徒会長には、色々なことを聞かないといけませんわ」

拓人の言葉にいち早く反応したベルは、やや強めな口調でそう言った。

拓人「まあいいけど......」

茜「それじゃあ早速、今日、拓人と会長はなんで”2人”で生徒会長室にいたんですか?」

最初の質問。

これはRPGで言うと、まだ雑魚モンスター並みの茜たちからの挑戦だ。

拓人は「そんなことか」とそっと肩を下すと、その時の様子を説明し始めた。

拓人「実は、再来週ぐらいに全委員の委員会があるんだけど、その学級委員代表に俺が選ばれて、

細川先輩に色々と何をしなければいけないのかとか聞いてたんだ」

そう言い終わると、拓人は音葉の方に視線を送る。

音葉「うん、私もその委員会の総合司会だから、色々と朝峰君に教えてたの。

ほら、朝峰君がしっかりしていてくれれば私も助かるから」

茜「そうですか......わかりました」

拓人「ほっ......」

音葉の素晴らしいフォローに、拓人は安堵の息を漏らした。

拓人は実は音葉がいらないようなことを言うんじゃないかと、心臓を高鳴らせていたが、

その予想とは打って変わってとても頼りになって説得性のある口調は、拓人を一安心させた。


初音「まだ終わらないよ、それでは次の質問」

拓人「あだあるのか?」

茜の質問で終わりだと勝手に思い込んでいた拓人は、次の質問があることに少し驚く。

初音「初めての委員会が終わった後、拓人と生徒会長は”2人”だけで残って何をしたいたのかな?」

拓人「(ギクッ!)」

次はやや中ボス並みの初音からの挑戦に、拓人は少し内心で「ヤバい」と感じた。

音葉「あ~あの時は......ふふふ、やっぱいいわ!」

音葉はそう言葉を言い切ると、何か企んでいるような笑みを浮かべた。

美雪「それでは、その時あったことは喋れないんですね?」

音葉「まあそうね、この話は朝峰君とヒ・ミ・ツだから!」

拓人「なっ!?」

拓人は音葉が落とした大きな地雷に気づくのに、少しばかり時間を要した。

この人は本当に俺を陥れたいのか?と、拓人は音葉のその笑みに恐怖さえ感じられた。


夏美「分かりました、それでは最後の質問です」

今の時点でもだいぶ危険な状態にいる拓人に夏美たちが追い打ちと言わんばかりに畳みかける。

夏美「あの時、何故二人はお互いのことを”拓人君”、”音葉先輩”と呼び合っていたのですか?」


............


拓人「(......終わった)」

最後のラスボス級の質問に、勇者朝峰拓人は無残にも心を打ち砕かれた。

まさかここまでの物を用意するなんて、拓人自身想像してもいなかっただろう。

そしてそれは同様、音葉もきっと顔を驚かせぶるぶると体を震わせて、

これからどう弁解するかとかあたふたしているはず......なのだが。

拓人が視線を音葉に向けると、そんな様子はどこにも見られず、

むしろとても落ち着いているようでこの場を楽しんでいるように見えた。

拓人が会心の一撃で怯んでいる間、音葉は席を立ちあがって夏美たちに向けてこう告げた。

音葉「どこでその言葉を聞いたのかは分からないけど、そう言ったいたのは間違いないわ」

夏美「だったら......!」

音葉が真実を告げ、夏美たち痛い視線が拓人の姿に一斉に集まった。

しかし、音葉は続けてこう言った。

音葉「けれど、それはあくまでその時だけだわ」

茜「っ......でも、最近拓人と会長は仲がいいじゃないですか!」

音葉「そうね、だから”昼休みの生徒会長室前”でそう呼びあったのもただのお遊びの一環ね!」

音葉が告げた言葉に、夏美たちは鳩が豆鉄砲を食ったかのような表情を浮かべた。

そして音葉は少し顔をニヤつかせ、拓人はというと話の展開についていけず一人ぽかーんとしていた。


夏美「な、なんでそれを!?」

音葉「なんでもなにも、壁際でするど~い視線を感じたものだから、それを見ていくと

3組の学級委員と拓人君の補佐役が見えちゃったからもしかしたら......ってね!」

音葉はそう言うと、てへっ! とばかりに舌をだした。

そしてそれを聞いた夏美たちは、さっきの拓人みたく会心の一撃を受けたようだった。

そして拓人は、相変わらず一人内容をつかめずにぽかーんとしていた。


音葉「どう? これでもう事情聴取は終わりでいいわよね?」

ベル「......今回は仕方ありませんわ......次は必ず!」

音葉「うん、楽しみにしているわ!」

ここで、音葉・拓人と夏美たちの事情聴取の終幕が宣言されて、拓人はほっと息を吐いた。

部室も和やかな雰囲気が戻った、その瞬間、バタン! とドアが開いた音が部室に響いた。

そしてそのドアのそばで立っていた人影は............


拓人「真! お前何してるんだ?」

真「ふっふっふ、この部活のメインディッシュの登場だ!」

そう言って高らかに笑うこいつ、じゃなくこの者は、言うまでもなく真である。

自分でメインディッシュと言っている時点で間違いだということを気づいてほしいという拓人の視線と、

夏美たちが真を軽蔑するような冷たい視線は、真には幸いにも気づかなかったようだ。

拓人「それで、どうしたんだよ、今日は漫画同好会なはずじゃ......」

真「ふっ......ついにできたんだよ......これが!」

そう言うと、真は高らかに一枚の紙を頭上にかざした。

初音「ん?......なんだいそれ?」

初音は首を傾げながら真に質問する。

真「これは......我がゲームマスターが作り上げた至高のゲーム!」


バンッ!


真が勢いよくその紙を置くと、そこにはくねくねした道とマス目と、色々な字が書かれてあった。

そして、その紙の一番上に書かれていたいわばタイトルには、こう書かれてあった。

拓人「”拓人を掴み取るのは私だ! 駆けぬけろ、一味変わった人生ゲーム!”?」

拓人がタイトルを読み上げると、この部室にいた皆の顔から困惑の顔が生まれた。

真「今から、”翌日拓人とイチャイチャしても文句を言われない権”

を懸けた勝負を、俺が作ったこの人生ゲームで争ってもらう!」


高らかとそう宣言した真に、全員の視線が集まった。


そして、拓人と真を除いた少女たちの瞳には、燃え盛る炎がうっすらと写っていた。
























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