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20話  ちょっとメイドな転校生

20話  ちょっとメイドな転校生


 桜咲き誇る5月、早々と始まりの4月が終わり、次の月へと移るここ花咲学園。

その学園内には、もう友達ができた人、できなかった人、楽しんでいる人、楽しんでいない人。

様々な生徒がいるが、だいたいはそれなりに友達ができ、楽しんでいるのではないだろうか。

それは、今机でグダーっと突っ伏しているあの男子生徒も例外ではないのだが......

夏美「どうしたの、そんなダルげにして?」

そんな男子生徒の前に、一人の女子生徒が歩み寄る。

拓人「......ん? ああ、夏美か、最近寝れてなくて寝不足なんだ......」

そう言うと、彼は夏美の前で大きくあくびをしてもう一回机に突っ伏した。

夏美「なにかあったの?」

拓人「ああ、いや。単純に俺が寝てないだけなんだ」

心配そうに聞いてきた夏美に、少し動揺して答えた拓人。

そんな拓人たちの様子を見て、夏美に負けじと三人の美人の少女たちが拓人のもとへやってきた。

ベル「拓人さん大丈夫ですか? わたくしでよければ一日看病いたしますけど......?」

拓人「結構です!///」

茜「べ、別に拓人のことなんか気にしてないけどさ......元気ないんだったらちゃんと寝なさいよね

じゃ、じゃないとこっちが元気でなくなるし......」

拓人「心配してくれてどうも」

茜「べ、別に心配なんかしてないもん///」

初音「うまく寝れないんだったら、ボクの膝の上で寝るかい?」

拓人「そ、それもごめんだ!////」

真「おお~またやってるね~」

そうして、そんな会話をしていたらあっという間に拓人の周りには美少女たちが集まっていた。

その光景を見て、真はニヤニヤしながら拓人の耳元で囁く。

真「おいおい~拓人、お前今日もモテモテだな~」

拓人「んっ......からかうのはよせよ」

真「鈍感ってのは限度があるってことを忘れんなよ?」

拓人「あぁ? 鈍感? 何が言いたい?」

真が話していることがさっぱりで、キョトンとした顔を見せる拓人。

真「お前な......拓人、お前知ってるだろ?

こないだ行われた1-2美少女ランキング」

拓人「ああ......なんか授業中にそんなもん回ってきたな」

真「それで、その結果知ってるか?」

拓人「いや、知らないな」

真「は~......ったくお前ってやつは」

拓人「な、なんだよ!」

真「たぶん、お前は驚くと思うが、1位~3位を占拠してるの、あいつらだぞ」

そう言い終えると、真は夏美とベルと初音の方を指さした。

真が指さしたのが夏美たちだったというのに拓人は驚きを隠せなかった。

拓人「そ、そうなのか!?」

真「ああ......順番から言うと、3位が初音で2位がベルで1位が夏美だな」

拓人「............」

拓人はその話を聞いて、少し嫌な予感がするのであった。

拓人「てことはつまりだ、このクラスの男子はあいつらに少なからず好意があると?」

真「ああ間違いない」

その真の返事に、拓人は頭を抱えるのであった。

拓人「それってつまり、いつもあいつらと一緒にいる俺は完全に敵意にされてるじゃねーか!」

真「まあ、そうだな」

その素っ気ない返事に、拓人はもう少し思いやりのある返事をしてくれと頭の中で思ったが、

今はそんなことより、夏美たちの人気度に少々驚かされていた。

拓人「(まあ確かに、夏美たちはモテるかモテないかでいうと絶対にモテるほうだけど......

ああ、男子からの視線が痛てーよ......)」

そんなことを思いながら拓人は肩をがっくりと落とすと、真は一息ついて、拓人の背中をポンと押した。

真「じゃあお前はあいつらと手を切るのか?」

煽るようなその質問に、拓人はすぐさま即答した。

拓人「んなわけない! あいつらは......俺の大切な友達だ」

真「......ん、お前らしい答えだ」

そう言って、真はもう一回拓人の背中を押してやると、他の友達のグループへと交じっていった。

一方その頃夏美たちは............

夏美「やっぱり最近あの二人仲良すぎだと思わない?」

ベル「ええ、わたくしと拓人さんとの時間が減ってこちらは大迷惑ですわ!」

茜「拓人って実は......そっちの趣味があったりして」

初音「だ、だったら! ボクがその趣味を治してあげる!」

夏美「それだったら私が治す、幼なじみのよしみだもん」

ベル「いいえ、いずれ拓人さんの人生のパートナーとなるわたくしが治すべきですわ!」

茜「わ、わたしも......拓人の力になりたい」

なにか大きな勘違いをしているのに気づいておらず、夏美たちは大きな決意をするのであった。



拓人「ただいま~」

美雪「おかえりなさいませ、ご主人様」

拓人が帰ってきたのを確認すると、美雪は嬉しそうに小走りに玄関へと走っていき、

まるでどっかのメイドカフェのようなやりとりをしたが、二人にはごく普通の会話なので

特に何も触れずに、そのまま拓人は家のソファに座った。

美雪「今日は桜様とは一緒ではないんですか?」

拓人「ああ、まあいつも友達と一緒に帰りたいだろ」

美雪「で、では......今日ご主人様は、誰と一緒にお帰りになったのですか?」

そういう美雪は、少し顔を俯かせてからそう答えた。

拓人「ん? えっと、夏美たちとだけど......」

その拓人の返事に、美雪は顔を勢いよくあげると顔を赤くしてこう言った。

美雪「なっ!? ご主人様! なんであの方たちと一緒に帰るのですか!?」

拓人「いやなんでって今までもそうだったんだから仕方ないだろ!」

美雪「い、いままでも!?......そうですか、わかりました......」

そう言うと、美雪はもう一度顔を俯かせてから、拓人に向けて告げた。

美雪「私、ご主人様と同じ学校に通います!」

その美雪の発言に、拓人はど肝をつかれた。

拓人「え、えーーーーーー!?」


拓人「......にしても、本当に学校に通うのか?」

美雪「はい、これ以上ご主人様の浮気を見てられません!」

拓人「浮気って......俺は誰とも付き合ってるわけじゃねーけどな......」

ついさっき決まった、と言っても美雪が行きたいと拓人に言っただけだが、

どうやら美雪の気持ちは本当のようだった。

拓人「まあでも、美雪が学校に行くって思ってくれて嬉しいよ、理由はよろしくないが......」

美雪「そうですか? これほどない志望理由だと思いますが......」

美雪は真剣な顔でそう言うので、拓人は自分がおかしいのかと考えたが、

やはり美雪の方がおかしいのだと再確認して、美雪の方をじっと凝視した。

美雪「......ご主人様、そんなにじっとみつめられると、私困りますわ///」

拓人「なに顔赤くしてるんだ全く、俺はそういう意味で見つめてたわけじゃねーよ」

美雪「では、私の容姿ではまだまだご主人様を欲情させるまでにはいきませんか......

わかりました、私もっともっと頑張ってご主人様が一目見るだけで欲情するような女性になります!」

拓人「ならないでいい!///」

また変なことを考えてるなと、拓人は深いため息をした。

ため息をした後、拓人はハッっと何かを思い出したかのように、顔を天井に見上げた。

美雪「? ご主人様、なにか思い出したのですか?」

拓人「ん? あ、ああ、まあな。美雪が学校に通うとなると、やっぱりあの人にも

言っておかないと美雪が怒られると思ってな......」

美雪「あ......」

その拓人の言葉に、美雪は申し訳なさそうな顔をして、拓人から視線をはずした。

拓人「......美雪? 俺は美雪がやりたいようにさせたいと思ってるよ?

俺は美雪のその......一応ご主人だからさ......///」

美雪「ご主人様......//////」

拓人のその発言が、美雪にはとても大きく胸に衝撃を与えたらしく、

美雪の顔はみるみるうちに赤くなっていった。

拓人「ということだから、俺今からあの人に電話かけてみるよ、

だから少しの間別の部屋にいてくれないかな?」

美雪「......わかりました、無理はなさらないようにしてくださいね、ご主人様」

拓人「ああ、わかってる」

そう言うと、美雪はこの場を去ってそのまま階段を上がっていった。

そして拓人は、ゆっくりと受話器の前に立ち、一度深呼吸をしてから手慣れた様子で

番号を打ち込み、もう何度目か分からないくらい同じように、いつもとは明らかに低い声色で

電話先の人に言った。

拓人「......もしもし、お父様」


拓人「もしもし、お父様」

誠二「おう、拓人か。私もちょうどお前に話があったんだ」

拓人「そうですか......こちらにも、少しお話がありまして」

拓人は必死に感情を押さえつけて、敬語に徹した。

誠二「わかった、仕事もあるから早めに済ませろよ」

拓人「はい」

手短にそう答えると、拓人は話すべきことを簡潔に言った。

拓人「美雪を、俺と同じ花咲学園に転入させてくれませんか?」

誠二「............」

その拓人の話に、少し黙る誠二。

拓人「あの、お父様?」

誠二「勝手にするがいい。あんなやつ、私のメイドではないのでな。

学校に転入しようがどうしようが、私には関係ない」

誠二はあっさりと、冷ややかな口調で拓人にそう告げた。

その言葉を受けて、拓人は自分の中のねじがはずれたように誠二に言い寄った。

拓人「お前はそれでも美雪の”ご主人”か!」

拓人は大きな声で、誠二に詰め寄った。

その大きさは、二階にいる美雪にも聞こえるような大きな声だった。

誠二「ふん、やはり化けの皮だったか......

まあ所詮、お前が俺に従するとは思っていない」

拓人「そんな話はどうだっていい、自分に仕えるメイドに、よくそんな無責任なことが言えるな!」

誠二「何を言っているんだ、自分に仕えるメイドには、自分に仕えてさえいればいいのだ、

学校に行きたいだの言語道断だ、そんなメイド、私に仕えてなどいない」

拓人「そんなメイドのこと、考えたことあんのかよ......!」

誠二「何を考えればいいのだ?

メイドとは主人とは絶対服従の関係だ、約束されたメイドの人生の何を考えればいいのだ」

拓人「......つくづくあなたには失望するよ」

誠二「だが、これだけ覚えておけよ、あいつは”お前のメイド”ではないとな」

その誠二の言ったことに、拓人は言葉を詰まらせた。

誠二「では、そろそろ私の話でいいかな?」

拓人「......どうぞ」

誠二「今週の週末、各財閥や会社の御曹司たちが集まるパーティーに、お前も出席してもらう。

朝峰の看板を背負っているのだ、くれぐれも恥をかかないようにするんだな、それでは」

そうして、拓人に一切の反論を言わせないまま、誠二は電話を切った。

拓人は一度ふりかざした拳を机に叩こうとしたが、そんなことをしたところでなにも起きないので、

その拳をそっと戻し、誠二の言葉を嚙み締めた。

「あいつは”お前のメイド”ではない」

過去に美雪を巡って何があったか、それは今はまだ話すことではないが、拓人はその言葉を

ちゃんと頭の片隅に入れなければと自分に言い聞かせた。

すると、そこに階段から降りてきた美雪が、そっと拓人のもとに歩み寄った。

拓人「ん、美雪......」

美雪「私は”拓人さん”のメイドですよ? 私のご主人様は、他の誰でもない拓人さん一人だけです」

美雪は拓人に体を預けてそう上目遣いで言った。そして、その美雪の瞳はなんとなく潤っていた。

拓人「うん、ごめんな美雪、ありがと。

ちゃんとあの人にも話をして、美雪が学校に行ってもいいって許可取ったから」

拓人は美雪を心配させないように、少しだけ話を盛って、負担を軽くさせた。

美雪「あ、ありがとうございます、ご主人様!」

拓人「うん、じゃあ色々手続きとかやろうか」

美雪「はい!」

そうして、拓人たちは美雪の転入手続きに追われるのだった。



花山先生「は~い、みんな集まった? 今日は転校生を紹介しまーす!」

男子A「男と女、どっちですか?」

花山先生「女子ですよ~!」

男子一同「おおお~~~~~!」

異様な盛り上がりを見せる朝のホームルームの時間、1-2に転校生が来るという噂が的中して

みんなもどこか気分が浮いている。

それは夏美たちも同様だ。

夏美「どんな人だと思う?」

ベル「わたくしは拓人さんとの時間を壊さない人であればどなたでもいいですわ!」

拓人「案外条件が簡単なんだな......」

初音「拓人は、どんな人だと思うんだい?」

その初音の質問に、拓人は口角を少し上げてから意味深な言葉を連ねた。

拓人「人一倍気を遣って、相手が落ち込んでるときは励まして、

いつも従順で......そういう人が来るんじゃないかな」

あまりにも具体的すぎる拓人のイメージ像に、夏美たちは少し疑問を抱いたが、

その疑問も、もう間もなくしてなくなるのであった。

花山先生「では、紹介します。冬野美雪さんです!」


ガラガラ

扉が開く音と同時に凛とした髪型とスタイルをした美少女が、教室にやってきた。

美雪「はじめまして、冬野美雪です。これからよろしくお願いします」

男子一同「お、おおおお~~~~~~!」

美雪が登場し挨拶すると、男子たちは一斉に喜びをあらわにして、ハイタッチしたり抱き合ったりした。

そんな男子たちには目もくれず、美雪はゆっくりと拓人の机の方に歩き出した。

美雪「はじめまして、ご主人様。これが新しい学校の美雪ですよ?

これからもよろしくお願いします」

そう言い終えると、美雪は自分の制服を拓人の前で見せた。

拓人「うん、良く似合っているよ。これからもよろしくね、美雪」

そう言って、拓人たちは人目をはばからずにお互いに微笑みあった。

その様子を見て、夏美たちはゆっくりと拓人の方へやってきて、

様々な心情が入り混じった笑顔で、拓人にこう告げた。

夏美「拓人~? 昼休みちょっと話そうね~?

なんで美雪さんが転校してきたの隠してたのかな~?」

拓人「い、いや! ほら、サプライズにしておきたくてさ......な?」

ベル「美雪さん......わたくしと拓人さんの時間は壊させませんわ!」

初音「これはなかなか強敵が現れたね......でも、ボクは絶対に負けないよ!」

美雪が来たことは、少なからずや夏美たちにとっても、拓人にとっても影響を与えたことなのだが、

それがいい方に転ぶか、悪い方に転ぶか、

それはこれから始まる長い長い学園生活を通して、分かってくるだろう............


一方そのころ茜は......

茜「なんで私だけ別クラスなのよーーー!」

一人教室で叫ぶのであった。












今回は美雪の転入編でしたね。

色々と誠二との関係性を書いていくうちに、拓人が可哀そうだなと思う所存です......

これからも応援よろしくお願いします!

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