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16話  朝峰家の珍事情

16話  朝峰家の珍事情



桜「それで、何をやらかしたんですか?」

学校からの帰り道、妹の桜が拓人にそう聞いてくる。

拓人「いや......そのなんというか、事故みたいなもので、

ベルと茜には迷惑かけちまったけど、俺は全然気持ちよかったなんて思わなかったぞ!」

桜「......要するに?」

拓人「はい、ベルと茜の胸を揉みました......」

桜の鋭い目線に、さすがにこれ以上はごまかせないと思い、拓人はあったことを話した。

拓人があったことを聞くと、桜は深いため息をついてから拓人の顔を見て、こう告げた。

桜「本当に兄さんはどうしようもないですね......」

拓人「もう、故意にやったことがないんだって! 信じてくれ~~!」

桜「わかってますよ、兄さんがそういうことはしない人だってことは」

そういうと、桜は嬉し気に顔を赤く染めて俺の前に立った。

拓人「......それより、もうみんないなくなったから、そろそろいいんじゃないか?」

桜「あ、そうですね......」

そう言い終えると、桜は少し俯いた後、顔を見上げて俺の手を引いた。

桜「それじゃあ早く行こ? 兄さん?」

拓人「お、おい! そんな引っ張るなって」

そうして拓人と桜は家への帰路に就いた。



もともと、桜は普通の言い回しで喋っていたのだが、財閥の御曹司の妹ということもあり、

父親がよく桜に外にいるときは丁寧な言い回しを心掛けるようにと口酸っぱく言っていた。

そのせいか、友達にも丁寧な言い回しをするようになり、桜は少しストレスがたまっていたので、

家にいるときや、俺と一緒にいるときは普通に喋るようにしようと、昔桜と約束した。

そのおかげのせいか、桜は少しではあるが、肩の荷が下りたような気がした。

家に着く間は、お互いの学校生活のことや、最近どんなことがあったかなど他愛もない話をしていた。

そうして、学校からおよそ15分、拓人らは自分らの家に着いた。

家の門を開け、玄関のドアを開けるとそこには......


??「おかえりなさいませ! ご主人さま、桜様!」

そこには、うすい黒色のセミロングな髪をした、可憐な少女がそこに立っていた。

拓人「ただいま美雪」

桜「遅くなってごめんなさい、美雪さん!」

美雪「いえいえ、こちらには何の問題もありませんでした!」

その可憐な少女、美雪は元気よくそう答えた。


その少女の名前は冬野美雪。

透き通るような肌となかなかの膨らんだ胸をもち、スタイルもよい。

朝峰家に仕えるメイドで、基本はメイド服を着ている。

拓人とは同い年なのだが、学校には通っていない。

法律的に、中学で義務教育課程が終わるので、一応合法なのだが......


拓人「な~美雪、やっぱ美雪も俺らと同じ花咲学園に入部しないか?」

拓人は荷物を床に置いて、ソファに腰を掛けて美雪にそう提案した。

美雪は拓人の荷物をそっと拾って、どこか寂し気な顔をした。

美雪「私もそうしたいのは山々です......しかし、私は朝峰家に仕えるメイド、

いかなる場合でもこの家は私が守っておかないとなりません。

学校に行ってしまえば、この家には守る人がいなくなります、なので......」

そう言う美雪の言葉を遮り、拓人は美雪に優しく包み込むように言った。

拓人「でも、美雪は学校に行きたいんじゃないのか?」

その質問に、美雪はゆっくりと首を縦に二度振った。

その反応をみて、拓人はさらに続ける。

拓人「だったら美雪のしたいようにすればいいさ、

父さんには俺から言っとくからさ」

美雪「ご主人様......ありがとうございます!

しかし、まだ私にもいろいろとしなくちゃいけないことが残っているので、

もう少し待っていただけると嬉しいんですけど......」

拓人「そっか、だったらその時が来たら言ってくれな?」

そういう拓人は、美雪に優しい笑顔を見せた。

その笑顔に思わず赤面して俯く美雪をみて、桜はすこし呆れながら呟いた。

桜「本当に兄さんはこれだから......」

拓人「ん? なんかおかしなことでもしたか?」

当然拓人自身は自分の思わせぶりな態度など気づいてもおらず、桜はひとつため息をついた。

美雪「それよりご主人様、入浴の準備がもう済んでいますが、どうしますか?」

拓人「ああ、じゃあ先にお風呂入ってくる」

美雪「わかりました! では、”お先に”行っておいてください!」

拓人「......?あ、ああ......」

美雪の意味深な発言を、拓人は気づけないでいたが、影で聞いていた桜は、

その発言の真意を、理解したのである......



拓人「ああ~いい湯だ~ 今日も疲れたな~......」


拓人は湯船につかると、今日の一日分の疲れをとるように脱力した。

では、拓人が今日の疲れをとっている間に、簡単に朝峰家について説明しよう。

今、朝峰家にいるのは、拓人・桜・美雪の三人だ。

時々、父親の誠二が帰ってくるが、その時には20人ものメイドが家に押し掛ける。

そして母親なのだが、母親は拓人が幼い頃に亡くなっている。

なので、基本的には拓人・桜・美雪の三人で生活している。

昔までは拓人と桜の二人での生活であったが、父親が心配して、メイドの美雪を住ませたということだ。

......おっと、そろそろひと騒動起きそうだ、では、またの機会に......


「失礼しまーーーーーす!」

拓人「うん!?」

ガチャっと突然風呂の扉が勢いよく開いた。

そしてそこにいたのは、美しい裸体をタオルで隠している美雪だった。

拓人「美雪!? なんで風呂場にいるんだ!?///」

美雪「いいえ? ご主人様のお背中を流すのは、メイドの仕事だと思いますが?」

そう言うと、美雪は艶っぽい笑みを浮かべ、拓人の体に歩み寄った。

そして、美雪は自分の体を拓人の体に押し付けて上目遣いでこう告げた。

美雪「さあ、はじめましょ?」

拓人「//////」

美雪の色っぽい攻撃に、終始押され気味の拓人。

そんなお風呂場に、大慌てで扉を開けてくる少女の姿があった。

その少女の姿は、言うまでもなく......

桜「兄さん! 大丈夫?!」

拓人「桜?! ちょ、桜! もう少し体隠せ......!」

その拓人の言葉を聞いて、桜は自分の体に目を向ける。

桜はタオルで体を隠していたのだが、慌てていたためか、そのタオルが桜の思っているよりも小さく、

本当に隠さなければいけないところしか隠せていなかった。

特に胸のあたりは危なく、もう少しのところで胸にある突起物が見えるところだった。

桜「ちょ!//////兄さんの変態!」

拓人「俺はなんも見ていない!」

妹に変態呼ばわりされ、即座に誤解だと言い張った拓人。

美雪「やはり桜様もいらしたのですね?」

桜「し、仕方ないでしょ! 兄さんが変な方向に行かないように見守りに来ただけです!///」

美雪「では、私は”本当”にお背中を流すだけですので、桜様はそこで見ていてくださいね?」

そう言うと、美雪は拓人を風呂場に置いてあるイスに座らせ、石鹸を泡立たせた。

桜「な///ダメです! 本当にお背中を流すだけでもダメです!」

美雪「しかし、そしたら私の仕事がなくなってしまいます......あ! それでしたら!」

ふといい考えを思いついたかのように、美雪は目を輝かせた。

美雪「では、二人でご主人様のお背中を流すのはどうでしょうか?」

拓人「なに?!///」

まさかの美雪の提案に、驚きと興奮を抑えきれない拓人。

しかし、桜はその提案になんの反論もせず、ただひたすら黙って考えていた。

そして、桜は顔を上げると、顔を真っ赤にさせて言うのだった。

桜「それだったら......別にいいです//////」

あまりにも予想外な言葉に、開いた口が塞がらない拓人。

驚いたのは美雪も同じだったようで、少々戸惑っていた。

美雪「簡単に拒否されると思いましたけれど、ちょっと意外ですね......」

桜「わ、私はただ! 兄さんのためにやるだけで......」

美雪「はい、それは私も同じです!」

その会話に、俺は次起こる展開が予想できてしまった。

桜・美雪「「それでは、お背中お流しします!」」



拓人「......何だろう、とてつもなく疲れた......」

結局、拓人は猛反対しながらも、二人からお背中を流され、理性をなんとか保っていた。

そのためか、お風呂に入る以前よりも疲れが増していた。

桜「は~い、兄さん、美雪さん~ご飯ですよ!」

桜の掛け声と共に、調理された食べ物が並んでいるテーブルの椅子に腰かけた。


「「「いただきまーす!」」」


三人は揃えて言うと、食べ物を頬張り始めた。

拓人「これうまいな! やっぱり桜の作る料理はどれもおいしいよ」

桜「ふふふ、ありがと、兄さん」

今並べられている料理は、全て桜が作ったものである。

母親が死んで父親も家にいなかったため、昔から桜が料理を作っている。

かれこれ5年は桜が料理をしているため、味付けなどは完璧である。

美雪「......確かに桜様の料理はうまいですね......」

美雪はどこか悔しげがあるような口調でそう呟いた。


夕食を終え、三人はソファに座り、仲良くテレビを見ていた。

するとそこに、プルルルと家の電話が鳴った。

その音に、美雪が立って出ようとしたが、拓人はそれを静止して自ら電話に出た。

拓人「もしもし、朝峰ですけど......」

??「おう、拓人か」

その声に、拓人は聞き覚えがあった。

拓人「......なにか用ですか、”お父様”?」

拓人の皮肉交じりの呼び方に、桜と美雪も気づき、心配そうに拓人の方を見つめる。

誠二「明日、そっちに寄るから、家族団らんにどっか食べに行かないかと思ってな」

淡々としゃべる父親の誠二に、拓人は少々怒りを覚えながら声を荒げた。

拓人「......母親を見捨てながら、よく”家族”なんて口にできますね」

桜「ちょっと兄さん!」

美雪「............」

ずっしりと重い雰囲気が、大きいリビングに漂った。

誠二「拓人、お前高校に入ってからずいぶんと偉くなったな。

父親に向かってどんな口をきいている!」

拓人「あいにくあんたのこと父親なんて思うことは、とうの昔に捨てました」

普段温厚な拓人が、ここまでとげのある言葉を口にするのは、たぶん相手が誠二だからだろう。

母親を見捨てた......その言葉に、どれほどの辛い過去を持っているのか、

それはのちのち分かって来るだろう。

誠二「......まあいい。明日そっちに寄るので、楽しみにしておくがいい」

そして、ガチャっという音と同時に電話は切れた。


桜「兄さん......」

美雪「ご主人様......」

二人は俺が電話が終わったのを確信して、心配した顔で俺に寄ってきた。

拓人「ごめんな、少し感情的になりすぎた......

あと、明日父さんが家に来るから、料理はしてなくていいからな」

拓人はそんな二人の頭にポンと手を置いて、先に部屋に行ってると、階段を上がった。


拓人「(明日の学校は楽しめるのかな?)」

そんな不安な気持ちを胸に、拓人は深い眠りについた。









今回はメイドである美雪の登場回でしたね!

あと、明日は予定があるので投稿ができないと思います。

楽しみにしてくれている方、すみません。

これからも応援よろしくお願いします!


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