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14話  俺の部活は会話(コミュニケーション)部!?

14話  俺の部活は会話コミュニケーション部!?



はーっ......。


拓人の深いため息が、朝のうるさい教室に響く。

夏美「どうしたの? そんなため息ついちゃって」

拓人「いや、今日から仮入部期間が始まるだろ?

それでどの部活に行こうか迷ってるんだよな......」

夏美「あれ? 拓人って中学の時は部活入ってたんじゃないの?」

拓人「うん......まあ入ってたけど、最後の方はほとんど帰宅部だったしな~」

拓人はそう言うと、また何部入ろうかと頭を悩ました。

そんな拓人を見て、夏美はすこし照れくさそうに聞いた。

夏美「その......もし拓人が入る部活がないんだったら、一緒に部活を創らない?」

拓人「え? それって、俺たちで創部するってことか?」

夏美「そう! どう、やってみない?」


拓人「(正直、俺は入る部活なんて全然考えてなかったし、入る気もなかった。

だけど、さすがに高校生で帰宅部はと思い、なんか緩い部活でも入ろうかと思っていた。

けど、”創部”となったら話は別だ。

自分でやりたい部を創って、自分たちが好きなことができる。

そんなの最高じゃないか!)」


夏美の提案を断る理由もなく、俺は二つ返事で夏美に答えた。

拓人「ああ、よろこんでやるよ!」

その返事を聞くと、夏美は拓人の返事を聞くや否やパアァっと顔を晴らさせた。

夏美「ホント?」

拓人「ああ、それで、何部にするんだ?」

その質問に、夏美は一度下を向いて、その後すぐに拓人の顔の方を向いて拓人に迫って言った。

夏美「会話コミュニケーション部!」

拓人「......え?」


拓人は夏美が言ったことをいまいちよく理解できなかった。

会話コミュニケーション部ってなんだ?

その問いを、俺が夏美にぶつける前に夏美が言ってくれた。

夏美「表向きは友達を作りたい、もっと話すのをうまくなりたいっていう人のための部活だけど、

本当は......拓人の女子嫌いを治すための部活よ!」

その発言に、拓人は驚嘆した。

拓人「な、なに~~~~~!?」

その悲鳴で、教室にいたクラスメイトの全員が、拓人の方に視線を向けた。



拓人「それで......本当にその会話コミュニケーション部を創るのか?」

夏美「うん! これは拓人のためでもあるんだから協力してね!」

拓人「まあ~、とりあえずは協力するけど、部員は足りんのか?」

夏美「あ......」

この花咲学園は、新しく創部するときは、部員は最低でも”3人”はいないといけない。

それに加えて顧問になる先生を選び、その顧問の先生から創部の許しを得ないと、創部には至らない。

大抵の場合は顧問選びで躓き、その顧問選びから次の段階のお許しが出るのもより一層難題だ。

こんなにも創部への道は険しいのに、本当に会話コミュニケーション部で創部できるのだろうか?

拓人はそんなことを思いながらも、夏美の決心を変えたくないと思わず口にはしないでおいた。


拓人「じゃあベルたちを誘ってみるか?」

その拓人の発言に大慌てで反論する夏美。

夏美「ベ、ベルたちは他の部活に行くんじゃないかな!?」

夏美の言動は明らかに”不審”そのものだった。

それはどこか”痛いところ”をつかれたような......

拓人「まあ確かにあいつらも入りたい部活はある程度決めてるかもしれねーな~」

夏美の言葉に納得する拓人を見て、そっと安心して息を返した夏美。

拓人「う~ん......じゃあまあとりあえず真誘うか」

いざという時の真と言わんばかりに、拓人は真を誘おうと提案した。

その提案に夏美は少し考えてから、まあ真だったらと一言呟き、拓人の提案に賛成した。

拓人「......というわけで真もこの部活に入ってくれねーか?」

真「う~ん......悪い、無理だ!」

予想していた答えは別の返答が来てついつい驚く拓人と夏美。

拓人「なんでだよ! お前、他に入りたい部活でもあんのか?」

真「ああ、漫画同好会に入りたいと思っている!」

その真の宣言に、拓人は思わず絶句した。

夏美は知らないようだが、漫画同好会とは、文化祭の時だけ部員で漫画を描いて

普段はずっと漫画を読んでいるという部活だ。

さらにその漫画の内容も、バトル系や青春系ではなく、ただのエロ漫画なのである。

そんな部活に入ろうとしている真に、送る言葉も見当たらない。

夏美「それで、真は会話コミュニケーション部には入れないの?」

真「ああ、俺は漫画同好会の方に入るからな」

夏美「兼部も無理?」

真「う~~~ん、やっぱ......」

真の言うことを遮るように、俺はちょっと待ったをかけた。

そして、真と肩組みをして、夏美から少し距離を置いて小声で真の耳に話しかけた。


拓人「なあ真、お前この間あのAV女優のDVDが欲しいって言ってただろ?」

真「ああ! あの巨乳で男たちを誘惑するあのAV女優か!」

拓人「うん、まあそれはどうでもよくてだな......

どうだ? ここはひとつ手を打たないか?」

真「......何が条件だ?」

拓人「俺がそのAV女優のDVDをお前に買ってやる代わりに、

お前もこの部活に入れ。大丈夫だ、本当に入部届に書いてくれるだけでいい、どうだ?」

拓人の提案に少しばかり考え込む真だったが、少し考え終えた後、真は満面の笑みで拓人にこう告げた。

真「その提案......のった!」

拓人「おっし! さすが真だ!」

真のオーケーに単純に嬉しがる拓人。

そして好きなAV女優のDVDを買ってくれることに嬉しがる真。

嬉しがる二人が互いに肩組みをしながら意気揚々に体を右左に揺らしてる姿を、

夏美は見ながら”カオス”だと思っていた。

そして、笑顔で帰ってくる二人に夏美は少々寒気を感じながら、何をしていたのかを聞いた。

拓人「まあ~内容は置いておくとして、真がこの部活に入ることになった」

真「おう! 拓人と夏美の頼みなら断る理由もない!」

夏美「今さっきは断ってたじゃないのよ......」

その夏美の発言を、二人はわざと聞いてないふりをして、次のステップへと向かった。



拓人「さてと......今度は顧問の先生選びだが......実際ここが一番の鬼門だ」

夏美「そうね、ここで失敗したらもう創部はあきらめるしかないし......

誰か気軽に頼める先生いないのかなぁ?」

真「ああ、それならいるじゃん、すぐそこに」

そうして真が指さした先には、俺らの担任である花山先生だった。

真「お~い! 花ちゃん先生~!」

真はとてもフレンドリーに花山先生のことを呼んだ。

花山先生「もう、山野くん! 私は先生だから花ちゃん先生はやめなさい?」

真「は~い、花ちゃん先生!」

花山先生「もう! だから花山先生だってば!」

俺と夏美は何を見せられているのだろうか、少し困惑していると、

花山先生がこちらに気づき、先生の落ち着きを取り戻した。

花山先生「こ、こほん! それで、何か私に用ですか?」

その質問に夏美がすかさず答える。

夏美「はい、私たち新しい部活を創部しようと思ってて......

その部活の顧問の先生になっていただけないでしょうか?」

花山先生はしばらくして顔を俯かせて体を少しずつ震わせていた。

その様子を見て、俺と夏美と真はゆっくりと息を呑んだ。

そして、花山先生がすっと顔を上げると、目を涙目になりながら夏美の手を握って

興奮した面持ちでしゃべり始めた。

花山先生「私、部活の顧問になるのが憧れだったの!」

その言葉に、俺らは首を傾げた。

花山先生「今年で教師生活2年目なんだけど、まだ部活の顧問はひとつもなくて......

部活の顧問になるのを密かに憧れていたの!」

その言葉を聞いて、俺らは一斉に顔を見合わせた。

拓人「それって、つまり......!」

夏美「創部してもいいってことですか!」

花山先生「はい! よろこんで顧問になります!」

真「さすが花ちゃん先生!」

俺らはお互いにハイタッチして、素直に正式な部活になったことを喜び合った。


そうして、拓人らは会話コミュニケーション部を創部させ、部活動が始まった。


花山先生「では、ここが部室ね、何かあれば職員室で私を呼んでね?」

花山先生に案内されて、俺らは会話コミュニケーション部の部室に着いた。

部室に着くや否やすぐさま俺はすぐに席に座って一呼吸ついた。

拓人「いや~それにしても本当に創部できるとは思わなかった」

夏美「うん、私も! でも、創部できて本当に良かった~」

真「おっと、悪い。そろそろ漫画同好会が始まるから俺はここで......

あと拓人! ちゃんとあの約束覚えてるよな!」

去り際に真がにやにやした顔で拓人に問い詰めた。

拓人「ああ、分かってるって」

俺の返事を聞くと、明日が楽しみだな~っと独り言を呟きながら、スキップして部室を出て行った。

夏美「ね~その”約束”ってなに?」

拓人「んあ!? え、え~っと......男の約束ってやつだ!

だから口外はしてはいけないことになってる」

夏美「ふ~ん......」

俺の曖昧な答えにふてくされる夏美。

そんな夏美の機嫌をとろうと、俺は夏美に気になってたことを聞いた。


拓人「ところで、この部活の部長の欄は誰を書いたんだ?」

夏美「一応私にしておいたわ、拓人にした方が良かった?」

拓人「あ~いやいや、俺はそう言うのは柄じゃないから逆に良かったよ」

そう言い終えると、部室にはしーんと静寂が広まった。

夏美「へ、変だね! 会話コミュニケーション部なのにこんなに静かなんて......」

拓人「はは、そうだな......もうちょっと部員が増えたらいいな!」

笑顔でそういう拓人に、夏美はすこし俯き加減でこう告げた。

夏美「......私は拓人と二人きりが......いいかな......」

拓人「え?......」


俺は夏美の言っている意味が良く分からなかった。

二人きりって......それはただ単純に俺の女子嫌いを治すためになのか、

それとも............


夏美「拓人......」

そう言うと、夏美は席を立ちあがり拓人の席の前に立ち、拓人の肩に両手を乗せた。

拓人「///」

夏美「私......拓人だったら......いいよ?」

その発言に、俺は頭が真っ白で考えることができなかった。

夏美の顔が徐々に徐々に近づいていき、もうそろそろお互いの唇が触れ合いそうになった瞬間、

がらがらと、勢いよく部室のドアが開き夏美と俺は反射的に離れた。

そのドアを開けた者の面影に、俺と夏美は見覚えがあった。

ベル「拓人さん! 今夏美さんと何をしていましたの!?」

茜「拓人~~あなた夏美と二人きりをいいことに......!」

初音「ボクも今の光景は見逃せないな」

その面影とは、案の定、ベルたちであった。

拓人「ち、ちがうんだ! これはその、演技の練習というか......」

拓人の下手すぎる嘘にため息をつく三人。

ベル「まあ、それはあとでじっくり話を聞くとして......

夏美さん! これはどういうことですの!?」

その質問に、夏美は冷や汗をかきながら必死にこの場に合う言葉を探していた。

茜「新しく部活を創ったんだってね」

初音「今さっき真君に聞いたらあっさり暴露していたよ」

夏美「ま、真~~!」

夏美は真の名前を小さく叫んでからベルたちに説明した。

夏美「......この部活は、拓人の女子嫌いを治すために創ったの......

だから、別に私が拓人と二人きりになりたいとか、そういうことで創ったわけじゃないから!」

夏美はぐったりと肩を落とし、これからの展開を先読みした。

ベル「でしたら、わたくしたちもその活動に協力しますわ!」

そういうと、ベルたちは入部届を胸の前に掲げて堂々と夏美の前に見せた。

その入部届には、”受理”という判子が押されていた。

ベル「ということで、これからよろしくお願いしますわ!」

茜「特別に拓人のために協力してあげる!」

初音「一緒にボクと頑張ろうね!」


おそらくこの三人は花山先生に入部届を出して、晴れてこの部活に入部したのだろう。

なぜ夏美があんなに悔しがってるかは知らないが、とりあえずこの部も部員が増えて素直に嬉しかった。

拓人「ま、これからも頑張るぞ!」

ベル・茜・初音「「「おーーーう!」」」

拓人の掛け声に、夏美を除く三人はノリよく応えた。

一方そのころ夏美は......

夏美「あともうすこしだったのに......

でも、絶対にあきらめないんだから!」


一人、ある決心をしているのであった。























今回も読んでくださり、ありがとうございます!

ブクマ、ご感想、本当にありがとうございます。

これからも応援よろしくお願いします!


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