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12話  私が私でいられる理由

12話  私が私でいられる理由



は~......なんで拓人はいつもああなんだろ......

今教室の真ん中で三人の美少女と戯れているのは、私の幼なじみである、朝峰拓人だ。

拓人とは小・中と同じで、家も近いので昔からよく一緒にいた。

そんな拓人が、最近女の子をたぶらかして、良くこうやって教室でイチャイチャしている。

拓人は昔からモテないほうではなく、むしろモテていた。

ま~あの性格なので仕方ない。

けど、さすがにこんな熱烈なモテ方はこれが初めてだ。

ベルはいつも抱き着くし、茜はなんだかんだいつも拓人にベッタリだし、

最近では初音も加わってきて、ますます熱烈になってきた。


私は、というと......昔と全然変わっていない。

拓人のそばにずっといるのに、ずっといるからこそ、変われなかった。

......だから、ああやって自分をアプローチしているベルたちが羨ましい。

そもそも、拓人は私のこと、ちゃんと”女”として見ているのかな?

拓人は”あの時”から女子とまったく接しようとしなくなった。

それに私も例外じゃなかった。私との接触を頑なに拒んだ。

その時はなんとか頑張れてこのように普通に喋れるようになったが、

真に聞くと、女子で普通に喋れるのは私以外いないらしい。

それを聞いて、私は嬉しい感情と同時に、複雑な感情にもなった。

嬉しいのはもちろん、私が拓人にとって特別だと思えたこと、

複雑なのは、私は拓人の”幼なじみ”だけであって、”女”としては

見られていないんじゃないか思えたことだ......

けど、今更それを考えたって仕方ない。

そろそろ私も......自分の気持ちに正直にならなきゃいけないと思ったからだ。

拓人が私を守ってくれたあの日からずっと............



ーーーーー小学校4年生の時---------------


あれは確か、掃除の時間。

意地悪な男子たちが、私にちょっかいをかけてきて......

男子1「おい! お前、いつも拓人といるよな!」

夏美「うん、そうだけど......それの何が悪いの?」

男子2「なんで女子が男子と一緒にいるの?

あ! もしかして拓人のこと好きなの? 絶対そうだ!」

男子1「うわー! ラブラブ~~!」

夏美「ち、ちがう! べ、べつに私と拓人はそんなんじゃ///」

男子2「あーー、顔赤くなってる~!」

男子1「これは拓人に報告してあげないとな!」

夏美「や、やめて! 本当にそんなんじゃないから!」


男子たちが、私にいじわるしてきてて、私も泣くのを必死にこらえながら耐えていた。

周りもみんなも、ただこっちを見ているだけで、誰も助けてくれなかった。

そんなところに、あなたはやってきた。


男子1「お~! 夏美の王子様の登場だ!」

男子2「拓人~~お前夏美のことどう思ってるんだ?

夏美はお前のこと好きだってよ~?」

夏美「わ、私はそんなこと一言も!」

男子1「女子は黙っとけよ!」

そう言って、男子1は私を突き飛ばした。

夏美「いたっ......!」

男子2「夏美と拓人はラッブラブ!」


男子2の掛け声と共に、周りの男子もその掛け声を合唱していく。

私は拓人に迷惑かけた......そんな罪悪感に苛まれて、涙をぽつぽつと流していた。

そこに、あなたは私の前に立って言ってくれた。


拓人「......れよ」

男子1「え? なんだって?」

拓人「夏美に謝れよ! 夏美を突き飛ばして、いじわるして、泣かせたこと謝れよ!」

そういうと拓人は男子1に掴みかかり、そのまま顔を一発殴った。

男子1「いて......! お前......殴ったな? おい! 誰か先生呼んで来い!」

そう男子1が言うと、男子2がすぐさま教室を抜け出し先生を呼びに行った。

そして、男子2が先生を呼びに行ってから間もなく、すぐさま先生が教室に入ってきた。

先生「こら! あなたたち! 一旦落ち着きなさい!」

そんな先生の言葉なんて聞きもせず、拓人はさらに男子1の胸倉を掴んでこう言った。

拓人「謝れよ! 夏美を泣かせたこと、謝れよ!」

男子1「う......!」


その後、他の先生たちも教室に入って来て、拓人と男子1の間に入ってなんとか事を収めた。

結局、今回の事件は拓人が全面的に悪いということが先生と見ていた生徒の間で決まって、

拓人は2週間の罰掃除を余儀なくされた。

その時見ていた周りのクラスメイトは、男子1や男子2のことが怖くて、嘘の供述をしたらしい。

私はそんな結果に納得いくはずもなく、何度も何度も先生に抗議したが

拓人がそれを受け入れたと聞いて、その抗議は実らなかった。


私が抗議をしていた職員室から出たすぐのところに、男子1が突っ立っていた。

男子1「ちょっと......いいか?」

夏美「......うん」

その男子1の声は、あの時の声とは別人のように弱弱しく、細々しかった。

男子1「その......あの時は本当にすまなかった!」

夏美「え?」

彼はまるで人が変わったように正直に謝りはじめた。

男子1「あの後、俺がやったことが許されることじゃないと思って、

それで、先生たちも俺を殴った拓人を犯人にしたて上げて......

俺......あいつに謝りに行ったんだ......そしたらあいつ、

”俺じゃなくて夏美に謝りに行け、そうしたら俺もお前のことを許す”って」

夏美「!?......」

男子1「だから、本当に悪かった!」

夏美「............」


私はその時、彼の謝罪よりも拓人の寛容さに驚いていた。

本当だったら、拓人は何も悪くないはずなのに罰掃除をやらされて......

その原因の私が拓人から嫌われてもおかしくないのに......

なんで、拓人はそんな優しいの?

どうして拓人はそこまで、自分より相手のことを思いやれるの?

私は男子1の謝罪を承諾して、大急ぎで教室へと向かった。

そこには、一人で掃除をやっている拓人の姿があった。


夏美「拓人......」

拓人「あ、夏美......どうしたの?」

拓人は優しく微笑み、掃除をする手を止めた。

夏美「今さっき......男子1から謝られた」

拓人「......そっか、だったら俺も許すよ」

夏美「拓人は......私のこと、嫌いになった?」

拓人「そんなわけないよ、夏美は俺の大事な友達だから」

夏美「......拓人は優しすぎだよ」

拓人「そうかな? でも、夏美が無事でよかっ......って夏美!?」


私は、拓人の前で大粒の涙を何粒も何粒も流していた。その涙は留まることを知らなかった。

こんな姿、拓人に見られて......もう、拓人に合わせる顔がないと思った瞬間、

拓人は急に私を抱き寄せた。


夏美「!?//////」

拓人「夏美が泣いてる姿、他の人に見られちゃうから」

そう言って私の顔を胸に預けさせて、他の人から私の泣き顔を見られないようにしてくれた。

拓人「だから、泣き止むまで泣いていいよ」

拓人の声はどこまでも優しく、気分が落ち着くようにそう言ってくれて、

私は、拓人の胸の中で涙が枯れ果てるまで泣いた。

その間、拓人は周りからの声を無視してひたすら私の顔を見られないようにしてくれた。

そんな拓人を、今度は私が守る番だ。

いつからか、そんな感情が芽生えていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


まあ、そんなことがあって、拓人を想う気持ちも少しずつ変わってきて今に至るのだが......

ベル「拓人さん? 今日はわたくしと一緒にランチタイムを過ごしましょう?」

茜「ずるいわよベル! 拓人はわたしと一緒にお昼を過ごすのよ!」

初音「あの二人は置いておいてボクと一緒にお弁当を食べよう、拓人!」

拓人「いやいやいやいやいや! みんなで一緒に過ごそう、な?」

まあ見ての通り、今やすっかり美少女の尻に敷かれている拓人であるが、

昔の面影はないわけではなく、ちゃんと昔のままの拓人でもある。


拓人「夏美! 一緒に弁当食おうぜ!」

例えば、こうやって私を誘ってくれて、無邪気に笑うその顔とか......

夏美「......うん!」

たまには......いいよね?

そう思い、夏美は拓人の腕を取りこう告げた。

夏美「いつも......いつもありがとね!」

拓人「え、どうしたんだ急に......?」

いつもはこのように素直なことは言わない夏美なので、

あまりにも予想外すぎて思わず恥ずかしくなってしまう拓人。

その拓人の姿を見て......

ベル「拓人さ~~ん!!」

茜「夏美に照れてるんじゃないわよ!」

初音「拓人は夏美みたいに豊満なスタイルな女の子が好きなんだね!」

拓人「ご、誤解だ~~!」

結局いつものパターンになる光景を、夏美は幸せそうに眺めていた。

そして、夏美はその渦中の拓人を見て思うのだった。


拓人が私を守ってくれたあの日からずっと、

拓人のことが......大好き。





















今回は夏美の過去回でしたね

拓人もこれで少しは株が上がるかな?(笑)

これからも応援よろしくお願いします!

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