11話 ボクと拓人はお友達!?
11話 ボクと拓人はお友達!?
初音「わ~~おはよ~~タクト! 元気だったか~?」
拓人「おいおい初音、昨日家作ってタクトとも会ったばかりだろ?」
タクトの家作りを終えてから翌日、俺と初音は朝早く学校に来て、
タクトの様子を見に来ていた。
初音「そうだけど......タクトのことが心配で心配でたまらなくて......」
拓人「おおげさだな~初音は、でもそこが初音のいいところなんだけどな」
初音「!?///」
拓人の発言に顔が真っ赤になる初音。
拓人「んあ?! どうしたそんな顔真っ赤にして! 熱でもあるのか?」
そう言って拓人が心配して顔を覗いてくるのを必死に振り切った。
初音「そ、そんなんじゃないよ!///
大丈夫、ボクは大丈夫だから!」
拓人「そうか? だったらいいんだけど......」
うんうん、と必死に頷いて見せる初音。
その反応を見て、本当に熱ではないんだろうなと一安心した拓人であった。
初音「ボク......やっぱおかしいな......」
拓人「おかしい?」
初音「......もうなんでもないよ」
そういう初音はどこか拗ねた表情で黙り込んでしまった。
なんか変なことしてしまったかと心配になったが、初音が思ってることなんて
考えても分からないので、話を変えることにした。
拓人「そういえば、タクトのエサってどうするんだ?」
初音「あ~! それなら心配ご無用、ちゃんと用意してあるさ!」
そう言ってすっかり上機嫌に戻った初音が誇らしげに猫用のエサを取り出して言う。
初音「昨日買っておいたんだ、タクトようにね。
気に入ってくれるといいんだけど......」
少し不安げに、そのエサをお皿に取り出して、タクトの前に置くと、
タクトはおいしそうにむしゃむしゃと食べ始めた。
拓人「おお~良い食べっぷりだな~、気に入ったんじゃねーか?」
初音「うん! よかった~」
初音は安堵の表情を込めてほっと息をついた。
初音「それにしても、本当にタクトと拓人は似ているね」
拓人「そうか? 俺には全く似てるようには見えないけど」
初音「そうかな? 今食べて幸せそうにしてる顔だってそっくりじゃないか!」
拓人「う~~~ん......やっぱ納得いかない!」
どうしても初音の言ってることに納得がいかない拓人は、
タクトを軽く睨んで、やっぱ似てないよなと呟いた。
拓人「それでも、本当に初音はタクトが好きなんだな。
普通だったらここまでしないぜ?」
初音「うん、ボクは意外に世話好きだからね!」
そう言う初音は、どこか嬉し気だった。
初音「けど、ボクは”タクト”がとっても好きなんだ!」
拓人「!?///」
その言葉に不覚にもドキッとしてしまった拓人。
初音は”タクト”のことを言っているのであって、”拓人”ではないと必死に頭の中を整理していた。
しかし、初音が”タクト”のことを言ったのか、”拓人”のことを言ったのか、
それとも両方のことを言ったのか、それは初音にしか分からないのであった。
朝一緒にタクトのお世話ををしていた拓人と別れ、先に教室に帰っていた初音。
そんな初音は、一人窓に顔を覗かせながら、独り言をつぶやくのであった。
初音「は~......なんなんだろうな、この胸のモヤモヤは......」
そう、初音は昨日の家作りで見せた拓人の笑顔が忘れずにいた。
その前にも、拓人が色々と初音に助けてあげたことが鮮明に思い出せれていった。
初音「こんな気持ち......初めてだよ......」
真「何かお困りかな? そこのお嬢さん?」
初音「ふぁ!? なんだ、真君か......それで、何の用だい?」
真「......ふ~ん、俺には君づけだけど、拓人には呼び捨てなんだ?」
初音「///」
真「へ~、やっぱり初音さん拓人のこと気になってるんだ~」
初音「な、なな、なんだよ君は! いきなりそんなこと言ってきて!」
真「いや、君が拓人に好意を寄せてるんじゃないかなと思って、見てたんだけど、
さっきの独り言を聞く限りだと、どうやら間違いないようだね」
初音「き、きみって人は~~~///」
さっきの独り言を聞かれていたと知って、顔を赤くする初音。
真「ま~だとしたらかなり頑張らないと無理だね」
初音「え?」
そう言い放った真の口調は、どこかとげのある言い方だった。
真「あいつは女子に免疫がないというか、女子が苦手なんだ。
だから、あいつは女子を敬遠していた。けど、あの性格だから、
困ってる人は見捨てられない、自分のやれることは頑張ってやる。
そんな拓人に惹かれているのは、初音さんだけじゃないと思うけどな?」
初音「......」
初音は、真の言ってることを一語一句こぼさずに聞いていた。
拓人が女子のことが苦手だなんて......だからあの時ボクの性別を聞いたのかな......
だとしたら、ボクは拓人に敬遠されちゃうのかな......
イヤだ、絶対にイヤだ......
拓人は、ボクにとってかけがいのない人だ。昨日、改めて思った。
拓人はボクが分からなかった問題とか、優しく教えてくれたり、
タクトのことも、ボク以上に頑張ってくれた。
そんな拓人に敬遠されるなんて絶対にイヤだ......
もっと拓人のこと、色々知りたいのに、もっと僕のこと知ってほしいのに......
こういう風に思うのは......やっぱりボク......
顔をどんどん曇らせていく初音を見かねて、真は口を開いた。
真「初音さんが思ってるようなことにはならないと思うぜ? ましてやあの拓人だし」
そういう真は、嬉し気に笑っていた。
初音「うん、そうだね......それに、ボク、もう自分の気持ちに気づいたから」
真「......そっか。ま、じゃあ頑張れ! ライバルは多いぞ?」
そう言うと、真はあそこあそこと教室のドアの方を指さした。
そこには......
拓人「おはよーっす」
初音「た、たくと......」
拓人と初音は教室によらずに、そのままタクトのところに行ったので、
拓人は荷物を自分の荷物をもって教室に入っていた。
そこへ......
ベル「拓人さん~~~~!」
拓人「お、よっと!」
拓人が教室に来たのをいち早く確認し、一目散に抱き着こうとしたベルを華麗にかわした拓人。
ベル「た、拓人さん!?」
拓人「どうだ、もうベルの行動パターンはだいたい読めたからな」
ベル「む~~~~! じゃあこれはどうです!」
拓人「うあ!? ベ、ベル!///」
拓人の発言に火が付き、拓人の後ろから抱き着いてきたベル。
予想していなかったベルの行動に、おもわず赤面してしまう拓人。
まー、普段抱き着かれても赤面するのだが......
夏美「こら、拓人! ベルから離れなさい!」
拓人「俺に言わずにベルに言ってくれ!」
ベル「あら? 夏美さんは拓人さんを取られて寂しいですの?
だったらわたくしから拓人さんを奪って見せなさい?」
夏美「その勝負、のったわ!」
ベル「あらあら、気勢のいいことですこと......
でも所詮、わたくしと拓人さんの愛の前に立ちはだかる者はいませんわ!」
二人がヒートアップしていたところに、もう一人がらがらと教室のドアを開けて
こちらの方にやってきた。
茜「その勝負、私も参戦するわ!」
拓人「あ、あかね!?」
こちらの方へやってきたのは茜だった。おそらくベルと夏美の会話が聞こえてきて
こっちの教室に来たんだろう。
ベル「いいですわ、敵が一人や二人に増えたところで、わたくしは屈しませんわ!」
夏美「ああ、私も負けない!」
茜「私も!」
拓人「と、ところで......この勝負の決め方って何かな......?」
3人が熱烈な絶対負けない宣言を繰り広げていたところ、拓人はこの勝負の決め方に、
少々嫌な気がしていた。
ベル「あら、とても簡単ですわ、拓人さんのことを捕まえれたら勝ちですわ!」
拓人「......俺の意見は......」
「「「ありません!」」」
拓人「ですよね......」
今回も拓人の意見など通るはずもなく、勝手に試合を始めようとする夏美たちに
呆れて、逃げる準備をする拓人。
そして、3人が話に熱中するときを盗んで、拓人は走り始めて逃げて行った。
夏美「あ! 拓人! ちょっと待ちなさい!」
ベル「拓人さん! わたくしが必ず拓人さんを捕まえてみますわ!」
茜「拓人は絶対に譲らないんだから~~!」
拓人「三人とも目がガチだぞ! 落ち着け!」
拓人の後を追う三人の顔は、真剣そのもだった。
その顔が怖くなってさらに走るスピードを速める拓人。
すると、そこに、突如拓人に抱き着いて、拓人の動きを封じた者が現れた。
その者は、夏美でもなく、ベルでもなく、茜でもなかった。
その者とは......
拓人「は、初音!?」
初音「た、拓人のこと、捕まえた......///」
拓人に抱き着いて、上目遣いでそう言ったのは、初音だった。
夏美「初音!?」
ベル「初音さん!?」
茜「あなた、なんで拓人に抱き着いて......」
夏美たちは、初音が拓人に抱き着いている光景に、非常に驚いた。
それと同時に、また違う感情が、三人の心を揺さぶった。
夏美「拓人? あとでゆ~っくりとあなたの言い訳を聞いてあげるから
今のうち考えておきなさい......拓人!」
ベル「拓人さん? わたくしとの愛を放棄するのですか!?
......いい度胸ですわ、覚悟してください、拓人さん!」
茜「た~く~と~? ちょっとこっち来なさい......?
大丈夫よ? ちょっとだけ痛めつけるだけだから!」
拓人「お、おいみんな......話せばわかる! な?
だから一旦落ち着いて......」
「「「拓人!」」」
拓人「うあ!」
初音「拓人、ボクについてきて!」
初音はそう言うと、拓人の手を取り、廊下へと走った。
夏美「待ちなさい、拓人!」
ベル「そうですわ!」
茜「私たちも後を追うわよ!」
そう言うと、夏美たちも廊下へと向かった。
そのころ拓人たちは、廊下の突き当りにある部屋に隠れていた。
拓人「初音......どうしてこんなことしたんだ?」
初音「誰にも、渡したくなかったから......」
拓人「え?......」
初音「......ふふ、拓人らしいね」
聞き返してくる拓人の反応に優しく微笑んだ初音。
その微笑んだ初音の顔を見て、またしてもドキッとなる拓人。
部屋が狭いためか、二人の間の距離も近くなっていた。
初音はゆっくりと顔を見上げ、拓人のことを見ながら言った。
初音「ボクのために、あんなにお家作りとか色々手伝ってくれて、ありがとう」
拓人「あ、あたりまえだろ? あれくらい......」
初音「それでも、ありがとう......これはそのお礼だよ」
そう言い終わると、初音は精一杯背伸びをして、拓人の頬にそっとキスをした。
拓人「//////」
初音「これからもよろしくね......?」
初音は恥ずかしそうにそう告げた。
しかし、おそらく拓人は混頭の中で大パニックを起こしていて、
もう何がなんだが分かっていなかった。
初音「ね......拓人......」
拓人「う!? 初音?!」
初音はゆっくりと拓人の顔に自分の顔を近づけていった。
そして、初音の唇が、拓人の唇と触れそうになった瞬間、ガシャンと扉が開いた音がした。
拓人「......終わった」
その扉が開いた先には、怒りたっていた3人の美少女が立っていた。
その後、夏美たちにみっちりお説教をくらい、誤解なんだと泣き叫ぶ拓人なのであった。
また拓人ハーレムが増えた......
ま~増やしているのは僕なのですが。
今回も長くなってしまいましたが、
応援よろしくお願いします!




