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蒼眼の反逆者 〜ウィル〜  作者: そにお
第3章 鮮血の巫女と蒼眼と緋眼
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96話 イシュミリア城攻略戦

 その日の太陽がまだある内に反乱軍、いや正規ミリアン軍は前進する。

 要塞の兵士を取り込み、更に勢いを増し城へと駆けていく。


「ディアヴァロ!」

 

 ニーアの呼びかけに黒竜は空からニーアの眼前に降り立つ。


「……あまり無理をするなエファンジュリアよ。城内で下ろすところまでだ」


「うん、充分だよ」


 ディアヴァロは返事がてら唸るとニーアを尻尾で巻くと背中に下ろす。

 ウィルは目を輝かせ巻かれるのを今か今かと待っていたが忌々しそうに竜はウィルを見下ろす。


「……早く乗れ、蒼よ」


 どうやらそのつもりはないようでウィルはがっかりしながら背中に飛び乗る。


「イシュミリア城までの城壁はぶち破っていいんだな?」


「ああ、構わないよ。立て直しは後からいくらでもできるからね」


 クレスは躊躇することなく手を振る。

 

「分かった。行くぞ!」


 ウィルはディアヴァロの首に上り頭を叩く。

 それを合図に翼を羽ばたかせ吹き上がる風と共に空へと舞い上がっていった。

 全軍はそれに追従するように全速力で駆けていく。


「おっしゃあぶっ放せ!」


『お主、要塞攻略の時と言っておることが逆だぞ』


 ディアヴァロは小言を入れながら黒玉を出現させ、闇の光線を放出する。

 もちろん、敵の弾幕はあったものの一瞬にして消失し3枚の城壁に風穴を開ける。


「うっ……」


 そのエネルギー放出に伴いニーアは頭を抑え少しよろける。

 ウィルは前に立っていたため、それに気づくことはできなかった。


『……行け。蒼よ』


 ウィルは溶けた1枚目の城壁の下に飛び降りる。

 その後すぐにディアヴァロの尻尾に巻かれてニーアが下ろされる。

 ニーアの手を取りウィルはゆっくりとニーアを下ろす。


「ありがとうーーディアヴァロ!!」


 ニーアは降りた後、禍々しい力の塊が向かってくることに気づきディアヴァロに叫ぶ。

 その瞬間、ディアヴァロほどの巨大な焔の塊がディアヴァロに突撃する。


「むう……!」


 ディアヴァロは空中で受け止める。

 周囲の空気が焼け焦げ、熱波がウィル達に降りかかる。

 ウィルはニーアを抱えるようにその強烈な熱波から守る。


「きゃあ!」

 砂塵が舞う。

 ディアヴァロは巨大な炎塊と共にきりもみながら更に高度を上げる。


『離れろ……小僧が!』


 それはウィルにではなく炎に向けた怒りを込めた声だった。

 黒玉を弾けさせると意志を持つように炎は瞬時に距離を離す。

 

『クオオオオオン!』

 耳をつんざく高い雄叫びと共に闇を纏う紅蓮の炎は翼を広げ姿を表す。


「イフリーテ……!」

 

 ニーアはウィルの腕から顔を出しその名を口にする。

 そしてニーアの目線はそびえる城に向けられる。

 ウィルもその目を追う。


 城のせり出した部分、演説を行うための外に面した舞台に真紅のドレスが熱気で舞い上がった風に揺れる。

 風に乗り唄が聞こえる。ニーアではなく真紅のエファンジュリア、セラによる暴力的で好戦的な唄。

 感情をむき出しにするような唄にウィルの腕には鳥肌が立つ。


「あれが、セラ……!」


 遠目ではあったが突き刺すような視線が眼下の二人に向けられているのが分かる。


『行け! 蒼よ! こやつは我が引き受ける!』


 ディアヴァロはそう言うや否や翼を広げたイフリーテに数多の黒玉を一点に向け集中砲火させる。


「行こう、ウィル兄!」


「ディアヴァロ、セラは俺たちが抑える!」

 ニーアとウィルは城へと向きを変え作られた道を走っていく。


『小僧とは言えこれは骨が折れる……』


 眼下にはディアヴァロ達を恐々と眺めながらも目的を果たさんとウィルの後に続いていく兵士達。

 ディアヴァロはイフリーテをこの場から遠ざけようとイフリーテに突進し更に距離を作る。

 時間がないことが唯一の不安だった。



 城周辺の敵兵士は既に戦意が消失していた。

 事前情報による真実とディアヴァロによる圧倒的な力に抗う者はいなかった。


「蒼眼のウィル殿! こちらです!」


 それどころか城へ招き入れる兵士すらいた。

 どちらが正しいかを見極め何をすべきか行動する兵士は多く予想された戦いは城の外においては皆無だった。


「どけえええ!」


 ウィルは城内の兵士に切りかかる。

 城内の兵士は鎧の形が少し違い黒みがかった色も特徴的だった。


 城に入る前、寝返った兵士によると大将ヴィクターの直轄の私兵は間違いと知りながらも未だヴィクターについているとのことだった。


 当然、迎撃してくる兵は迷いがなくウィルを討ち取ろうと剣を返してくる。

 数が多く、実質一人で戦いニーアを守るウィルは先に進めずにいた。

 仲間となった兵士も参戦してくれるものの実力差か太刀打ちは困難だった。


 それに先ほどからニーアの疲弊が目に見えていたので蒼を顕現させることも憚り、硬直状態となる。


「ちっ……」

 ウィルは思わず舌打ちする。

 焦りが油断を産み徐々に押されていく。


 そしてようやく助けが入った。

 紫電の剣が兵士を捉える。

 対の短剣が、不可視の一撃が、華麗な剣技、神速の刺突、そして、なにやら爆弾の一撃とウィルの背後から飛び出す丸っこくなった弾丸が道を切り開く。


「行こう! ウィル!」


 レインシエルが眼前の一人をまた倒すと汗で濡れた髪を振り、ウィルの前を進む。


「おう……!」


 これ以上ない味方の援軍にウィルは力が湧き続く。

 目指すは王の間だ。






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