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蒼眼の反逆者 〜ウィル〜  作者: そにお
第3章 鮮血の巫女と蒼眼と緋眼
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89話 前進する者と阻む者

 部屋の中はよりこじんまりとしていて中央の台座以外に気になる物はなくぽつんと寂しげに台座だけが置かれていた。


 プルルは入り口に一緒に入るときにプルルだけ追い出されたようで、主の帰りを首? を長くして待っていた。

 レインシエルが未だ喚いているが、それは置いといてやけに静かなニーアを振り向く。

 ウィルが会話している間に起動はすませたようだったが、ニーアは立ち尽くしていた。


「ニーア?」


 ウィルは不安になりニーアの目線の先にある台座へと注目する。


「これ……」


 ウィルはゆっくりと指さされた先に何があるのか、それに気づいてしまった。

 恐らく、二人だけにしか気づかないであろうそれは、とても懐かしく思えた。


「俺の部屋の、親父が残した端末、とハクトが拾ってきた小箱……か?」


 台座の中心には黒い端末と小箱が置かれてあり、今まさに小箱は球体へと変化し光を膨張させる。


「そうとは限らないけど、こんな感じだったんだよね?」


 直接、見ていなかったニーアはその特徴だけを聞かされていただけにも関わらずそれが旅のきっかけになった端末と小箱に類似していることに気づき、展開を終了した光の球体はノイズを走らせながらテイントリア大陸、東部地域へと拡大表示していった。

 イストエイジア方面はどうやら範囲外のようでヴェローナ辺りまでの表示となっていた。


「ああ、でもあの時はフェルペルディアの地図だったからたぶん、機能が同じだけの別もんかな」


 ウィルの部屋でみた地図はフェルペルディア全土の地図でこれはテイントリア東部に集中した装置のようだった。

 だがそれだけでも同じ機構を用いた装置がウィルの部屋にあったということ、それをルイノルドが持ってきたとしていたことは繋がりがあると思わざるを得なかった。


『初期表示、塔、端末の現在地、及び12機構搭載』


 再び音声が部屋に響く。

 すると複数の赤い点が地図上に表示され、二ヶ所は一回り大きな赤の点だった。。

 白い点もあるが位置的にはこのクロム遺跡を差していることは想像できた。


「点の違いは?」


 ニーアはそこにいるわけではないが上を向いて質問する。


『回答。二ヶ所の地点は塔機能及び12機構搭載施設。他地点は限定的な記録端末の所在を表示しています』


 聞き慣れない言葉があった。

 記録端末とは言葉の意味をそのまま受け取ることができたがもう一つの語句だ。


「12機構って?」


 ウィルが質問するよりニーアが早かった。

 そういえばいつの間にか後ろのわめき声が聞こえなくなったことにも気づいた。

 どうやらあきらめがついたらしい。


『限定的回答。12機構についてはエヴィヒカイトでのアーカイブを参照ください。東部地域における機構は北からシルヴァ、ユグドラウス』


 説明に呼応するように北の赤点が点滅し、続いてミリアン東岸あたりが点滅した。

 ウィルは反射的に拳を握る。


「ユグドラウス!!」


 それは目的の一つだった。

 アドルを救うエリクサー創製のための材料採取地、ユグドラシルへの扉と関係している楔がミリアンにあるのだ。

 ニーアも同じように興奮しているのか笑みと共に両手を強く握っていた。

 しかし次にかけたニーアの質問はその勢いを削ぐことになる。

「ユグドラシルの扉については?」


『回答不能。データベースに該当語句がありません』


「いやいやいや、ユグドラシルの扉ってあるんじゃないのか!?」


『回答不能。データベースに該当語句がありません』


 限定的回答でも権限が違うのでもなく、該当しないという絶望に近い言葉が二人に繰り返し突き刺さり、ああ! とウィルは苛立ちを込めて叫んだ。


「ディアヴァロ! どういうこと?」


 ニーアは普段は心の中で会話していたが思わず口に出して知っているであろう存在に苛立ちも込める。


「ーーそのままの意味だろうって、人事にみたいに言わないで!!」


 どうやら口にだした言葉がそのままディアヴァロの言葉だったようだ。

 取り乱すニーアにむしろウィルは冷静になりニーアの背中に手を添える。


「ディアヴァロ、存在するのは確かなのか?」


 ウィルはこちらの言葉は聞こえるだろうとそれだけ確認したかった。


「それは確かだって。言葉が悪かった。ユグドラウスは個人的な研究でそれを見いだした為、登録などしていなかったのだろうって。ほんとに言葉足らずの老人ね」


 最後の言葉にショックを受けたかは分からないがそれ以降、ディアヴァロからの言葉はこないようだった。


「とりあえず存在ははっきりしてるんだ。ユグドラウスに向かうしかないだろ」


 そもそもこのアーカイブと言われる装置がどこまで情報を持っているかも正直わからないのだ。

 それが全て答えを持っていると勝手に思いこんだのはこちら側でウィルは反省する。

 かたやニーアはまだ納得していないのか表情が硬いままだった。


「いこう」


 このままここにいても仕方ないので俯いているニーアの手を取り出口へと振り向いた。


「うん……」


 ニーアは自分でも早とちりだったことに気づいていた。

 ただそれが情けなく怒りをディアヴァロにぶつけてしまったことを反省していた。

 それが伝わったのか、気にするな、とだけディアヴァロから声が届き、ウィルの手に従った。

 


「待たせたな! 俺は今帰ってきたぞ!」


 なるべく良い情報が取れたのだと思わせたく空元気にも近い声で待ちぼうけしていた仲間に合流する。


「プルーー!?」

「おおおおっっそい!!」


 主の帰りを両手? で迎えようとしたプルルはレインシエルに弾き飛ばされた。

 相当待っていたのかレインシエルの表情はプルルのように丸く膨らんでいた。


「わりいわりい、とにかく楔の場所はわかった。ユグドラウスもミリアンにある!」


「本当ですか!?」


 オルキスは目を輝かせる。

 創製という一番の役割を担うオルキスにとっては嬉しさを抑えることができなかった。


「レイ、いい加減落ち着きなさい。ということは目的地はユグドラウスで問題なさそうですね」


 メレネイアは娘をいさめつつ、次の目的地を確認する。

 ウォルトは地図を取り出しウィルに場所の目印を付けさせる。

 シルヴァとユグドラウスは良かったがそのほかの地点はあまり覚えておらず、結局、また部屋に戻り記入した。


「ユグドラウスはどうやらミリアン東岸、ギミア峠を越えた先ですね。最短はトンネルを通るルートですが魔物の巣窟となって久しいです。準備は怠らずに行きましょう」


 ウォルトが最短以外のルートをあえて出さないのは急いでいる状況だからだった。

 単純に山越えルートも存在したが何倍にも時間がかかるため最初からそのルートは除外して提案した。


「わかった。そこはウォルトに従うよ」


 ウォルトは地図をしまい、洞窟の出口へ向かおうとする。


「待った!」


 移動しようとした皆をウォルトは急いで制止させる。

 出口から影が揺らぎ現れたのは見知った顔だった。


「ラプタ!」


 現れたのは外で見張っているはずのラプタだった。


「やっほー……」


 言葉とは裏腹にその声色は弱い。

 ウォルトはフィドルと同じ細剣に手をかける。


 それが何を意味するかはラプタが蹴り出されるように倒れた後に皆、思い知り一斉に武器を取る。


「ごめん、若……」


 ラプタがいた場所の空間が歪み、出口の光が遮られた。


 そこに立っていたのは黒い仮面に顔半分を隠した細身の灰色の装束に身を包んだ人間だった。



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