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蒼眼の反逆者 〜ウィル〜  作者: そにお
第3章 鮮血の巫女と蒼眼と緋眼
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88話 顔を出す遺跡と凶刃


「アストレムリってことは……セラか!?」

 

 ウィルはその光を見て焦る。

 当然考えられたことではあった。

 近くの塔、楔を解放するならば近場から行うのは予想できていたが、先を越されたことで焦りが募る。


「それはわからない……父さんかもしれないけど、でもわざわざあっちを起動するなんて」


「確かにそうですね。ルイがあえてアストレムリ側で行動していることもあり得ないとは思いませんが、今の状況では考えても仕方ないでしょう」


 確かにルイノルドがセラを阻むために先回りしたことも否定できなかったが、それでどうやって楔の解放を防ぐのかは検討もつかなかった。



「急ごう」


 ウィルは目の前の扉へ向かう。


「いいのか? あまり望みないんだろ」

 フィドルは光から目線を移し、歩くウィルに寄る。


「今からアストレムリに向かうにしても、別の遺跡に向かうにしても今からじゃ余計に時間がかかるだろ。なら目の前に道があるんだ。できることをまずしないとな」


 ウィルは胸中穏やかではなかったが、今ここで顔をだした遺跡に無理矢理にでも意味を見いだすしかなかった。


「……お前についてくぜ」

 フィドルはそんな様子を察しながらも決断したウィルと共に扉に向かう。


「あ、開かねえ」


 扉は押しても引いてもびくりともしなかった。

 ウィルはそんなことは考え切れてなかったのか最終的には蹴ってみたが足がしびれただけだった。


「もう、どいて」


 二人を押し退け、ニーアは扉に手をかざす。

 ニーアのマナが注がれ扉の中心から幾何学的な光の模様が走り、扉は押すのでも引くのではなく地中に沈んでいった。


「さあ、行こう」


 ニーアが先頭を風を切るように進んでいく。


「お前の妹、なんかすげえな」


「誰に似たんだか」


 ウィルは肩をすくめ、急いでその後を追った。

 遅れて他の面々も後ろについて入ってきた。


ーーーー

「対象を確認、入口付近に二人、護衛と見られる。排除要請……許可確認」

 木の上で一人、陰に隠れる者がいた。

 胸につけた小さな装置のダイヤルを回す。

 木の太い枝の上の空間が歪むと人の姿が現れる。

「認識阻害解除。行動を開始」

 無機質な口調、最低限の言葉の後、顔半分を隠す黒い仮面を装着し、入り口を警護するラプタとドルに大鎌の凶刃が襲いかかる。


「ーー!、ドルっ!」

 ラプタはいち早くその存在に気づき臨戦態勢を取る。


「へ?」


 優先順位確定。

 男を先に排除する。


 飛び込んできた数瞬で立ち回りを判断する。

 その漆黒の大鎌、対照的に輝く銀色の刃に映るドルはやっとその鎌を認識したところだった。



 

 その幾分か前、ニーアが入った途端、闇に閉ざされていた通路は入り口から順に光を灯していく。

 天井を素材不明の石が一定の距離で並びそれに灯る明かりは天井に這う軌跡に沿うように紫の光を這わせていった。


「これ、光石ですよ。アーティファクト化されてマナによって起動するようになってます。本来は太陽光をため込んで暗がりに光るものなんですが……」

 途中、天井から落ちたであろう石を拾ってオルキスは喜々として言うとそのままリュックに忍ばせる。

 あまりに自然に忍ばせたので誰もとがめるタイミングを失った。


「ニーア待てって」

 先を進んでいたニーアにウィルはやっと追いついた。


「ぷるる!」


 プルルもきっと同じことを言っているのだろう、ウィルの肩からニーアに飛び乗り震える。


「プルル……でもついちゃった」


 既に時遅しと、ニーアは足を止めた。

 

「ここは?」


 小さなドーム空間が照らされていた。

 中央にはリヴァイアスのいたアキアシュテルノと同じ台座が待ちわびるように鎮座していた。

 その先には更に続きがあるようで入り口と同じ様な扉が閉まっていた。


「なんだここ?」

 遅れてフィドルがやってくると天井を見渡していた。


「先行かないでくださいよー」

 小走りでティアがやってきたかと思うとその後すぐにメレネイア達が合流した。


「ここ小さいけど雰囲気はアキアシュテルノみたいだな」


「はい、やはりここに立ち寄った記憶がありますね……」


 おぼろげな記憶なのかメレネイア苛立ちをつのらせていた。


「時間ないからいくよ! ここが何かはっきりさせる!」


 ニーアは早速、台座に手を翳しマナを込める。

 扉と同じように紫の光が灯ると液体の様に台座に光が流れていく。

 台座がぽーんと軽い電子音を奏でると台座上部に光のパネルが浮かびあがる。

 それは文字を打ち込んで言っては消え、立ち上がりを繰り返す。

 やがて一つのパネルで止まった。

 ウィルは映った文字を読もうとするが、文章ということはわかるものの文法と所々、経験と違う言語で意味が不明だった。

 

『管理者コードを確認しました。管理ユーザー名の更新を開始します。新たな管理者の名前を入力、もしくは音声入力を行ってください』

 ドーム内に感情のない女の淡々とした音声が響く


「ニーア」


 ニーアは臆することなく知っている操作かのように自分の名前を宣言する。


『音声認識の入力を確認、声紋登録、以降管理者ニーアに権限を委譲します。ようこそ、ニーア。ご指示を』


 その無機質な音声は決められた台詞のようで歓迎しているとは到底思えなかった。


「起動して」


 ニーアは気にすることなく次の指示を与える。

 皆、黙って見ていることしかできなかった。


『起動を承認、起動プロセス開始』


 台座のパネルの表示が切り替わる。

 意味は分からなくても数字部分で起動の進捗を示しているのはわかった。


「またパージとかやめてくれよ」


 ウィルは嫌な記憶が蘇る。


『回答、パージ機能は備わっておりません』


 律儀にもウィルのつぶやきを広い答える音声。


「ここはなんなの?」


 その反応からレインシエルが台座に向かって質問するが、それには答えることなく沈黙だった。

 無反応にレインシエルは不満そうに頬を膨らませる。


「まあまあ、ここはなにかってこの後わかるだろ」


 ウィルはレインシエルを宥めると音声は反応を返す。


『回答、名称クロムは東地域における統合アーカイブ拠点です』

 それが回答が遅れただけなのかウィルの質問に答えただけなのかは分からなかったが、更に頬を膨らませるレインシエル。


「なんなのこいつ」


 しかし、それには答えは返ってこなかった。


『起動完了。アーカイブ参照は奥の部屋にて可能です。注意、アーカイブ機構はデータの欠如により42%の復元率で強制終了しました。完全なデータ参照は現テイントリア、旧地球……データ破損省略……地方統一アーカイブ、エヴィヒカイトにて参照願います』


 現テイントリアということは旧なにかしらの名称があったようだが、途中で切られたようだ。

 地球という言葉がなんなのかは気にはなったが聞き覚えのない言葉でそもそも重要とは思えず、頭の隅においやる。

 それはウィルだけでなく皆も同じ様だった。


「エヴィヒカイトがやっぱ中心っぽいな」

 やはり遺跡はエヴィヒカイトに繋がっていることが判明し楔ではないようだが、関係性があるということは無駄ではなかった。


 すると自動的に奥の扉が開いた。というよりも透明になりかき消えたという表現が正しい。

 奥にはまた台座があるようだった。


「ここはアーカイブって話だから楔ではないね。けどここに他の塔の情報があると思う」


 それはかなり有用な情報だった。

 それならばピンポイントで向かうことができる。

 アストレムリでの塔の起動は懸念事項だったが、それでも差は埋められそうだった。


 ニーアは奥の部屋をくぐる。

 ウィルも付いていき、くぐる。


 フィドルもくぐろうとしたが、消えていたはずの扉が半透明に出現してフィドルの行く手を防ぎ、フィドルの鼻を打つ。


「あがっ、な、なんだあ!?」


 フィドルはまず鼻血が出ていないか確認すると忌々しげに浮かんできた扉をたたく。

 他も同じように通ろうとするが確かな質量が道を閉ざしていた。


『警告、コード未所持の有機体は通ることはできません』


「なんだよ、コードって!」

 ウィルは扉の向こうで叫ぶ。

「回答、コードについては特機密事項に指定されており、地方拠点からの参照にはコード所持者三名、もしくは管理者とコード所持者二名による要請が必要です。エヴィヒカイトにおいては管理者のみの権限が必要です」


「わっけわかんねえ」


「管理者であるニーアさんはまだしもウィルさんが入れるのは分かりませんね……血縁者だからでしょうか?」


 メレネイアは腕を組んで考えを口にするが、確かにアリスニアと共に来たときは彼女しか入っている記憶しかなかった。

 そもそもエヴィヒカイトの命令で入ろうともできなかった。

 多少、その状況と重なる気がしたものの、悲劇を繰り返したくないと頭を振った。


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