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蒼眼の反逆者 〜ウィル〜  作者: そにお
第3章 鮮血の巫女と蒼眼と緋眼
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87話 クロム遺跡

 翌日、朝食の時間にはメレネイアの体調は元に戻ったようだった。


「醜態をさらしました。すみません」


 メレネイアはまずそう謝った。

 醜態という言葉を使うあたり、弱い姿は見せたくなかったようだった。

 むしろレインシエルのほうが疲れが出ているみたいでどうにも元気がない。

 いつも無駄に元気なレインシエルだったのでウィルはより心配になった。


「全然いいよ。それと昨日の話なんだけど」


 ウィルは昨日の結果を話す。

 フィドル達の協力とミリアン奪還の協力についてメレネイアの意志を聞きたかった。


「ーーってことなんだけど、メルとレイの考えを聞きたいんだけど」


 メレネイアは野菜を煮込んだスープを口に含むと落ち着くように息を吐いた。


「目的に大いに反するものでなければ問題はありません。リーベメタリカ構想にミリアン王国が参加していただければ状況はこちらに傾きますし。なによりリーダーが決めたことなら反対するわけありませんよ」


リーダー? メレネイアじゃなかったっけ?

「リーダー? メルじゃなかったっけ」


 そのまま口に出てしまった。

 ウィルの頭では既にメレネイアがリーダーだと思いこんでいた。

 何より一番の年上、経験からして自然の成り行きで今まで考えたこともなかった。


「何を今更言っているんですか? そのつもりで確認してきたのかと思いましたけど」


 メレネイアの顔色は一切変わらず、むしろウィルの反応に驚いたかのようにも見えた。


「え、そうなん?」


 ウィルはまさかと思い、集まった面々の表情を一人一人確認する。

 誰もが何を今更と言うようにうなずいたり呆れたりしている。


「ぷるる!」


 ニーアに抱えられたプルルでさえも誇らしげに体を伸ばしてみせる。


「はあ、昔からだけどさ、もう少し当事者意識もったほうがいいよ」


 ニーアは誰に教えられたのかそんな言葉を口にした。


「お、おう……。 なんか釈然としないけど俺がリーダーってことでいいのか?」


「そうですよ」


 メレネイアはさらに肯定する。


「俺はお前が決定者だと思って話してたんだが……」


 フィドルはがっくりと肩を落とす。

 それに対し、乾いた笑いしか返せなかった。


「さようで……。分かったよ! レイもおっけーってことでいいか?」


 ウィルはまだ口を閉ざしたままのレインシエルに念のため確認をとろうとするが、聞こえていないのかぼーっとしたままだった。


「おーい、レイ?」


 再び声をかけると焦点が戻ってきたのかウィルとようやく目が合う。


「あ、うん。野菜おいしいよ」


「それはそうだけど、まったく聞いてなかったのばれてるぜ」


「え、ごめん、なんの話だっけ」


 レインシエルは苦笑いを浮かべ、ウィルに話をもう一度させる。

 改めてレインシエルもそれに了承した。


「レイ、大丈夫です?」

 

 オルキスは上の空だったレインシエルに声をかける。

 こういった気遣いはオルキスが自然にできた。


「う、うん! だいじょぶだいじょぶ!」

 

 レインシエルはオルキスの言い方を真似て両手を軽く上げてぐっと力を込める。


「なら良いんですけど、何か言いたかったら言ってくださいよ?」


 オルキスは引き下がったが何か抱えていることには気づいたようだった。

 レインシエルはうんと少し頷いた。


「ほら早く食べないと私が食べちゃいますよ!!」


 それは狙ってやったのか、いや、本気だっただろう。

 あっという間に自分の分を平らげたティアはレインシエルの食事にも手を伸ばそうとする。


「あ、ちょっと! ちゃんと食べるから!」

 レインシエルは皿に伸ばされた手より先に持ち、半ば無理矢理にも映ったが胃の中にしまい込んでいった。

 それを横で残念そうに見えていたティアはやはり本物だった。


ーーーー


「それでは、クロムに向かいましょう」


 食事も終わりひとしきりの休憩の後ウォルトは外で集まった面々を前にする。


「ここから近いのか」


 ダーナスは自分の装備を確かめ終わるとウォルトに聞く。


「いえ、およそ30分ほどでしょう。山のふもとなのでそんなにはかかりませんよ」


 町を離れ、人が踏みならしただけの山道にさしかかる。

 ふもととは言ってもやはり登りではあるようで人の手が入らなくなってだいぶ道も悪かった。


「アイリ。大丈夫ですか?」

 ユーリはすぐ後ろを歩くアイリに声をかける。


「心配いらない。……だいじょぶ」


 アイリは迷った後だいじょぶと言うと、オルキスがその横で嬉しそうにしていた。


「若!」


 茂みから突如、二人組が現れた。

 ウィル達は思わず武器に手をかけるが若と呼んだことと見知った顔にすぐに警戒を解く。

 ウォルトだけが一切警戒していないように二人組に向き合う。


「いきなり出るのいい加減にしろよ!」


 なぜか仲間であるフィドルも剣を抜くところだった。

 ウィルは細目の男がよぎり親近感が増し、軽く肩をたたくと意味がわかっておらずフィドルは困惑していた。


「ラプタ、ドル、ご苦労。異常はないか」

 

 ウォルトは膝をつく二人に報告を促す。


「はい、誰も来たような形跡も気配もありません。周辺は洗ってあります」


 フィドルに接するような軽い感じはなくラプタは頭を下げたまま、堅い口調で報告する。

 どっちが偉いのか。


「誰も来てないってことは、外れかもなあ」


 ウィルはその報告でルイノルドが来ていないと予測した。

 

「うん、起動したようなマナの波動もないって」


 ニーアがそれを裏付けるようにディアヴァロとの会話の結果を話す。

 一つの目的は失ったもののルイノルドが来ていないだけで楔である可能性も捨てきれず一同はそのままクロムへと足を運ぶ。



ーークロム遺跡前ーー


 山の斜面にそれはあったようだ。

 というのは、情報通り斜面は崩れ落ち、土で埋まっていた。

 ここと断定したのは埋まりかけていたミリアン委託区域、クロム遺跡と書かれた立て看板を見つけたからだ。


「やっぱ埋まってんな」

 ウィルはお手上げと言わんばかりに両手を後頭部に組む。


「その様です。一応時間はかかりますが、部下に命じて掘り起こすことも可能ですが」

 

 ウォルトはそこにあるだろう遺跡の土を軽く掘る。

 固まってはおらず比較的容易に掘ることが可能だと判断したようだ。


「どうします。リーダー?」

 ユーリがわざとらしくウィルを呼ぶ。

 いつも楽しんでいるようなユーリには慣れてしまった。


「ああ、後回しにすっか」


 ウィルは今後の予定も考えてあまり可能性のないクロムは後回しにして次に向かったほうがいいと思った。


「待って」


 それを止めたのはニーアだった。


「ん、どしたーー」

 ウィルが振り向いた瞬間だった。


「来たーー」


 ニーアが空を仰ぐと同時ににわかに地面が揺れる。


「なんだ!?」


「地震です! 崩れるかもしれません! 離れて!」


 ウォルトは迅速にこの場を離れるよう指示する。

 空を仰いだままのニーアを無理矢理ウィルはその場から引き離す。


「そんな……」

 それは目の前で土砂が崩れていく光景ではなくニーアの目は空を見据えたまま方向を変えなかった。


「ごほっごほっ。全員無事か?」

 地震が収まり舞い上がった土煙にせき込みながらダーナスは皆の無事を確かめる。


「ああ……。ニーア大丈夫か?」

 ウィルは抱き寄せたニーアの様子を確認する。

 空を仰ぎ見ていた様子もなく無事なようだったが、冷や汗が流れていた。


 土煙が晴れると皆、無事なようでダーナスはオルキスの手を取り引き上げていた。

 ティアは薙刀を突き刺して誇らしげに仁王立ちしていたが、誰もそれには言及しなかった。


「初めて地震に出会いましたよ。結構面白いですね」


 ユーリは涼しい顔で手についた土を払い、ユーリに抱え込まれるようになっていたアイリの土も払う。


『若!』

 ウォルト、ラプタ、ドルは同時に主を叫ぶ。


「こっちだ!」


 フィドルの声は遺跡の間近で聞こえ、三人は急いでフィドルの元へと向かう。

 ウィル達も急ぎ続く。


 目の前に現れた光景は、先ほどとは違った。

 土に埋まっていた場所ははがれ落ちたように人工物であろう鈍い光沢の扉が顔を出していた。


「運がいいのか、悪いのか」

 

 ウィルは現れたクロム遺跡の入り口を見つめる。


「しかし、あの地震はいったい」


 ウォルトは難しい顔で考え込む。

 この辺りはそうそう大きな地震は起きない地域だった。

 それこそ蒼の災厄以降だ。


「まさか……」


 ウォルトは一つの可能性に気づき、後ろで扉を見つめるニーアに振り返る。

 ニーアは苦痛か疲れか顔をしかめ尋常ではない冷や汗を流していた。


「お、おい!」

 今にも倒れそうなニーアをウィルは慌てて支える。


「ごめん、もう大丈夫……」


「大丈夫じゃねえだろ」


 ウィルの腕を支えにして立ち直すと袖で顔を拭う。

 動悸を抑えるように胸に手を当て何度も深呼吸した後、ゆっくりと顔を上げた。


「塔が起動した……ここじゃなくてずっと北西のアストレムリ側の塔……」


 ニーアは遠くの空を指さす。

 皆その指を追うと、木々の間を抜け北西の遠くの空に立ち上がる、一筋の山吹色の光が天を突き抜けていた。




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