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蒼眼の反逆者 〜ウィル〜  作者: そにお
第3章 鮮血の巫女と蒼眼と緋眼
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84話 ファンツベルグ解放戦

 ウィル達が新たな出会いを果たしている頃、イストエイジア王国では次なる動きを具体的に進めていた。


 アストレムリ聖帝国へ向けた連合軍、といってもリーベメタリカ参加国の軍備などの体勢は未だ整っておらず、今暫くは大部分の構成はイストエイジア軍となっていた。


 ファンツベルグ解放戦、これがリーベメタリカ発足後、第一歩となる自由解放戦争となった。


「第一空挺団が交戦を開始しました」

「続いて第二、第三空挺団交戦に入った模様です」


 旗艦である【蒼穹】の司令室では他船団の交戦情報が報告される。

 

「結構、踏み込めたということは捨てる気ですね」

 アルフレドは船長として司令室内後方、せり上がった部分に立ち、下で状況報告する管制員たちを眺める。

 大規模アーティファクト装置にて船員達はそれぞれの持ち場の浮かび上がるパネルを操作している。

 中央の投影装置には複数の出力により空域マップと自軍と敵軍の確認できる配置と想定の範囲で描かれ、各船団の船団長の船の映像がリアルタイムで送られてきていた。


 大規模なアーティファクトの開発はイストエイジアで水面下で数年にも渡り行われ、蒼穹が唯一の完成品だった。

 各船団においてはここまで大規模の搭載は間に合わず、位置情報と旗艦の情報通信までに留まっていた。


 しかし、それでもこの戦争は変わったとも言えた。アストレムリ軍の技術力に対抗できるレベルに達したということは渡り合えるということを意味した。


「報告! アストレムリ軍の戦線が後退していきます!」


 アルフレドの予想通り、空での交戦は早期に終了し制空権を掌握した。

 だが胸中は穏やかではなかった。

 こちらの動きが早かったこともあるが、あっけなく下がっていくアストレムリ軍に違和感を覚えた。

 それは戦力はほぼ削れておらず反撃はいくらでもありえるのだ。


「今はあまり考えても仕方ありませんか。地上部隊の状況は?」


 アルフレドは目的を逸脱しないようにその考えを今は奥底に秘めておく。


「ーー地上部隊からの報告! 航空戦力の後退に合わせ撤退を開始しているようです!」


 船員の報告のすぐ後、地上の敵軍の司令部、元はファンツベルグ政庁の建物から蒼の光が打ち上げられた。


『敵軍司令部制圧! 司令官の存在確認できず! 残った軍人は……自決したようです』


 地上部隊からの通信が直接、司令室へ届く。

 制圧という報告に船内は沸き上がる。

 だが、アルフレドの表情は緩むことはなかった。


「第一から第三空挺団はウリミアへ転進、第四空挺団はアストレムリ国境に展開してください」


「了! 第一から第三空挺団はーー」


 通信伝令担当がアルフレドの指示を繰り返し、各方面へ伝達する。


「あちらの思惑がどうであれ、今はこちらの宣伝に使わせてもらいますよ」

 

 翌日、早朝からウリミア解放戦争は開始された。

 案の定、ファンツベルグと変わらず敵の抵抗は散発的で自軍の被害は最小限に第一目的である二地域の解放に成功する。


 兵士は士気を高めるのは当然だった。

 アストレムリ軍が逃げ出し彼らの心には勝てる、という意識が芽生え、解放された人民においても圧政に苦しんだ反動からか戦意をふくらめていった。

 彼らにとっては解放戦争が功を成したということが重要だった。


リーベメタリカの戦況はウィル達にはまだ伝わらない。

 ミリアン地域の通信は範囲外でありイストエイジアと同様の遺跡があるとは考えられておりそれらの機動と承認も楔の解放と同様に副目的となっていた。

 単独で入国している彼らはミリアン国内の混乱した状況もありその知らせはミリアンの都市フォートランドに到着しても届かなかった。



ーーーー

ミリアン国東部フォートランド


 フィドルとの出会いから翌日、小都市フォートランドは洞窟からほど近いところに位置していた。

 ここは比較的平和なのか内乱状態にあるにも関わらず普段通りというように経済、産業活動が行われていた。

 少し殺風景にも思える石造りの建物が並びきれいに石畳で舗装された広い敷地で子ども達が無邪気に遊んでいた。


「フィーのあんちゃんだ!」


 その子ども達はフィドルに気づき駆け寄ってくる。


「おお、元気だな!」


 フィドルはいつものように子ども達の頭を撫でる。


「また海賊ごっごしようよ!」


「わりい、今日はちょっと無理なんだ。こいつらを案内しなきゃなんねえ」


 フィドルは後ろで様子見しているウィル達に振り返る。

 あからさまに子ども達は不満そうに頬を膨らませる。


『えー!!』

 

「また今度な」


 絶対ね、と口々に言った後子ども達は再び駆けていった。


「海賊ごっこてどんな遊びだよ」


 戻ってきたフィドルにウィルは呆れた態度で迎えた。

 するとフィドルはばつが悪そうに苦笑いで返した。


「好かれてるんだね、意外に」


「意外は余計だぞ」


 レインシエルは相変わらず一言多い。

 フィドルは肩をすくめる。


「貴様が王子だと知らないようだが」


 ダーナスはそう言うと遊び始めた子ども達を眺めていた。

 どこか羨ましそうな懐かしむような目つきだった。


「まあな。兄上ならまだしも公の場にでることはなかったしな」


 少し憂いた表情を浮かべるフィドルにウォルトは話を変える。


「若、とにかく宿に向かいましょう。既にラプタ達が押さえているはずです」


「ああ、こっちだ」

 

 わりい、と道中、フィドルはウォルトの腹を小突いた。

 それをなんだか嬉しそうに受け止めたウォルトは無言でフィドルの一歩後ろを歩いていった。





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