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蒼眼の反逆者 〜ウィル〜  作者: そにお
第3章 鮮血の巫女と蒼眼と緋眼
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76話 リーベメタリカ

 ウィル達がミリアンへの渡航のためヴェローナに到着する頃、イストエイジアのエイジア城の大広間には多くの人間が集った。

 その大多数は軍人ではなく各国の外交官、もしくは代表者の面々だった。

 ミリアン近くのミリアン植民地、コートハンネル、バダード、アストレムリ植民地、ファンツベルグ、ウリミア、イストエイジアより東の中立連邦ジパニールの5ヶ国による、最初の【リーベメタリカ】宣言が採択された。


「この署名を持って、リーベメタリカの第一歩が歴史に刻まれた。願わくはこのリーベメタリカが更なる希望を苦しむ国に光が差し込むことを祈る」


 イストエイジア国王、リーベメタリカ代表となったジェイルは誇らしげに、そして力強い言葉で宣言した。

署名した代表者達も気持ちが伝わるような大きな拍手でそれを迎えた。


 参加諸国は再びその名を国として復活させる。

 この宣言の様子は映像として記録されイストエイジア国内はリヴァイアスの一件で海上に出現したアキアシュテルノの再調査隊がシステムが利用できると発見し同時中継が可能になり、録画映像は全世界に流れた。

 それはアストレムリを意識して行ったことは明らかであり、技術的な牽制にも一躍かった。


 リーベメタリカの当面の目的は更なる植民地の解放となる。

 それは盟主国に近づくほど困難になることもあり解放の戦略は重要だった。


 混迷の最中にあるミリアン本国に対する武力の行使はただの侵略に変わりないとし、当面はアストレムリへの進軍を主とすることを決定した。


 もちろんウィル達、蒼の一派がミリアンへ入国する計画は参加した諸国による秘密会談で執り行われたため他国は知り得ず、それがリーベメタリカ計画の一端を担うことになっていることはウィルはもちろん把握していたが、セラを抑えるという意味以外にもミリアン国における蒼の行動は大きな結果と傷痕をもたらすことをウィル達はおろかジェイル達も、この時点では知る由もなかった。






ーーーー港町ヴェローナ

 

 リーベメタリカ宣言の採択の様子はウィル達の端末でも流されており、ヴェローナの住民達は領主の館に集まりその映像を見ていた。

 領主ディファルドも例外ではなく民と共に堅い表情でそれを眺めていた。


「で、君たちは秘密裏にミリアンに入国すると」


 映像が終了し暫くした後、執務室に到着したウィル達を一瞥した。


「まったく、裏をかくのは幼少の時と変わらんな」

 ディファルドはこの場にいない王を思い浮かべて感心したように微笑んだかと思うと真面目な顔に瞬時に戻る。


「いつ出発できそうですか?」


 メレネイアが前に立ちディファルドと話す。

 ウィルは懐かしそうに返ってきた剣の柄をさすっているままでどうにも集中できていなかった。

 それを見かねたので仕方なくメレネイアが窓口になっのだった。


 アストレムリからの逃亡で失ったと思っていたウィルの剣とレインシエルの短剣は、エイジア出発の前にアルフレドが忘れていたと渡されたもので諦めていたウィルは忘れていたアルフレドに怒りをぶつけることも忘れなんとなく愛着のある剣との再会を喜んだのだった。


 道中の魔物の襲来にも好戦的に打って出てメレネイアは何もすることなく、オルキスが道具をリュックから取りだそうとする間にも退治は終わっていた。

 ニーアに至ってはそもそも何もするつもりもないようで荷馬車で横になっているほど余裕だったが、ダーナスは不満そうに振るわれることなく終わった剣で空気を切り裂いていた。

 ユーリは荷馬車の上でにこにことその闘いを観察し隣でアイリが点数をつけ余計にウィルとレインシエルは競い合うように魔物を奪い合っていた。

 ちなみにダーナスは何もしなかったとみなされて0点だった。

 それからディファルドの元についても不機嫌そうにウィルをにらんでいた。


「船の準備は出来てます。今回独立する地域は避けましょう。内乱中とはいえ多少は押さえにかかってくるでしょうし、むしろその隙を利用しない手はないですね。迂回するのでそれなりに日数はかかります」


「それならそのまま出発した方が時間の無駄はなくなりますね。いいですか? ウィルさん」


 確認しようとメレネイアは後ろを振り向く。

 それでようやく気づき、ウィルはあわてて頷く。


「はあ、不安でしかない……」

 そう漏らした言葉はディファルドの苦笑いだけで周囲には届いていなかった。


「あなたも大変だな……」


 同情の目を向けるディファルドは各々好きに過ごしている背後の仲間達を見れば誰もがメレネイアに労いの言葉をかけずにはいられないだろう。


「よし、じゃあ行こ」


 唯一、ニーアだけはしっかり話を聞いていたようで、ウィル達を軽く叩き、部屋を後にしていった。


「ダーナス殿」


 最後にダーナスが出て行くところでディファルドは彼女を引き留める。


「何だろうか?」


 振り向くダーナスにディファルドは優しく頬を緩ませる。


「いや、張りつめた糸が幾分緩いでいるようで嬉しくてな」


 ダーナスは目を丸くする。

 そして、自然に微笑む彼女はそうしている自分にも気づいていないようだった。


「その節はご迷惑をかけました。おかけで後悔せずに済みそうです」


 部屋を出ていく足はミュトスの時よりも軽く自らの意志で歩んでいるようにディファルドは感じた。

 

 そして、ニーアが頼もしく成長していることに感心していたディファルドは部屋に誰もいなくなってしばらくして伝え忘れていたことを思い出したが、どうにかなるだろうと楽観的に捉えて眼下を歩いていくウィル達を窓から眺めていた。


 



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