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蒼眼の反逆者 〜ウィル〜  作者: そにお
第2章 自由解放戦争
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55話 成長

「ああ、お前疲れてるんじゃろ、いいから休んでおけ」

 ザラクは哀しい表情を浮かべオルキスに手をさしのべる。


「わたしは平気! ああ、頭もおかしくなってないから!」

ザラクが心配そうに瞳をのぞき込むのを手で押しのける。


「エリクサーの材料は?」


「世界樹の樹液、マナクリスタル、創世の泉水、神世のかけら、ネクターは高濃度のオーロラ調合液!」


 ザラクの問いかけにオルキスは即答する。


「ふむ。どうやらまともなようじゃ」


オルキスはザラクの手を取り立ち上がる。


「で、死んでなんかないってのは?」

ウィルはさっきの言葉を思いだしその意味を確かめる。

オルキスの瞳は質問するまでもなく生気に溢れていた。


「お母さんの日記には続きがあったんです」


オルキスは嬉々として日記を取り出し机に広げて最後のページを開く。

そこには相変わらず最後のメッセージでが書かれていた。


愛しのオルキス、私を……

ルイの子よ、あいつは……


その先はにじんでいて消えているようにも思えた。


「うん? 結局続きは読めないけど」

そのにじみは涙の後のようにも見えていたが口にすることはウィルにはできなかった。


「このにじみですが、私も涙で消えたのかと思いました。ただよくよく考えてみるとちょっと不自然なんです。いかにもって感じで」

オルキスも涙の後と考えていたことを知ってウィルは余計な気遣いだったと反省した。

ニーアとレインシエルに至ってはただその続きを待ち望むように身を乗り出していた。


「お母さんを疑うのも気が引けましたが、おじいちゃんがこの前教えてくれた、お母さんが最後に残した、まだ子どものあの子には見せるなって言葉で私は子どもじゃないって思ったんです!」


「まだ子どもじゃろうに」

ぼそりとザラクはつぶやくがオルキスに睨まれ口をつぐんだ。


「確かにあの時のわたしが日記を見たらそのまま受け止めて諦めていたと思います。ただ錬成士、……まだ見習いですけどその視点で考えたんです。錬成士の基本は事象の理解と納得、結果からの逆算的思考」


息巻くオルキスを遮ることは誰にもできなかった。

そして、液体の入ったガラス瓶を持ち、栓を開けためらいなくそこに一滴垂らす。


「お、おい!」

 止める間もなくそれは日記のにじみ部分にかかると光が走る。

 にじみが移動して色を持ちページ一面に紋様が浮かぶが、それは一瞬だった。


「そういうことか……! わしとしたことが見落としておった!」

 先ほどまで哀れむような感じで接していたザラクだったがその反応を見て合点がいったように声に力が入った。


「えっと?」

他3人はそれが何を意味するかわからず説明を待つしかなかった。


「これはよく封印を有無だったり解除するアーファクトを創る時に使うディスペル系のネクターです。さっきの反応は意図的に封印した部分があるということです」


「な、なるほど」

いまいち納得はできなかったが、それに構うことなくオルキスは日記を持ち、錬成に使う台座へと向かった。


「イレギュラーな使い方ですが錬成の逆展開で止めることができれば」

「待て、下手をするとばらばらになるかもしれんのだぞ? ディスペルの道具ではだめなのか? それにわしはこの目でみたんじゃ、あの子の姿を」

 ザラクは日記を台座に納めようとするオルキスを止めようとする。


「始めてみるコードだったしあれを解除する道具を探すのに時間がかかるよ。失敗するかもしれないし、……それになんとなく試されている気がするの。これで失敗だったらそこまでってことかな。それと紅茶飲んで寝た後だよね。理由は分からないけどそれもすべてお母さんの仕掛けだったら? 例え生きているってわけじゃないにしても、わたしは……真実を諦めたくない」


オルキスは振り返りザラクをみつめる。

ザラクは伸ばした腕をゆっくりと下げた。


「ありがとう。おじいちゃん」


オルキスは微笑むと水を流し込み、台座を起動させる。

日記は水球の中で浮かび上がる。

先ほどのディスペル系ネクターを注ぎ口に差し込む。

ガラス管が吸い込まれ蓋が閉まる。


水と同系色ではあったが、少し濃い色の液体が中で球体を形どる。


「インターフェース起動。封印解除で止めなきゃ分解しきっちゃうね。封印部分だけ適用させて……」

 水球の中で流れが起き中の様子は見えなくなっていく。


「コードをイメージして、えっと、思ったより反応が早い……!」

 オルキスの額から汗がにじみ出る。


「嘘……抵抗反応? 分解プロセスが間に合わない……!」


 やはりまだ早かったのか、勇み足が過ぎたのか、オルキスの脳裏に後悔の波が押し寄せてくる。

 それは迷いを産み、中止しようかとも思うが、その思考中にもその判断が間に合わなくなる。

 やがて思考がまとまらなくなっていく。

 封印部分の解除どころか日記自体の分解が始まろうとする。


「止まらない……」

 失敗しても諦めるつもりだったが、やはり後悔は生まれていく。


「オルキス! お前の夢をはあの子のような偉大な錬成士だろう! 諦めるんじゃあない!」

 ザラクの叫びが聞こえる。

 

 そうだ。わたしは諦めない。

 お母さんを思い出せ、事象の理解と納得、逆転思考。

 分解が止まらないなら同時に再錬成すればいい。

 コア部分さえ残れば再錬成できるはずだ。


 オルキスの思考は平行する。

 分解処理と再錬成処理を同時に進めていく。

 水流の中の日記は形を失う。


「今だ!」


 オルキスはマナをありったけ込めて再構成に注力する。

 オルキスの頭の中に新たな日記をイメージする。


 水球はうねりと共に強烈な光を放つ。

 光が収まると中心に以前とは違う日記が浮かんでいた。


「やった……」

オルキスは大きく大きく深呼吸する。

水は台座に飲まれ、上には表紙に可愛らしい熊がデザインされた日記だけが残った。


「オルティ、やはりお前さんの子どもじゃ」

 ザラクはやりとげたオルキスの姿をオルティと重ね合わせ懐かしい光景に思いを馳せた。



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