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蒼眼の反逆者 〜ウィル〜  作者: そにお
第2章 自由解放戦争
50/197

50話 蒼に銀は

 風は蒼の光をその道に残す。

「ニーア!!」

 ウィルには叫ぶことしかできなかった。

 最悪の事態が想像できた。


 だが、金属の衝突音、高い音がその瞬間に鳴り響いた。

 ニーアに牙をたてようとした無慈悲な大口がニーアを捉えることはなかった。


 蒼の粒子が増幅されていき、周辺に漏れていた光が一点に集中していく。

「お……父さん」

 かろうじて絞り出した声は目の前の人物に向けられていた。

 それ一つで人体に大穴を開けることが容易なくらいの牙は蒼く静かに輝く剣によって受け止められていた。


「ほんっとにしょうがねえ奴だな」

 ニーアに背中を見せるルイノルドが呆れたように物言う。

 それは、先ほどまでとは違う感情が感じられる声だった。


「あ……」


 ニーアはその言葉に安心したのと同時にある違和感にも気づく。

 その心配する様子は、ニーアの記憶ではむしろ。


「ふっ!」


 ルイノルドはその腕に力を込め、リヴァイアスの牙を押し返す。

「ーーー!」

 リヴィアイアスは驚きと共に距離を取る。

 怒りが満ちるかのように尾を床に叩きつける。

 それだけで床が陥没するほどの威力であった。


「ちっ、調整不足か……。なあ、ニーアまた歌ってくれよ」

 それがウィルにも歌っていた蒼の力を引き出す歌であることはニーアは直感で理解した。

 不思議なくらい自然に頷き、いつものように導き出す。


 途端、先ほどよりも早く多く蒼の光が剣に収束していく。

 剣は形を変え刀身は蒼く輝き少し透き通っても見える、柄は意匠が施され、観賞用にも思えるほど美しい剣へと変わる。


「ウィル!!」


 ニーアの無事を確認してウィルが脱力しかけた所でルイノルドの呼びかけにそれは中断される。

 今のルイノルドとは戦う必要がない。

 そう確信できるほど信頼できる声だった。


「分かってるよ!」

 何を言いたいかは分かっている。

 あの驚異を退けるのだ。


「妹を守る、お前の覚悟を見せてみろ!」

「言われなくても!」

 黒竜戦と同じようにダイレクトに力が注がれていく。

 ルイノルドの剣みたいに形そのものが変わるわけではなかったが光を纏う蒼剣がウィルに新たな力を与える。

 ルイノルドに集中していたリヴァイアスにウィルは切りかかる。

 その斬撃は尾の根本を捉え、鱗が切り裂かれはがれ落ち血であろう濃い青が滴る。


「ーーー!!」


 突如、背後からの攻撃に暴れる様にその尾で背後の敵を撃退せんと振り回す。

 ただし、それは思うように動かなかった。

 何かに捕まれている感覚が不快そうに、見て取れるほどリヴァイアスの顔がゆがむ。

 

「まったくもって理解不能ですが、まずはこの状況をどうにかしないといけないみたいですね」

 メレネイアの力場だった。

 続き発砲音と共に数発、リヴァイアスに着弾し光が弾ける。

「どうやら、そのようですね」

 アルフレドは更に銃弾を打ち込む。


「驚異判定、再計算、優先事項……変更。支配率80%に減少」

 リヴァイアスは無機質に声を発すると尾の鱗を発光させ微振動を開始させる。

 その瞬間、力場は弾き飛ばされる。

 同時に尾が振るわれ弾丸の様にその鱗を放射状に弾き飛ばす。

 ルイノルドは背後のニーアを守るように一歩も動かずそれらを弾き落とす。

 レインシエルはかわしながら距離を詰めていく。

「そんな……失敗した。失敗しっぱいシッパイ……」

 ユーリは立ち尽くす。

 そばに控えるアイリを守ることはなくただその目に蒼の仮面を映し続ける。

「ユーリ!」

 アイリが叫ぶと同時にユーリの前へと彼女は躍り出る。

 精一杯、手を広げてその鋭い弾丸をユーリから守ろうとして。

「アイリ……?」

 肉体的に自分より弱い存在が自らを守ろうとしていることに気づく。

 だが足が動くまでには時間が足りなかった。

 アイリの双眸にいくつも凶刃が映る。

 

 しかし、それらがアイリに刺さることはなかった。

 直前にジェイルが割り込み手甲を構え防御に徹した。

 大部分は手甲によって弾かれたものの頭、肩や足に刃は掠め、鮮血が吹き出す。


「ジェイルさーーー」


「てめえ! 呆けてる場合じゃねえだろ! あいつらを少しは見習えや! お前の妹なんだろうが!」

 ジェイルはユーリの声を遮り、力の限り叫ぶ。

 頭部から流れる血が顎へと流れ床へと滴り落ちていく。


「妹、僕は……」

 顔だけをこちらに向け見上げるアイリにユーリの焦点が定まる。

 そして、妹を守り戦う2人の蒼にも視線を移し、ゆっくりと再びアイリへと。


 なんとなくユーリは自らを巡る血液が関を破るような、今まで通ってなかった部分に満たされていく感覚。

 理解も納得も不可能だったが、思考回路がすっきりとしていくことが心地よくも感じた。


「ユーリ……?」

 アイリはユーリの瞳に揺らぎを感じ思わず声をかける。

 光を得たようにさざめく波は、ユーリよりも早くアイリに起きていることに本人は気づいていなかった。


「そうですね……。あの2人に負けていられませんね。家族は守らないと」

「家族……」

 アイリはその言葉を頭で反芻した。

 ユーリはルイノルドの捕縛に使った円筒を拾い、紫電の剣を再展開させる。

「ありがとうございます。ジェイルさん。行きます」

「ありがとう」


 ユーリとアイリはリヴァイアスとの戦闘に参戦する。


「おうおう、いけいけ、俺はちいっと休むわ」

 ジェイルは適当に送り出すと柱の影へと身を隠す。

「慣れねえことしちまったな。なあ兄貴…」

 一旦、手甲を解除し戻った指輪に話しかけるようにつぶやく。

「少しは見直したかよ」

 その声はこの場の誰にも届くことはなかった。


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