48話 蒼の邂逅
瞬時にルイノルドに肉薄するウィル
ルイノルドはそれに焦る様子は微塵も感じられなかった。
その防御する様子のないルイノルドに剣の力がゆるむ。
胴体を捉えようとしたウィルの剣はいつの間にか弾かれた。
「なっ……!」
ルイノルドの剣は瞬時にウィルの剣へと向けられ弾かれたようだった。
「それがお前の覚悟なら……」
弾かれた剣に耐えられずウィルは体勢を崩しかける。
ルイノルドと目が合う。
「諦めろ」
退けと無意識に体が反応して勢いそのまま転がるように距離をとる。
かがんだ所に横凪の蒼き一閃が空を切った。
「ほう」
殺す気だ。嘘でも遊びでもない。
ウィルはその身に本物の恐怖を覚える。
かつての恐怖を無視していた自分ならばあの一撃で死んでいただろうと直感できた。
恐怖によって命を助けられたことは複雑だったが、この場は素直に感謝する。
甘かった。
殺す気でやらないと殺される。
それほどまでに危険な相手か俺の父親は。
行き着く間まもなくルイノルドはウィルに迫り、再び剣をふるう。
その時、遠くで軽い爆発音のような音が聞こえたかと思うと、ルイノルドは剣で防御するように構える。
ほぼ音と同時に剣に光が弾く。
「アルか。これはまたアレンジ加えたな」
少し関心したように銃を撃った本人を眺める。
アルフレドは楽しそうに少し微笑むと更に次弾と連続して射出する。
しかし直撃することはなく、避けるか剣で弾かれる。
そのおかげかウィルは一呼吸置く時間ができた。
「おらあ!」
銃弾の回避に隙が出来たか、気合いを入れる声と共にジェイルが右手甲を手加減なく振り抜く。
「わざわざ攻撃を知らせるな」
ルイノルドは冷静に剣を手甲に沿わすようにして衝撃を流し切る。
「ご忠告どうも」
ジェイルは焦る様子もなくステップを踏み追撃を避け下がる。
すると、ルイノルドの背後から影が現れる。
レインシエルだ。
ジェイルとは違い、声も出さず静かに素早く二対の短剣を順に繰り出す。
一つは胴体ではなく太股部分を狙っていた。
まずは動きをとめるのが目的だった。
とった。
レインシエルは確信した。
しかし金属の衝突音が木霊した。
ルイノルドは顔も体の向きもそのままに剣だけを背後に構え、その剣戟を止めた。
「嘘でしょ……」
思わず口にでる。
ルイノルドはその体勢でも腕に力を込めたまま、短剣を押しのけ、転回しレインシエルに反撃の剣を振るう。
油断していたレインシエルの目の前の光が屈折する。
不可視の力場がその剣を止める。
すかさずユーリが紫電の剣を振るい捉えようとする。
ルイノルドは体を反らし後方に片手だけ床に押して後方回転する。
再び距離が開いた。
「何人掛かりだと思ってんだよ。こんなつええのかかつての仲間はよ」
ジェイルは目の前のかつて旅を共にしたであろう仲間の強さを痛感する。
「私とメレネイアは後方支援とニーアさんとアイリさんの護衛をします。その間隙を縫って攻撃を加えてください」
アルフレドが状況を踏まえ簡単に指示を与える。
「アイリ」
アイリはかばんを漁っており、こちらの戦闘など目に入っていないようだったがユーリの声に静かに振り向くとこくりと頷いた。
「そろそろこっちから行くぞ」
皆が同意する時間もなく、ルイノルドは剣を構え突進してくる。
「ぐう……!」
ウィルへの一撃は重い。
避ける判断よりも受け止める判断で精一杯だった。
蒼の光が弾ける。
ジェイルとユーリが同時に仕掛けるものの動きを読まれているのか難なくかわされる。
一撃も確実に入らず、時間と体力だけが刻々と失われていく。
『強制起動シークエンス 5分前』
無機質なアナウンスが時間の経過を知らせる。
「私から提案」
突如、アイリがなにやらアルフレドに耳打ちして何かを伝えていた。
「……それを信じるしかないです、ね」
アルフレドはアイリの思惑を達成させるべく戦況を整える。
「皆さん、彼をあのポイントに……」
ユーリは戦闘を重ねながらアイリと同じ思惑を告げていく。
他にすがるものもなく、否定する材料はなかった。
先ほどと同様に同時攻撃を仕掛ける。
ウィルは正面、側面をジェイルとユーリで攻め込む。
ルイノルドは後方に下がりつつ、攻撃をいなす。
攻撃の合間に銃弾の雨がルイノルドを襲う。
さすがに防御一択しかなく、ルイノルドは再び潜り込んだレインシエルの警戒が遅れ、たまらず後方へ大きく跳躍し着地。体勢を整える間もなくそこに来るのが分かっていたかのように不可視の力場がルイノルドを掴む。
「あまり長くは持たなそうです……」
こじ開けられようとする力場をメレネイアは両手でなんとか抑え続ける。
「ユーリ!」
アイリが叫ぶ。
「座標計算、完璧です」
ユーリは剣をルイノルドに向けて投げる。
「モード:エクス グレイプニル!」
剣はその言葉の後形を変える。
宙で止まったかと思うと広範囲に光の照射が置き、ルイノルドを中心に円形の陣が光によって組み立てられる。
「これは……!」
ルイノルドは一気に力場を弾き飛ばす。
そして、陣から出ようとする。
「もう遅いですよ。あなたは囚われた」
ユーリが勝ち誇るように宣言した。
その通りにルイノルドは膝をつく。
陣から伸びた光の紐がルイノルドに巻き付きさらに身動きを取られなくする。
「一応、負けはなくなったのか?」
ウィルは少しだけ緊張を緩めた。
「さあ、その仮面をはずしてもらいます」
ユーリは陣に踏み込む。
ルイノルドは顔を上げ、ユーリを見上げ、剣を床につけ立ち上がろうとする。
「おっと、まだ動けますか。仕方ない。ニーアさん管理者フロアで先に認証してもらえますか?」
ユーリは再び陣から下がり目線はそのままに様子をうかがった。
「でも……」
「大丈夫、あれは体力を消耗させていく。よって動けない」
逡巡するニーアにアイリは無表情のまま説明する。
「行きましょう。やるべきことをやってからでも遅くないでしょう」
アルフレドが同意するとニーアはしぶしぶ台座奥の専用エレベータを起動させてアルフレドと共に上がっていった。




